「二条城展」 江戸東京博物館

江戸東京博物館
「二条城展」
7/28-9/23



江戸東京博物館で開催中の「二条城展」へ行ってきました。

京都観光のメッカとも言って差し支えない二条城。

それだけに堀川通から望む御殿の威容はもちろん、内部の鶯張りの床、また豪華絢爛な障壁画などもよく知られているところかもしれません。

本展ではそうした二条城の歴史を、障壁画を中心に、関連の資料、工芸品などによってひも解いていきます。

構成は以下の通りでした。

第1章 二条城創建~京に響く徳川の天下
第2章 二条城大改築~東福門院和子の入内と寛永の行幸
第3章 寛永障壁画の輝き~日本絵画史最大の画派、狩野派の粋
第4章 激動の幕末~大政奉還の舞台として
第5章 離宮時代~可憐なる宮廷文化の移植
第6章 世界遺産二条城~文化財を守る・伝える


展示は二条城の創建からスタートです。関ヶ原の戦いに勝利した徳川家康は上洛時の宿として二条城の建造を決めます。そして1603年、ちょうどが家康が征夷大将軍の任を受けた年に無事、落成しました。

ここでは葵の御紋入りの唐門の欄間、そしてさり気なく2~3点ほど出品されている「洛中洛外図屏風」(*何点前後期で展示替えあり。)などが見どころになるのではないでしょうか。


「洛中洛外図屏風(左隻)」17世紀 富山・勝興寺 *前期展示:7/28~8/26

うち一点、勝興寺の「洛中洛外図屏風」は、右上に伏見城、そして中央に二条城を描いた、一双の洛中洛外図としては最古の作例だそうです。

1624年、家光が将軍になると、秀忠の娘である東福門院和子の入内した後水尾天皇の行幸を迎えるため、城の大改修工事が行われます。


「東福門院入内図屏風」17世紀 三井記念美術館 *後期展示:8/28~9/23

こうして完成した本丸や行幸御殿へ後水尾天皇が行幸した時こそが、最も二条城の華やいだ時期と言えるのかもしれません。

またここで面白いのは、二条城がどのようにして改修されていったのかを資料などで紹介していることです。

天守や城内を細かく記した図面なども展示されています。

また行幸時の饗応としてどのような献立が振る舞われたのかを記す「二条城行幸御献立之次第」も興味深い資料ではないでしょうか。

公家300名、大名100名と極めて巨大な宴席、まさに時の権勢を奮った徳川の威信をかけたものに違いありません。


「東福門院和子像」江戸時代 京都・光雲寺

それに東福門院所用の扇なども、当時の雰囲気を伝えてくれました。

さて展覧会のハイライトは障壁画です。

実は二条城、この寛永期の改修時に、探幽率いる狩野派の画人たちによって二の丸御殿の障壁画が描かれましたが、今回はそれらのうち「松鷹図」や黒書院の「菊図」などの主要な作品が展示されています。


狩野山楽または探幽「二の丸御殿 大広間四の間 松鷹図」1626年 京都市(元離宮二条城事務所)

中でもど迫力なのはやはり「松鷹図」、鋭くこちらを睨む鷹の殺気立った様子には思わず後ずさりしてしまいますが、この中央で力強く空間を切り裂く松は、例外的に桃山の様式が踏襲されているとのことでした。

また毎年、東博の国宝室で春を飾る狩野長信の「花下遊楽図」がさり気なく出ています。(前期展示のみ出品。)踊り楽しむ人物の生き生きした様子、やはり何度見ても感心させられます。


狩野甚之丞「二の丸御殿 遠侍二の間 竹林群虎図」1626年 京都市(元離宮二条城事務所)

しかしながら二条城、家光以降は徳川の歴史の表舞台から長い歳月の間、姿を消します。家光以降、次に二条城に足を踏み入れたのは、孝明天皇の行幸に供した14代将軍の家茂、何とその間は約230年です。

1867年には二条城の大広間で大政奉還が行われ、名実ともに徳川の世は終わります。江戸幕府が開かれた年に創建、そしてその終末の舞台も二条城、まさに徳川とともにあった城とも言えるのかもしれません。


「大政奉還(下図)」20世紀 明治神宮

さて二条城、当然ながら何もこれで全て終わってしまったわけではありません。

まさに葵から菊へ、二条城は再び改装され、宮内省の所管へと移行、いわゆる宮中の離宮として使われるようになりました。

その際は内装を正倉院風に模し、一方で広間には絨毯を敷いて様々な人物を持て成したのだそうです。

知られざる大政奉還以降の二条城の歴史についての言及があるのも、この展覧会のポイントかもしれません。


狩野甚之丞「二の丸御殿 遠侍勅使の間(下段) 檜図」1626年 京都市(元離宮二条城事務所)

決して広いとはいえない江戸博企画展示室のスペース、大作の障壁画を引きで見ることこそ叶いませんでしたが、京都以外では初めてとなる大規模な二条城障壁画の展示、私のような江戸絵画、障壁画・屏風絵好きにはたまらない内容でした。

「すぐわかる寺院別障壁画の見かた/東京美術」

先にも触れましたが、何割かの作品は途中で入れ替わります。

前期(7/2-8/26)、後期(8/28-9/23)

また一部作品については8月前半での入替などもあります。詳細は出品リストをご覧ください。

なお展覧会公式ツイッターの「まったか将軍」(@nijocastle2012)がこまめに展覧会の感想を拾っています。ちょっとクセのあるツィート(口癖は「大儀であった。」)です。フォローすると楽しいかもしれません。

「元離宮 二条城/京都新聞出版センター」

会期早々に出かけましたが、館内は思いの外に賑わっていました。

9月23日まで開催されています。

「二条城展」@nijocastle2012) 江戸東京博物館
会期:7月28日(土)~9月23日(日)
休館:月曜日。但し8月13日、9月10日、17日は開館。
時間:9:30~17:30  *毎週土曜日は19:30まで。 
場所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
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