「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」 原美術館

原美術館
「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」 
8/28-11/18



原美術館で開催中の「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」の特別内覧会に参加してきました。

昨年のアート・スコープ「インヴィジブル・メモリーズ」しかり、アーティストの異文化交流を積極的に支援している原美術館。

今回のプロジェクトで招聘したのは広域アジア、及びアメリカ在住の若手アーティスト、計10名です。2007年から2011年にかけ、それぞれ3ヶ月間、日本への「アーティスト・イン・レジデンス」として滞在制作を行った作家の作品が一堂に介しました。

出品作家は以下の通りです。

カディム アリ Khadim Ali [アフガニスタン、1978年生]
ムナム アパン Minam Apang [インド、1980年生]
フロレンシア ロドリゲス ヒレス Florencia Rodrigues Giles [アルゼンチン、1978年生]
デュート ハルドーノ Duto Hardono [インドネシア、1985年生]
プラディープ ミシュラ Pradeep Mishra [インド、1977年生]
ドナ オン Donna Ong [シンガポール、1978年生]
チアゴ ホシャ ピッタ Thiago Rocha Pitta [ブラジル、1980年生]
シャギニ ラトナウラン Syagini Ratnawulan [インドネシア、1979年生]
エリカ ヴェルズッティ Erika Verzutti [ブラジル、1971年生]
メアリー=エリザベス ヤーボロー Mary - Elizabeth Yarbrough [アメリカ、1974年生]

「アジア、中東、南米など比較的公的なサポートの少ない国の作家を選ぶように心がけた。」(@haramuseumより転載。)というアーティストたち、当然ながら文化圏も異なれば、表現の手法も絵画にインスタレーション他と多種多様。

それらの作品が原美術館の建物を一つの「ホーム」と見立て、時に調和、またある時には互いに主張し合うかのように展示されていました。

さて冒頭、チアゴ ホシャ ピッタのモノクロームのオブジェに何やらただならぬ気配を感じる方も多いかもしれません。


チアゴ ホシャ ピッタ「地質大陸移動の記念碑」(2012年)

「地質大陸移動の記念碑」(2012年)と名付けられたこの作品、布がドレープを描いて吊るされていますが、良く目をこらすと表面には石のような固形物が爛れ、石化、つまりは硬くなっている様子が見て取れます。

実はこれはセメントです。帆船としての軽さと石の重量感の両方を伴うというコンセプト、それこそ切り立つ山、またその断面のようにも写るかもしれません。


チアゴ ホシャ ピッタ「空模様と都市の絵画のためのスケッチ」(2008年)

また滞在中に東京の建築に関心を覚えたチアゴ ホシャ ピッタは三点の水彩、「空模様と都市の絵画のためのスケッチ」(2008年)も出品しています。その朧げに浮かぶ直線のシルエット、確かにビルの姿のように見えますが、モノクロームでかつ滲みを帯びた質感は、まるで水墨表現をも連想させてはいないでしょうか。質感は実に繊細でした。

さてモノクロームから一点、眩しいまでの赤が目に飛び込んでくるのは、プラディープ ミシュラの油彩画です。


プラディープ ミシュラの「ウォームス オブ トゥゲザネス9」(2010年)

まさに燃え盛る赤、その中にはミシュラが滞在中に集中して取り上げた動物のモチーフが登場しています。モミュメンタルなまでの「ウォームス オブ トゥゲザネス9」(2010年) の迫力は並大抵ではありません。赤に浮かび上がる二羽の鳥、それこそ神の鳥とでもいうようなオーラを放っていました。

さてもっと日常、ようは東京の生活なり風俗へ関心を寄せた作品を発表しているのが、エリカ ヴェルズッティです。


エリカ ヴェルズッティ「カルボナーダ」(2010年)

まさに滞在中の風景、それこそ電車の車内から、駅で見かけたという「奇妙」(解説より引用)なブロンズ像などを軽妙なタッチで描いています。


エリカ ヴェルズッティ「マネ」、「銀座」、「日比谷ブライド」(2010年)他

また一枚、マネの「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」を描いた作品がありましたが、これは彼女が滞在したのが2010年であることを鑑みると、ちょうどその時三菱一号館美術館で開催されていた「マネとモダン・パリ」で見たものなのかもしれません。


メアリー=エリザベス ヤーボロー「お目にかかれて嬉しいです」(2007年)

さらに日本の生活に密接なのがメアリー=エリザベス ヤーボロー。なんと彼女は日本のカラオケの独特のスタイルに興味をいだき、歌姫、美空ひばりをモチーフとした作品を制作しました。


メアリー=エリザベス ヤーボロー「虚空の中へ」(2008年)他

ちなみにヤーボロー、一見タブローに見えますが、鏡面のアクリルパネルやマットなどを使って、コラージュ風に作品を仕立てているのも興味深いところかもしれません。

さてこのプロジェクト、滞在期間は2007年から2011年。というわけでかの震災後の滞在経験を持つアーティストがいるのも重要なポイントです。


シャギニ ラトナウラン「忘れないで」(2011年)他

震災後に日本に滞在したのはインドネシア人のアーティスト、シャギニ ラトナウランとデュート ハルドーノですが、当然ながら日本人でも大きなショックを受けた大災害、お二方にも強い印象を与えたに違いありません。

「シャギニ ラトナウランは震災後の滞在で、孤独に内面を見つめる機会となった。転換機として貴重な体験。ロンドンのゴールドスミス卒でコンセプチュアルな制作だったが、日本の滞在を経てより自己を見つめ、直感をいかすように。彼女はファッションにも関心。」(@haramuseumより転載。)

震災を踏まえた日本と向き合った外国人アーティスト、その表現の在り方そのものにも注目すべき展覧会と言えそうです。

本展の特設サイトが充実しています!

「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」公式サイト

また9月26日にはWEBやSNSで情報発信をしている方を対象に、特別鑑賞会が開催されます。

「ホームアゲイン 展覧会リポーター特別鑑賞会開催!」
日時:9月26日(水)18:00~20:00 
会場:原美術館
特典:当日限り、展覧会招待
申込締め切り:9月19日(水)
定員:40名

締切は9/19、展覧会に招待される上、キュレータートークも行われるという嬉しい企画です。申込方法などは公式サイトをご参照下さい。



内覧時にはフロレンシア ロドリゲス ヒレスのパフォーマンスも行われました。



また屋上のフラッグもお見逃しなく。こちらはプラディープ ミシュラの作品です。

ちなみに会場内は撮影が可能です。リンク先の注意事項を熟読の上、カメラ片手で出かけましょう。



11月18日まで開催されています。

「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」 原美術館@haramuseum
会期:8月28日(火)~11月18日(日)
休館:月曜日。(但し祝日に当たる9月17日、10月8日は開館。翌9月18日、10月9日は休館。)
時間:11:00~17:00。*毎週水曜日は20時まで開館。
料金: 一般1000円、大高生700円、小中生500円
 *原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料。20名以上の団体は1人100円引。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。
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