都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「松戸アートラインプロジェクト2011」 松戸駅西口周辺
松戸駅西口周辺
「松戸アートラインプロジェクト2011」
11/5-11/27
今年も松戸にアートの季節が到来です。松戸アートラインプロジェクト2011へ行ってきました。
昨年より、松戸駅の西口の公共空間や空きテナントなどを用い、主に若いアーティストらによる現代アートのプロジェクトとしてはじまった「松戸アートラインプロジェクト」ですが、今年はテーマに「暮らしの芸術」据え、再び様々なインスタレーションの他、パフォーマンスイベントなどが展開されています。
舞台は松戸駅西口一帯全域です。展示会場も駅から旧街道沿いに広がる市街地内の雑居ビル、もしくは公共施設、さらには屋外と点在しています。
松戸駅西口市街地。目印は緑色の幟旗です。
ガイドは駅構内に置かれた地図付きのパンフレットが有効です。(マップは公式サイトからもダウンロード出来ます。)それを片手に早速、展示を歩いて廻ることにしました。
雑居ビルの空きテナントの一角でコンセプチャルな展示を繰り広げるのがユニット「りきりき」と原田晋です。
りきりき「浮遊ライン」 新角ビル3階
りきりきは松戸の街中のとある電話ボックスの景色と、そこに描かれたドローイングの二つのイメージを映像で重ね合わせます。
原田晋「This World Is Not My Home」 ルシーナビル7階
また原田はおそらくはかつて飲食店であったであろうスペースに、映像作品をまるで星屑のように散らばらせています。この丸窓のある空間もまた特異でした。単純なホワイトキューブではない、こうした場所の面白さも松戸アートラインならではのことかもしれません。
一方、屋外、街中に潜むアートを探すのも松戸アートラインの楽しみ方の一つです。
松戸西口公園
一見、何の変哲もない都市公園である西口公園ですが、周囲の壁によく目を凝らしてください。何やら言葉が色々と記されていることに気がつくのではないでしょうか。
青木麦生「松戸歌壇」 西口公園
実はこれは青木麦生の「松戸歌壇」です。松戸の街の随所に計32首の短歌を溶け込ませています。
青木麦生「松戸歌壇」 松戸市民劇場前
公園に限らず、ベンチなど、あちこちで見ることが出来ました。
「MADウォール」 岩瀬跨線橋~根本交差点
また大掛かりな壁画も気分を盛り上げてくれます。岩瀬跨線橋の壁面を飾るのはMADウォールこと大山エンリコイサムらの作品と、アーティストユニット「ひとつき」の作品です。
「HITOTZUKI ひとつき」 岩瀬跨線橋~根本交差点
「MADウォール」は2010年に完成し、その際の様子は拙ブログにもまとめましたが、今回はその裏手に「ひとつき」の新たな壁画が加わったわけです。かつては落書きも多く、やや暗い印象のあった跨線橋周辺の雰囲気は一変していました。
couch「Mapping Project#1 坂川」 坂川 *展示時間、17:00~21:00
また松戸中心部を流れる坂川をLED照射で青色に染めたcouchも屋外に設置された作品です。残念ながら私が出向いた際は昼間で、その青い光を見ることは出来ませんでしたが、照射された際にはさぞかし見事な光景が出現するのではないでしょうか。
なおこの作品と宮ノ越地下歩道の滝澤潔のインスタレーションは、暗くなってからでないとよく分かりません。夕方からの観覧をおすすめします。
さて今回のアートライン、実のところ展示自体の規模は前回よりかなり縮小したようですが、半ばそれを補う形として行われているのが参加型のワークショップです。
大成哲雄+聖徳大学大成ゼミ「松戸百鬼夜行」 松屋2階
松戸の老舗、松屋の2階の古風なスペースでは、大成哲雄+聖徳大学大成ゼミによる「松戸百鬼夜行」プロジェクトが行われています。これは身近な日用品を用いて様々な「ものの化身」をつくるワークショップで、会場には缶ビールと栄養ドリンクの瓶を組み合わせてつくった「聖ビール」や、ぬいぐるみの綿を集めてつくった妖怪「わたもしゃ」などを紹介していました。
アトリエミルクル「芯のある町」 旧・原田米店
そして同じく松戸で古く残る日本家屋、旧原田米店で行われているのが、アトリエミルクルの「芯のある町」です。トイレットペーパーやラップの芯などをたくさん集め、それを子どもたちによるワークショップで町や森に仕上げています。
「0円ショップ」 鈴木ビル1階
また松戸の一等地、伊勢丹前の空き店舗では「0円ショップ」が展開中です。こちらは参加者が持ち寄った日用品、服や食器などを0円で販売しています。なお会期中、随時持ち込みを受け付けています。自由に参加可能です。ようは究極のフリマと言えるかもしれません。
そして中島祐太は「19時から21時のHobbyScramble」と題し、夜の松戸ミステリーツアーを行いました。(公式サイトにレポートがあります。)ともかく会期中はこうしたワークショップ、またパフォーマンスが目白押しです。展示を単に受動的に見るというよりも、積極的に参加した方が、今回の松戸アートラインはより身近になるのかもしれません。
安藤早織「MAD ANIMA」 塩屋刃物店隣
もちろん開催地、松戸という場所を意識した作品もいくつか点在しています。松戸の町を旅する水玉をコマ撮りアニメーションで表現した安藤早織の「MAD ANIMA」や、ビルの窓から望む松戸の町と自身の空想の風景を平面に重ね合わせた田嶋奈保子の作品などは印象に残りました。
田嶋奈保子「生きる身体 つながる心」 日発ビル6階
それにしても日用品を素材にした作品をはじめ、日常のライフスタイルを見直させるような作品など、会場をめぐり歩いていると「暮らしの芸術」というテーマの重みがひしひしと伝わってきます。
結いの会「結びの宴」 日発ビル5階
言ってしまえば見栄えのするような大掛かりなインスタレーションはありません。しかしながらアートから日常の生活や暮らしの在り方を考え直していこうというアプローチは、あえて地元なので触れますが、東京郊外の中でもとりたてて日の目の当たるわけでもない松戸だからこそ、逆に際立ってくるのではないでしょうか。
そうした点でこの企画をまとめあげた毛利嘉孝氏のディレクションは実に見事だと感心しました。
新坂川周辺
松戸アートラインプロジェクトの公式ツイッターがこまめに展示やイベントの情報発信をしています。要フォローです。(@matsudo_artline)
なお展示は会期中、土日祝のみの開催です。十分にご注意下さい。
11月27日まで開催されています。
「松戸アートラインプロジェクト2011」 松戸駅西口周辺
会期:11月5日(土)~11月27日(日) *会期中土日祝
休館:上記期間内平日
時間:11:00~18:00 *会場により一部異なる場合あり
住所:千葉県松戸市本町7-9 (株)まちづクリエイティブ内 実行委員会事務局
交通:上野駅からJR常磐線快速電車で約20分。松戸駅下車、西口一帯。
「松戸アートラインプロジェクト2011」
11/5-11/27
今年も松戸にアートの季節が到来です。松戸アートラインプロジェクト2011へ行ってきました。
昨年より、松戸駅の西口の公共空間や空きテナントなどを用い、主に若いアーティストらによる現代アートのプロジェクトとしてはじまった「松戸アートラインプロジェクト」ですが、今年はテーマに「暮らしの芸術」据え、再び様々なインスタレーションの他、パフォーマンスイベントなどが展開されています。
舞台は松戸駅西口一帯全域です。展示会場も駅から旧街道沿いに広がる市街地内の雑居ビル、もしくは公共施設、さらには屋外と点在しています。
松戸駅西口市街地。目印は緑色の幟旗です。
ガイドは駅構内に置かれた地図付きのパンフレットが有効です。(マップは公式サイトからもダウンロード出来ます。)それを片手に早速、展示を歩いて廻ることにしました。
雑居ビルの空きテナントの一角でコンセプチャルな展示を繰り広げるのがユニット「りきりき」と原田晋です。
りきりき「浮遊ライン」 新角ビル3階
りきりきは松戸の街中のとある電話ボックスの景色と、そこに描かれたドローイングの二つのイメージを映像で重ね合わせます。
原田晋「This World Is Not My Home」 ルシーナビル7階
また原田はおそらくはかつて飲食店であったであろうスペースに、映像作品をまるで星屑のように散らばらせています。この丸窓のある空間もまた特異でした。単純なホワイトキューブではない、こうした場所の面白さも松戸アートラインならではのことかもしれません。
一方、屋外、街中に潜むアートを探すのも松戸アートラインの楽しみ方の一つです。
松戸西口公園
一見、何の変哲もない都市公園である西口公園ですが、周囲の壁によく目を凝らしてください。何やら言葉が色々と記されていることに気がつくのではないでしょうか。
青木麦生「松戸歌壇」 西口公園
実はこれは青木麦生の「松戸歌壇」です。松戸の街の随所に計32首の短歌を溶け込ませています。
青木麦生「松戸歌壇」 松戸市民劇場前
公園に限らず、ベンチなど、あちこちで見ることが出来ました。
「MADウォール」 岩瀬跨線橋~根本交差点
また大掛かりな壁画も気分を盛り上げてくれます。岩瀬跨線橋の壁面を飾るのはMADウォールこと大山エンリコイサムらの作品と、アーティストユニット「ひとつき」の作品です。
「HITOTZUKI ひとつき」 岩瀬跨線橋~根本交差点
「MADウォール」は2010年に完成し、その際の様子は拙ブログにもまとめましたが、今回はその裏手に「ひとつき」の新たな壁画が加わったわけです。かつては落書きも多く、やや暗い印象のあった跨線橋周辺の雰囲気は一変していました。
couch「Mapping Project#1 坂川」 坂川 *展示時間、17:00~21:00
また松戸中心部を流れる坂川をLED照射で青色に染めたcouchも屋外に設置された作品です。残念ながら私が出向いた際は昼間で、その青い光を見ることは出来ませんでしたが、照射された際にはさぞかし見事な光景が出現するのではないでしょうか。
なおこの作品と宮ノ越地下歩道の滝澤潔のインスタレーションは、暗くなってからでないとよく分かりません。夕方からの観覧をおすすめします。
さて今回のアートライン、実のところ展示自体の規模は前回よりかなり縮小したようですが、半ばそれを補う形として行われているのが参加型のワークショップです。
大成哲雄+聖徳大学大成ゼミ「松戸百鬼夜行」 松屋2階
松戸の老舗、松屋の2階の古風なスペースでは、大成哲雄+聖徳大学大成ゼミによる「松戸百鬼夜行」プロジェクトが行われています。これは身近な日用品を用いて様々な「ものの化身」をつくるワークショップで、会場には缶ビールと栄養ドリンクの瓶を組み合わせてつくった「聖ビール」や、ぬいぐるみの綿を集めてつくった妖怪「わたもしゃ」などを紹介していました。
アトリエミルクル「芯のある町」 旧・原田米店
そして同じく松戸で古く残る日本家屋、旧原田米店で行われているのが、アトリエミルクルの「芯のある町」です。トイレットペーパーやラップの芯などをたくさん集め、それを子どもたちによるワークショップで町や森に仕上げています。
「0円ショップ」 鈴木ビル1階
また松戸の一等地、伊勢丹前の空き店舗では「0円ショップ」が展開中です。こちらは参加者が持ち寄った日用品、服や食器などを0円で販売しています。なお会期中、随時持ち込みを受け付けています。自由に参加可能です。ようは究極のフリマと言えるかもしれません。
そして中島祐太は「19時から21時のHobbyScramble」と題し、夜の松戸ミステリーツアーを行いました。(公式サイトにレポートがあります。)ともかく会期中はこうしたワークショップ、またパフォーマンスが目白押しです。展示を単に受動的に見るというよりも、積極的に参加した方が、今回の松戸アートラインはより身近になるのかもしれません。
安藤早織「MAD ANIMA」 塩屋刃物店隣
もちろん開催地、松戸という場所を意識した作品もいくつか点在しています。松戸の町を旅する水玉をコマ撮りアニメーションで表現した安藤早織の「MAD ANIMA」や、ビルの窓から望む松戸の町と自身の空想の風景を平面に重ね合わせた田嶋奈保子の作品などは印象に残りました。
田嶋奈保子「生きる身体 つながる心」 日発ビル6階
それにしても日用品を素材にした作品をはじめ、日常のライフスタイルを見直させるような作品など、会場をめぐり歩いていると「暮らしの芸術」というテーマの重みがひしひしと伝わってきます。
結いの会「結びの宴」 日発ビル5階
言ってしまえば見栄えのするような大掛かりなインスタレーションはありません。しかしながらアートから日常の生活や暮らしの在り方を考え直していこうというアプローチは、あえて地元なので触れますが、東京郊外の中でもとりたてて日の目の当たるわけでもない松戸だからこそ、逆に際立ってくるのではないでしょうか。
そうした点でこの企画をまとめあげた毛利嘉孝氏のディレクションは実に見事だと感心しました。
新坂川周辺
松戸アートラインプロジェクトの公式ツイッターがこまめに展示やイベントの情報発信をしています。要フォローです。(@matsudo_artline)
なお展示は会期中、土日祝のみの開催です。十分にご注意下さい。
11月27日まで開催されています。
「松戸アートラインプロジェクト2011」 松戸駅西口周辺
会期:11月5日(土)~11月27日(日) *会期中土日祝
休館:上記期間内平日
時間:11:00~18:00 *会場により一部異なる場合あり
住所:千葉県松戸市本町7-9 (株)まちづクリエイティブ内 実行委員会事務局
交通:上野駅からJR常磐線快速電車で約20分。松戸駅下車、西口一帯。
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