マウリッツハイス美術館展記者発表会

来年6月、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が新生・東京都美術館へとやってきます。マウリッツハイス美術館展記者発表会に参加してきました。


マウリッツハイス美術館展記者会見会場スクリーン。

2010年より全面改修工事が進行する東京都美術館ですが、いよいよ2012年の6月にグランドオープンを迎えることをご存知でしょうか。


マウリッツハイス美術館全景。

そのオープニングを飾る展覧会が、「北ヨーロッパの宝石箱」ともうたわれるオランダ・ハーグに位置するマウリッツハイス美術館展です。コレクションの中核である17世紀オランダ・フランドル絵画約50点が、新たな東京都美術館のお披露目とあわせて、一同に紹介されることが決まりました。(*東京展以降、神戸市立博物館へと巡回。)

もちろんその最大の目玉はヨハネス・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」に他なりません。画家を代表するかの名作と言えば2000年、大阪で開催された伝説的な「フェルメールとその時代展」に出品されましたが、以来約12年、いよいよ東京都美術館で公開されることになりました。


挨拶するフィリップ・ドゥ・ヘーア駐日オランダ王国特命全権大使。

さて来年の展覧会の開催の案内にあわせ、11月7日、都内のホールにて記者発表会が行われました。


マウリッツハイス美術館展示室。(左、肥塚隆駐オランダ大使日本国特命全権大使。中央、オランダ会場司会雨宮塔子。右、エミリー・ゴーデンカーマウリッツハイス美術館館長。)

来賓の挨拶の後、東京の会場とオランダ・マウリッツハイス美術館がインターネット回線で結ばれ、同館のエミリー・ゴーデンカー館長による作品解説へと移りました。


「ディアナとニンフたち」(1653-1654年頃)の前で解説するゴーデンカー館長。

まずはフェルメールの初期作、「ディアナとニンフたち」です。若い頃のフェルメールはそもそも歴史的な絵画を描くことに興味があり、このような神話を主題とした作品を完成させました。

画面には狩人の女神であるディアナを中央に配していますが、その表現は他の画家とはかなり異なっています。

というのも狩人ということで、一般的にはもっと活動的な姿で描かれることが多いそうですが、フェルメール作ではもの静かで女性的な様相で表現されています。これはフェルメールの描いた一連の静謐な女性像の一つの典型的な例であるとのことでした。


「真珠の耳飾りの少女」(1665年頃)の前で解説するゴーデンカー館長。

続いてフェルメールでは最も有名な「真珠の耳飾りの少女」のご登場です。この魅惑的な少女は一見、実在の人物をモデルにしたようにも思えますが、実は頭のターバンは当時のものでないことから、想像上の人物を描いたということが分かっています。

それを「肖像画」ではなく「トローニー」と呼ぶそうです。17世紀オランダ絵画ではこの「トローニー」が多数存在し、その多くが習作的な性格を持つことでも知られています。フェルメールは「トローニー」である「真珠の耳飾りの少女」を驚くべきテクニックで技術で完成させました。

またフェルメールと言えばカメラ・オブスクラを用いていたのではないかと指摘されますが、諸説はあるものの、ゴーデンカー館長はこの作品に関してはカメラを使っていないのではないかということです。

微かに開いた口、そして何かを訴えかけるような表情は、まさに見る者の心を掴んで離しません。作品の前に立つと彼女にまつわる物語を自由に想像出来るというのも、この作品を味わう醍醐味ではないかということでした。


レンブラント「自画像」(1669年)の前で解説するゴーデンカー館長。

最後に今回のマウリッツハイス美術館展で6点ほど来日するレンブラントのうち、最晩年の傑作である「自画像」の解説が行われました。

そもそもレンブラントの自画像は多くあり、その時代別の変遷を辿るのも興味深いものがありますが、この作品では一般的によく言われる苦しみや困難というよりも、画家として充実な人生を送ったという一つの到達点が示されているのではないかということです。

また作品をX線で調査、解析したところ、当初は画家が仕事をしている時にかぶった白い帽子が描かれていたことが分かったそうです。それをレンブラントは僅かな操作でターバンに変え、絵の意味をもまた違ったものにしました。

レンブラントが終生関心を抱いていた人間の内面をよく表している作品と言えるのかもしれません。

さてマウリッツハイス美術館とのネット回線の中継の終了後、今度は展覧会全体の構成、また出品作についての簡単な解説がありました。

第1章 マウリッツハイス美術館の歴史
第2章 風景画
第3章 歴史画(物語画)
第4章 肖像画
第5章 静物画
第6章 風俗画


以下、各章毎の参考図版を順に掲載しておきます。


第2章「風景画」 *ヤーコプ・ファン・ライスダール「ベントハイム城の眺望」(1670-1675年頃)、「漂白場のあるハールレムの風景」(1652-1654年頃) 


第3章「歴史画」 *レンブラント「スザンナ」、ルーベンス「聖母飛昇天(下絵)」(1622-1625年頃)


第4章「肖像画」 *フランス・ハルス「笑う少年」(1625年頃)


第5章「静物画」 *ヤン・ブリューゲル(父)「万暦染付の花瓶に生けた花」(1610-1615年頃)


第6章「風俗画」 *ヤン・スーテン「親に倣って子も歌う」(1665年頃)、デ・ホーホ「A man smoking and a woman drinking in a courtyard」(1658-1660年頃)

フェルメール、レンブラントの他、ライスダールやブリューゲル、そしてオランダ風俗画ではお馴染みのホーホなども見どころになるのではないでしょうか。

さてこの記者発表会、なんと画期的なことにUSTREAMで全世界にインターネット配信されました。そのアーカイブは現在もマウリッツハイス美術館展のWEBサイトで視聴可能です。是非ともご覧ください。

「マウリッツハイス美術館展」WEBサイト

マウリッツハイス美術館のコレクションが国内でまとめて公開されるのも、1984年の国立西洋美術館での展示以来、約30年ぶりのことです。大幅にリニューアルされ、また新たな装いとなる東京都美術館での展覧会に大いに期待したいと思います。



「マウリッツハイス美術館展」 東京都美術館
会期:2012年6月30日(土)~9月17日(月・祝)
時間:9:30~17:30 *金曜日は20時まで。
休館:月曜日。(7月2日は開室。休日の場合は翌日休館)
主催:東京都美術館、朝日新聞社、フジテレビジョン
後援:オランダ王国大使館
特別協賛:第一生命保険
協賛:ジェイティービー、ミキモト
チケット:2012年3月下旬頃発売開始予定
巡回:神戸市立博物館(2012/9/29-2013/1/6)
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