サリエリの復権?

読売新聞のサイトでこんな記事を見つけました。

「モーツァルト『敵役』サリエリ、汚名返上の動き」(YOMIURI ON-LINE)
【ウィーン=石黒穣】映画「アマデウス」(1984年)でモーツァルトの宿敵として悪役のイメージが定着したイタリア人作曲家アントニオ・サリエリ(1750-1825年)。その名誉を回復する動きがウィーンで出ている。

プーシキンの「モーツァルトとサリエーリ」と映画「アマデウス」の力は大きすぎたようです。と言っても、映画「アマデウス」がなければ、サリエリがここまでの知名度を獲得することもなかったでしょう。その点では、いくらその人物像が誤っているにしろ、彼は「アマデウス」に感謝しなくてはいけないのかもしれません。何たってあの作品のおかげ(?)で、こうして現代でも名前があがるのですから…。(と言う私も、映画「アマデウス」で初めてサリエリを知りました。ただ、「アマデウス」はあくまでもフィクションですから、目くじらを立てて批判するのも大人げないように思います。映画としてはとても良く出来た作品です。)

サリエリの音楽には、何年か前に、紀尾井ホールの公演で「ファルスタッフ」に接したことがあります。終始小気味良い音楽が続き、大変楽しく聴きました。彼は生涯で四十作以上ものオペラを作曲しています。音楽的に彼が見直されれば、今回のスカラ座での「見いだされたエウローパ」(確かNHKFMでも放送されたと思います。)をきっかけに、各地で彼の楽曲が演奏されるのでしょう。これには大いに期待したいところです。

しかし、サリエリに限らず、モーツァルト同時期の作曲家は、あまりにも不憫な境遇に置かれています。例えば、フランスバロックなどは最近になって復権し、ヨーロッパではかなりの人気を博しているというのに、何故かモーツァルトと同時代の作曲家に関しては、せいぜいパパハイドンかグルックばかりです。せめてコンサートプログラムの一部でもいいから、ミハエル・ハイドンやエマニュエル・バッハが上演されれば…。日本でもそんな時代が来ると良いと思います。

ところで、史実のサリエリは相当の大物です。たくさんの音楽を作曲しながら、宮廷音楽家としての地位を築き、後年はベートーヴェンやシューベルトの指導にもあたりました。「魔笛」を聴いてその音楽を絶賛したと言うのは有名なエピソードですが、その時彼は何を感じたのでしょう。まさか映画のような「嫉妬」ではないと思いますが…。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )