別冊太陽 「江戸琳派の粋人 酒井抱一」

本年生誕250年を迎えた酒井抱一の画業を豊富な図版とテキストで辿ります。平凡社別冊太陽の「江戸琳派の粋人 酒井抱一」を買ってみました。



定評のある別冊太陽シリーズということで、掲載された大判の作品図版にはいつもながらに遜色がありませんが、監修の仲町啓子氏をはじめ、内藤正人氏、また松尾知子氏など執筆陣によるテキストもかなり充実しています。



目次は以下の通りでした。

[風をつかまえた絵師]
[抱一生涯と作品] 
 大名家に生まれて 
  気高き美人画-大名家の貴公子が描く浮世絵
 隠棲の理想に憧れて
  初期の琳派風作品-宗達派から光琳・乾山風まで
  光琳以前に影響を受けた画家
 光琳へ、押さえきれぬ傾倒
  光琳百図と光琳顕彰-光琳百図から乾山遺墨にいたる
  琳派画の継承-「桜」・「波」・「燕子花」が時空を超えて
 江戸の風流を描く
  花鳥図-軽みで描く四季のうつろい
  代表作「夏秋草図屏風」の世界
  やまと絵-知識人としての関心
[江戸琳派の系譜]


抱一の人生を時系列に辿りながらも、彼に影響を与えた絵師、とりわけ光琳の存在などに注視するなどして、抱一芸術の全貌を詳らかにしていました。

ともかく大名家生まれということもあってか、抱一の残されている資料・文献の量は非常に豊富です。画業初期の浮世絵修行時代より文人サークル、吉原との関係、また光琳私淑や雨華庵と、抱一の歩みをリアルな形で追いかけることが出来ました。



ともかく内容は誌面にあたっていただきたいところですが、巻末に本年開催の抱一関連の展覧会情報も記載されていました。既に各美術館で告知されているので、改めてこちらでもご紹介したいと思います。

「酒井抱一生誕250年 琳派芸術 光悦・宗達から江戸琳派」 出光美術館
第1部:2011年1月8日~2月6日
第2部:2011年2月11日~3月21日
*後期に抱一を含む江戸琳派作品を展観。出品リスト

「生誕250年 酒井抱一 琳派の華」 畠山記念館
前期:2011年1月22日~2月17日
後期:2011年2月19日~3月21日
*前後期で作品を総入れ替え。

「酒井抱一と江戸琳派の全貌」 姫路市立美術館/千葉市美術館/細見美術館
姫路展:2011年8月30日~10月2日
千葉展:2011年10月10日~11月13日
京都展:2012年4月10日~5月13日




巻頭の仲町氏のテキストで「抱一は知の人である。」という一節がとても印象に残りました。抱一というと俳人のイメージからか何かと情緒的な面から語られますが、光琳顕彰の際の言わば科学的な考証など、必ずしも情一辺倒というわけではありません。ここは既存の抱一像に一石を投じようとする仲町氏の思いが伝わってきました。

「酒井抱一 (別冊太陽 日本のこころ)/平凡社」

宗達を受け継いだ光琳「風神雷神図」に対する抱一の回答は言うまでもなく「夏秋草図屏風」です。ここは大判のとじ込み図版で紹介されていました。



まずは書店にてご覧ください。@bessatsutaiyo(別冊太陽非公式アカウント)
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