都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ポップアート 1960’s→2000’s」 損保ジャパン東郷青児美術館 8/7
損保ジャパン東郷青児美術館(新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階)
「ポップアート 1960’s→2000’s - リキテンスタイン、ウォーホルから最新の若手まで - 」
7/8-9/3
ポップアートには苦手意識がありましたが、この展覧会で少しぬぐい去ることが出来たかもしれません。表題にもあるリキテンスタイン近辺のポップアートを中心に、ミニマルアートからムニーズ、さらにはスゥ・ドー=ホーらの近作までを展示します。全32作家、約80点。とてもコンパクトによくまとまっていました。
まず出迎えてくれたのは大御所のリキテンスタインです。彼の作品はあちこちの美術館でもよく見かけますが、こうして10点以上の作品に囲まれると、改めてそのアメリカン・コミックスから取り入れられたというカジュアルな感覚が新鮮に思えてきます。19世紀後半に考案されたというドットが画面の最小単位として活躍し、さらに赤や黄色の派手な原色が刷り込まれている。一見、どれも似たような雰囲気がありますが、木版や油彩、それにスクリーンプリントなど、様々な技法で表現されていることが分かります。そんな彼の作品の中で一番惹かれたのは「ふたつのかたち」(1978)という、ただ一点だけ展示されていた油彩画でした。斜めに伸びた青と白のストライプに、線で構築された二点の抽象的な模様。画面右奥の部分が扉とすれば、全体が部屋、そして右が人で、左がその姿を映し出す鏡でしょうか。リキテンスタインはこれまであまり良いと思ったことがありませんが、今回はその魅力を味わうことが出来たような気がしました。アニメ的な構図のものよりも、抽象的な作品の方がより好みのようです。
ミニマルアートではソル・ルウィットの「四隅からの弧形」(1986)と、リチャード・セラの「クララ・クララ」(1985)が面白い作品です。形や面の幾何学的組み合わせ、またはその素材の質感だけの直球勝負。美感さえ伴えば全く古びることがありません。デザインとしての魅力もある。ミニマルは元々好きなジャンルだったので、ここは素直に楽しむことが出来ました。
パンフレットでも紹介されていたピーター・ハリーの「ジョイ・ポップ」(1988)も印象的です。キャンバスにて何層も重なり合う四角形。灰色の二つの部分は何やら窓のようにも見えてきます。都市の光景、家やビル群の連なり、さらには箱の組み合わせ。カラフルに映えるオレンジや黄色は、アクリルの他、ディドロという工業用塗料などによって表現されています。なかなか美しい質感を見せていました。
盗作、もしくは引用という、何ともタイムリー(?)なテーマでは、まさしく偉大な画家たちから構図を取り入れたムニーズが見応え十分です。それぞれ、チョコレートや雑誌(穴あけパンチの残りかす!)などによって描かれたセザンヌやマネの名作。彼が借り入れたのは名画だけではありません。ダイヤモンドのマリリン・モンロー、真っ黒なインクによるコマネチなど、思いもかけない素材にて器用に絵を生み出していきます。ちなみにセザンヌの静物画は、この美術館ご自慢の常設展でも拝見出来るところです。二つを見比べるのも面白いのではないでしょうか。その他、小さなアニメキャラクターの玩具で象られた「自画像」(2003)も楽しめます。日本でもお馴染みのあるキャラクターがいくつも使われていました。さて何でしょう。
スゥ・ドー=ホーと言えば、ナイロンによる家などのインスタレーションを思い出しますが、今回は小さな人物の顔を集合させて一枚の面に仕立てた「私たちは誰?」(1998)が展示されています。確かに目を凝らして見ると無数の肖像写真が整然と並んでいる。全て男性でしょうか。各々の生き様を背負う人の顔が画面のドットとなり、その集合体がまるで社会を築き上げるように絵画全体を構成する。視覚トリック的な面白さもまた、この手のアートの良さなのかもしれません。
300円で販売されていたジュニア版のブックレットがとても良く出来ていました。(500円の一般向けはかなりイマイチでしたが。)期待以上です。9月3日までの開催です。
「ポップアート 1960’s→2000’s - リキテンスタイン、ウォーホルから最新の若手まで - 」
7/8-9/3
ポップアートには苦手意識がありましたが、この展覧会で少しぬぐい去ることが出来たかもしれません。表題にもあるリキテンスタイン近辺のポップアートを中心に、ミニマルアートからムニーズ、さらにはスゥ・ドー=ホーらの近作までを展示します。全32作家、約80点。とてもコンパクトによくまとまっていました。
まず出迎えてくれたのは大御所のリキテンスタインです。彼の作品はあちこちの美術館でもよく見かけますが、こうして10点以上の作品に囲まれると、改めてそのアメリカン・コミックスから取り入れられたというカジュアルな感覚が新鮮に思えてきます。19世紀後半に考案されたというドットが画面の最小単位として活躍し、さらに赤や黄色の派手な原色が刷り込まれている。一見、どれも似たような雰囲気がありますが、木版や油彩、それにスクリーンプリントなど、様々な技法で表現されていることが分かります。そんな彼の作品の中で一番惹かれたのは「ふたつのかたち」(1978)という、ただ一点だけ展示されていた油彩画でした。斜めに伸びた青と白のストライプに、線で構築された二点の抽象的な模様。画面右奥の部分が扉とすれば、全体が部屋、そして右が人で、左がその姿を映し出す鏡でしょうか。リキテンスタインはこれまであまり良いと思ったことがありませんが、今回はその魅力を味わうことが出来たような気がしました。アニメ的な構図のものよりも、抽象的な作品の方がより好みのようです。
ミニマルアートではソル・ルウィットの「四隅からの弧形」(1986)と、リチャード・セラの「クララ・クララ」(1985)が面白い作品です。形や面の幾何学的組み合わせ、またはその素材の質感だけの直球勝負。美感さえ伴えば全く古びることがありません。デザインとしての魅力もある。ミニマルは元々好きなジャンルだったので、ここは素直に楽しむことが出来ました。
パンフレットでも紹介されていたピーター・ハリーの「ジョイ・ポップ」(1988)も印象的です。キャンバスにて何層も重なり合う四角形。灰色の二つの部分は何やら窓のようにも見えてきます。都市の光景、家やビル群の連なり、さらには箱の組み合わせ。カラフルに映えるオレンジや黄色は、アクリルの他、ディドロという工業用塗料などによって表現されています。なかなか美しい質感を見せていました。
盗作、もしくは引用という、何ともタイムリー(?)なテーマでは、まさしく偉大な画家たちから構図を取り入れたムニーズが見応え十分です。それぞれ、チョコレートや雑誌(穴あけパンチの残りかす!)などによって描かれたセザンヌやマネの名作。彼が借り入れたのは名画だけではありません。ダイヤモンドのマリリン・モンロー、真っ黒なインクによるコマネチなど、思いもかけない素材にて器用に絵を生み出していきます。ちなみにセザンヌの静物画は、この美術館ご自慢の常設展でも拝見出来るところです。二つを見比べるのも面白いのではないでしょうか。その他、小さなアニメキャラクターの玩具で象られた「自画像」(2003)も楽しめます。日本でもお馴染みのあるキャラクターがいくつも使われていました。さて何でしょう。
スゥ・ドー=ホーと言えば、ナイロンによる家などのインスタレーションを思い出しますが、今回は小さな人物の顔を集合させて一枚の面に仕立てた「私たちは誰?」(1998)が展示されています。確かに目を凝らして見ると無数の肖像写真が整然と並んでいる。全て男性でしょうか。各々の生き様を背負う人の顔が画面のドットとなり、その集合体がまるで社会を築き上げるように絵画全体を構成する。視覚トリック的な面白さもまた、この手のアートの良さなのかもしれません。
300円で販売されていたジュニア版のブックレットがとても良く出来ていました。(500円の一般向けはかなりイマイチでしたが。)期待以上です。9月3日までの開催です。
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