都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「日本×画展」 横浜美術館 7/29
横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1)
「日本×画展」
7/15-9/20
横浜美術館で開催中の「日本×画展」(にほん×ガテン!)へ行ってきました。いわゆる日本画だけではなく、それにちなむインスタレーションまでが展示されています。今年のMOTアニュアルよりもさらに手広く日本画の世界を紹介する展覧会でした。
エスカレーターをあがった先にてまず待ち構えていたのは、藤井雷の「絵手紙」シリーズです。日々の思いを文章へ綴り、絵を描いた封筒へ入れて自分宛に送るという奇妙な試み。それを5年間も続けた成果なのでしょうか。大量の「絵手紙」がズラリと直線を描いて展示室を飾り立てています。それにしても何通の「絵手紙」がここに並んでいるのでしょうか。どれも、奄美や台北などの南国の景色がカラフルに描かれていました。それぞれの絵のメッセージを汲み取って拝見したい作品ばかりです。
MOTアニュアルの日本画展でも拝見した松井冬子が二番目に登場します。アニュアル展ではその展示の雰囲気に圧倒されてしまった感がありましたが、今回は至極真っ当なガラスケースでの展示でした。照明も過度に落とされることなく、作品を良く見通すことが出来ます。(アニュアル展は少し暗過ぎたかもしれません。)「世界中の子と友達になれる」(2002)は、藤が恐ろしいほど垂れ下がる中を、純白の下着に身を包んだ一人の少女が何かを覗き込むように佇んでいる作品です。顔料のせいか、藤がほとんど潰れるかのように重々しく描かれていますが、それでも相変わらずのおどろおどろしい雰囲気は健在です。その他、「引き起こされた不足 あるいは過剰」(松井の作品のタイトルはどれも非常に謎めいています。)という二羽の鶏が墨で描かれた作品も見応えがありました。下村観山の作品(横浜美術館所蔵の日本画もいくつか展示されています。)と一緒に展示されていたせいか、もう一歩精緻に描いて欲しい部分もありましたが、ファンの方にはたまらない展示かと思います。
しりあがり寿の「オレの王国」は強烈です。まさに展示室を彼のやりたい放題の王国へと変えています。和紙に囲まれた滝壺。一面に墨で書きなぐったような人や動物、それに花々などが描かれていました。また足元には魚も泳いでいます。私には少しうるさく思えてしまうのであまり好きにはなれないのですが、ともかくそのインパクトに関してはピカイチです。しばらく展示室にいると、轟々と落ちる滝の音が聴こえてくるかのようです。奇妙に臨場感のある展示でした。
小瀬村真美のビデオ・インスタレーションは、美術館所蔵の日本画と最も器用に組み合わせた作品です。月岡芳年を元に構成された映像作品。畳の上に腰掛けて見る「呼び水」の涼し気な様は何とも格別です。気持ち良さそうに鯉が泳いでいました。日本画の世界が映像化され現代に甦った。琳派を美を映像で楽しむことの出来る内容です。
所蔵の日本画とのコラボレーションという点において最も分かり易かったのは、中村ケンゴの「スピーチバルーンズ・イン・ザ・ヒノマル」と横山大観の「霊峰不二」ではないでしょうか。セルフの吹き出しで象られた赤い丸が、ちょうど大観の富士の上に燦然と輝きます。このような組み合わせはおそらくこれが最初で最後でしょう。ちょっとしたセンスを感じる作品かと思いました。
全体を通して見ると、私自身はアニュアル展の方に軍配をあげたいのですが、展示の構成や切り口などに企画者の強い意欲が垣間みられる展覧会でした。またすっかり横浜美術館の名物(?)となった、子ども向けのワークシートも充実しています。(土曜日は中学、高校生が無料です!)9月20日までの開催です。
「日本×画展」
7/15-9/20
横浜美術館で開催中の「日本×画展」(にほん×ガテン!)へ行ってきました。いわゆる日本画だけではなく、それにちなむインスタレーションまでが展示されています。今年のMOTアニュアルよりもさらに手広く日本画の世界を紹介する展覧会でした。
エスカレーターをあがった先にてまず待ち構えていたのは、藤井雷の「絵手紙」シリーズです。日々の思いを文章へ綴り、絵を描いた封筒へ入れて自分宛に送るという奇妙な試み。それを5年間も続けた成果なのでしょうか。大量の「絵手紙」がズラリと直線を描いて展示室を飾り立てています。それにしても何通の「絵手紙」がここに並んでいるのでしょうか。どれも、奄美や台北などの南国の景色がカラフルに描かれていました。それぞれの絵のメッセージを汲み取って拝見したい作品ばかりです。
MOTアニュアルの日本画展でも拝見した松井冬子が二番目に登場します。アニュアル展ではその展示の雰囲気に圧倒されてしまった感がありましたが、今回は至極真っ当なガラスケースでの展示でした。照明も過度に落とされることなく、作品を良く見通すことが出来ます。(アニュアル展は少し暗過ぎたかもしれません。)「世界中の子と友達になれる」(2002)は、藤が恐ろしいほど垂れ下がる中を、純白の下着に身を包んだ一人の少女が何かを覗き込むように佇んでいる作品です。顔料のせいか、藤がほとんど潰れるかのように重々しく描かれていますが、それでも相変わらずのおどろおどろしい雰囲気は健在です。その他、「引き起こされた不足 あるいは過剰」(松井の作品のタイトルはどれも非常に謎めいています。)という二羽の鶏が墨で描かれた作品も見応えがありました。下村観山の作品(横浜美術館所蔵の日本画もいくつか展示されています。)と一緒に展示されていたせいか、もう一歩精緻に描いて欲しい部分もありましたが、ファンの方にはたまらない展示かと思います。
しりあがり寿の「オレの王国」は強烈です。まさに展示室を彼のやりたい放題の王国へと変えています。和紙に囲まれた滝壺。一面に墨で書きなぐったような人や動物、それに花々などが描かれていました。また足元には魚も泳いでいます。私には少しうるさく思えてしまうのであまり好きにはなれないのですが、ともかくそのインパクトに関してはピカイチです。しばらく展示室にいると、轟々と落ちる滝の音が聴こえてくるかのようです。奇妙に臨場感のある展示でした。
小瀬村真美のビデオ・インスタレーションは、美術館所蔵の日本画と最も器用に組み合わせた作品です。月岡芳年を元に構成された映像作品。畳の上に腰掛けて見る「呼び水」の涼し気な様は何とも格別です。気持ち良さそうに鯉が泳いでいました。日本画の世界が映像化され現代に甦った。琳派を美を映像で楽しむことの出来る内容です。
所蔵の日本画とのコラボレーションという点において最も分かり易かったのは、中村ケンゴの「スピーチバルーンズ・イン・ザ・ヒノマル」と横山大観の「霊峰不二」ではないでしょうか。セルフの吹き出しで象られた赤い丸が、ちょうど大観の富士の上に燦然と輝きます。このような組み合わせはおそらくこれが最初で最後でしょう。ちょっとしたセンスを感じる作品かと思いました。
全体を通して見ると、私自身はアニュアル展の方に軍配をあげたいのですが、展示の構成や切り口などに企画者の強い意欲が垣間みられる展覧会でした。またすっかり横浜美術館の名物(?)となった、子ども向けのワークシートも充実しています。(土曜日は中学、高校生が無料です!)9月20日までの開催です。
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