「おもしろびじゅつワンダーランド」 サントリー美術館

サントリー美術館
「来て、見て、感じて、驚いちゃって!おもしろびじゅつワンダーランド」展
8/8-9/2



サントリー美術館で開催中の「来て、見て、感じて、驚いちゃって!おもしろびじゅつワンダーランド」展へ行ってきました。

まさに史上初、テーマパーク体験型の日本美術展。既に巷でも大きな評判となっていますが、確かにこれほど「見て、感じて、楽しめる。」日本美術の展覧会はなかったかもしれません。

ともかく冒頭、プラネタリウムからしていきなり「驚いちゃいます」!

ちなみに館内はこれまたおそらくサントリー美術館では史上初の館内撮影可。カメラ必須です。私もデジカメを片手にプラネタリウムで潜り込んでみました。


「模様のプラネタリウム」展示室風景

で、まずはそのプラネタリウム、映像は同館コレクションの自慢の逸品から、国宝「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」です。

元々サントリー美術館は立体展示に定評があり、こうした蒔絵手箱などをいつも見事に見せていますが、それでも通常は内部の細かな意匠を見ることは叶いません。


国宝「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」鎌倉時代 13世紀 サントリー美術館

ようはその繊細な金蒔絵の紋様、まさに箱の裏側のそれも、こうしたボックス型のスペースの天井へ投影しているわけです。満点の星々はまさに金粉、そこへ次々とさも星座を描くかのように紋様が映し出されます。


「模様のプラネタリウム」展示室風景

蒔絵手箱の小宇宙がそれこそ大宇宙へと展開していく様、思いもよらない演出にのっかけからわくわくさせられました。


「武蔵野図屏風 ススキ林のアプローチ」展示室風景

さて宇宙の次は大地、まさにこれからの季節にぴったりのススキの野、武蔵野図が登場します。


「武蔵野図屏風」(部分)江戸時代 17世紀 サントリー美術館

シンプルなススキ林のセットは臨場感抜群。ススキ越しに見やる「武蔵野図屏風」の大自然、もちろん細部の可憐な草花も見逃せませんが、その情緒豊かな展示には感心させられました。

空、自然とくれば次は都市、日本美術の中でも特に都市の風俗に着目した「洛中洛外図屏風」です。


左奥:「洛中洛外図屏風」伝土佐光高 江戸時代 17世紀後半
右:「京都街中タッチパネル」展示室風景


伝土佐光高による洛中洛外、作品自体も比較的状態が良く、京の街を行き交う人々の細かな姿を見ることが出来ますが、それだけで終わらないのが今回の展示。何とタッチパネルのデジタル空間で今に甦らせました。


「京都街中タッチパネル」

もちろんパネルはインタラクティブ。触れば部分部分の情景がぐっとルーペ状にクローズアップ、笑っている人の表情までが確認可能。単眼鏡をのぞき込むよりももっと気軽に拡大して楽しむことが出来るわけでした。


「舞踊図 顔はめパネルなりきりDancers」展示室風景

さて都市の次は我々人間が主人公。金地の中を女性たちがリズミカルに舞う「舞踊図」の世界へ、はめ込みパネルで入り込めます。


「全身で影絵遊び」展示室風景

またさらに面白いのが広重画をモチーフにした「影絵遊び」。ここでは機知に富んだ広重画を障子越しのシルエットで再現します。セットは小さめながらも大人も体験出来るコーナー、ポーズを作るのが意外と難しいのですが、入れ替わり立ち替わり、老若男女による「再現広重」、様々な影絵が生み出されていました。

ラストは名付けて「クール・デザイン鍋島」。my鍋島の絵付けデザインです。


「クール・デザイン鍋島」展示室風景

但し絵付けと言ってもここはまた最新のデジタル、手元のパネルでのバーチャル絵付けに他なりません。


「クール・デザイン鍋島」操作パネル

お皿の種類は三種、また絵柄も10点ほどと一見少なめにも思えますが、実は拡大、一部トリミング、また回転可能ということで、これまた無数のイメージが組み上がっていきます。


「クール・デザイン鍋島」操作パネル

サインをして完成。作品は大きなケースに映し出されます。


「鍋島」展示室風景

ここは人気のコーナーということで、席が埋まると多少の待ち時間も発生するやもしれませんが、隣にズラリと並んだ本物の鍋島を参考にしながら試行錯誤、絵付けにチャレンジしました。


「和ガラスの藍色ドーム展示室風景」

それにしても順路は前後しますが、和ガラスの藍色ドーム、その灯っては消える藍の美しさもまた大いに注目すべきではないでしょうか。


「薩摩切子 藍色被船形鉢」19世紀中頃 サントリー美術館

サントリー美術館のライティング、毎度毎度のセンスの良さに感銘しますが、ガラスの涼し気な藍色を全身で浴びていく体験はとても新鮮でした。


「クール・デザイン鍋島」展示室風景

日本美術、静まり返った空間でガラスケース越しに見やる屏風絵なり掛け軸画、確かにそれも鑑賞態度としては重要なことかもしれません。しかしながら今回は全く異なった地平を目指した新境地です。

あえて出品数をぐっと絞り、時に全身を使ってのインタラクティブの展示にて、日本美術を切っ掛けに見る側の感性を引き出そうとした、まさに前代未聞の展覧会と言えるのではないでしょうか。


「京都街中タッチパネル」展示室風景

この斬新でかつ意欲的な日本美術展を実現したサントリー美術館、そして展示に携われた方へ大いに拍手を送りたいと思います。

9月2日までの開催です。おすすめします。なお嬉しいことに中学生以下は無料です。ご家族で是非!

「来て、見て、感じて、驚いちゃって!おもしろびじゅつワンダーランド」 サントリー美術館
会期:8月8日(水)~9月2日(日)
休館:会期中無休
時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00) *8月12日は20時まで開館。
料金:一般1000円、大学・高校生800円、中学生以下無料。
 *20名以上で団体料金(100円引)。ホームページ限定割引券、及び携帯割(携帯/スマホサイトの割引券提示)あり。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分。
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