酒井抱一 「夏秋草図屏風」 東京国立博物館

東京国立博物館
平常展(本館2階 第7室) 8/8-9/18
「酒井抱一 - 夏秋草図屏風 - 」

東京国立博物館の平常展では、今、酒井抱一(1761-1829)の代表作として名高い「夏秋草図屏風」(1821)が展示されています。展示期間は今月8日から来月18日まで。立秋を過ぎた今の時候にもぴったりな素晴らしい作品です。





夏の激しい雨に打たれた夏草と、風に気持ち良さそうにそよぐ秋草。それぞれが、抱一ならでは生き生きとした線の描写によって見事に表現されています。たっぷりと水を浴びて生い茂る夏草のしなやかさ。その影に隠れた白百合が美しく映えていました。また秋草では、まるで水の中でゆらゆらと揺れているようなツタの描写が絶品です。風に吹かれて空へと舞う葉と、これを描かせたら抱一の右に出る者はいないススキの描写。それらが銀地の上で冴え渡るツタと絡み合う。朱の交わる葉の色は秋の匂いを漂わせています。もう見事としか言い様がありません。

抱一は、この作品を尾形光琳の「風神雷神図屏風」の裏面に描きました。ちょうど雷神の後ろには夏草が、そして風神の裏には秋草が描かれていたそうです。それぞれ、雷神の雷雨に襲われた夏草と、風神の風に吹かれた秋草を表現しているのでしょう。また、表の金地と裏の銀地。衝立てとして置かれていたなら、その眩いばかりの輝きにさぞ贅沢な空間が形成されていたと思います。ちなみに抱一は、風神雷神図の構図を取り入れることで、結果的にその原作者である俵屋宗達へ敬意を示しました。江戸にて琳派を志し、見事それを成し遂げた抱一と、その師としての光琳と宗達が繋がっている。時空を超えた琳派の巨匠たちのコラボレーション。まさに記念碑的作品です。

私はこの作品を、二年前に東京国立近代美術館で開催された「RIMPA」展で初めて見ました。その時の衝撃に近い感動は今も忘れられません。(酒井抱一の名が強く記憶に残ったのもその展覧会でした。それ以来、琳派の中では彼が一番好きです。)これを機会に是非ご覧になることをおすすめ致します。
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