ミュゼ浜口陽三 「銅版画の地平2 浜口陽三と銅版画の現在」 2/11

ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション(中央区日本橋蛎殻町)
「銅版画の地平2 浜口陽三と銅版画の現在」
2004/11/26~2005/2/27

こんにちは。

木場で「榎倉」と「アニュアル」を観た後は、のんびりと散歩しながら水天宮前のヤマサコレクションへ。lysanderさんイッセーさんDADA.さんの記事を読んで気になっていた浜口陽三の版画展を観てきました。

浜口さんの銅版画は、どれもうっとりするほど質感が豊かです。まず、スイカやレモンなどをかたどる美しい彩色に目が奪われますが、しばらく目を凝らすと、版画の表面に傷がたくさんついているのに気がつきます。これが、浜口独自の銅版画技法である「カラーメゾチント」の成果なのでしょうか。暗い画面にぼわっと浮かぶ深みのある色と、制作の過程を伺い知るような無数の傷。豊かな質感があるのも当然なのでしょう。

「パリの屋根」は、中央部分が柔らかくほのかに光っています。これは、生活の明かりなのか、それとも月明かりが当たっているからなのか。幾何学的な模様である屋根が、この明かりによってポッと優しい表情へ変化していきます。「HANGA展」でも気になった作品ですが、またひと味もふた味も魅力を増していました。本当に素晴らしい作品です。

私が一番気になったのは「びんとレモン」でした。暗闇の中にぽっかりと浮いているようなレモンが一つ。ビンは半分が闇に溶け込むような形で置かれています。ビンの向こう側には、慎重で丁寧に切られたような、美しい切り口を見せるレモンが横たわります。また、レモンの切り口の半分は、テーブル(?)に反射して影として見えています。まるで、びんとレモンがお互いを意識し合うかのようです。絶妙なバランス感覚が見受けられる配置です。もちろん、背後を覆うワイン色と、美味しそうなレモンの色も魅力的でした。こんな作品が部屋にあれば、と思わせるような作品です。

「西瓜」も心に染み入るような深い赤が印象的でした。ザックリと切られた横長の西瓜には、黒い種がポツポツと可愛らしく並んでいます。西瓜の赤色は、まるで西瓜の内部に光源があって、それが表面まで染み渡って浮き出したかのような美しい色です。味わい深い…。心に響く深い赤。他ではなかなか観られません。

赤と言えば「野(赤)」も素敵でした。赤茶けた大地が何層にもなってうねるように横たわります。私はこの作品を観た時、昨年庭園美術館で出会ったノルデの「北フリースラントの夕景」を思い出しました。夕焼けに覆われた大地とじっとりとした薄暗い雲。私には「野」が夕日を反映した作品かどうかは分かりません。ただ、「野」を観ていると、いつの間にか「夕景」が重なってきました。不思議です…。

ギャラリーの地下にも、浜口以外の銅版画がたくさん並んでいました。そちらもなかなか見応えがあります。私が一番好きなのは山口啓介さんの作品でしょうか。

入口付近にカフェスペースがありました。チケットを購入すると200円の金券が貰えるようです。今回は時間が遅かったのでお邪魔しませんでしたが、今度行った際にはご自慢のケーキを食べてみようかと思います。駅の近くにありながら、静かでこじんまりとしたギャラリーでした。(前に見苦しい首都高がなければ、尚更良かったかもしれませんが…。)何だかホッとするような温かい気持ちを貰いました。優しい展覧会です。

*ギャラリーのHPに100円引きの割引券がありました。
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