都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
長沢蘆雪「群猿図屏風」(かわいい江戸絵画展)
今日まで府中市美術館で開催されていた「かわいい江戸絵画展」。途中で大規模な展示替えがあるとのことで、前期に引き続き後期も昨日観覧。可愛らしくもまた愉快な江戸絵画を堪能することが出来ました。

「かわいい江戸絵画」@府中市美術館 2013/3/9~5/6
さてかわいい云々はともかくも、展示の中でとりわけ感銘した作品が一枚。それが長沢蘆雪の「群猿図屏風」(1786年)。和歌山は草堂寺所蔵の六曲屏風です。盧雪が師応挙の代理として寺院に招かれ、現地で描いたとされるもの。今では重要文化財の指定も受けた名品です。
盧雪の屏風絵として思いつくのが、東北三県巡回中のプライス展にも出ている「白象黒牛図屏風」。白象と黒牛の色、また巨大な象に牛と小さな鴉や子犬と、ともかく対比の妙味に秀でている作品です。その冴えた対比表現を同様に「群猿図屏風」でも見て取れます。

長沢蘆雪「群猿図屏風(左隻)」江戸時代・1786年 草堂寺(和歌山)
まず左隻から。こちらは白を背景に黒い4匹の猿たちの戯れる様子。彼らがいるのは水辺。良く目をこらすと猿の後方には薄塗りの墨によって大地に水際が描かれていることが分かります。

長沢蘆雪「群猿図屏風(右隻)」江戸時代・1786年 草堂寺(和歌山)
さて右隻はどうでしょう。こちらは切り立つ黒い岩山に白い猿が一匹。三角形の頂点にぽつねんと佇む猿が上から左隻の猿を見下ろす姿が表されています。
白猿に黒猿、孤独に群れ。山と水辺。そして上からの視点と下の視点。さらには茫洋と奥へと広がる左隻と、鋭く手前に迫り出して来るかのような右隻の空間そのものの対比。筆致も左隻は穏やか。右隻は一転して荒々しくまた力強い。墨の掠れ、また流れを利用して描かれた山肌からは、岩のごつごつとした質感を見ることも出来ます。
「別冊太陽 長沢芦雪/狩野博幸/平凡社」
一枚の屏風絵、しかもシンプルな主題にも関わらず、これだけの対比を潜ませた蘆雪の画力に発想力。まさに奇才を超えた天才の技。改めて感動しました。

「長沢蘆雪 奇は新なり」@MIHO MUSEUM 2011/3/12~6/5
余談ですが盧雪の回顧展、2011年にMIHO MUSEUMであったのを見逃してしまいました。(図録は東博のミュージアムショップでも販売されています。)またいつか全貌を知る展覧会があればと願ってなりません。

「かわいい江戸絵画」@府中市美術館 2013/3/9~5/6
さてかわいい云々はともかくも、展示の中でとりわけ感銘した作品が一枚。それが長沢蘆雪の「群猿図屏風」(1786年)。和歌山は草堂寺所蔵の六曲屏風です。盧雪が師応挙の代理として寺院に招かれ、現地で描いたとされるもの。今では重要文化財の指定も受けた名品です。
盧雪の屏風絵として思いつくのが、東北三県巡回中のプライス展にも出ている「白象黒牛図屏風」。白象と黒牛の色、また巨大な象に牛と小さな鴉や子犬と、ともかく対比の妙味に秀でている作品です。その冴えた対比表現を同様に「群猿図屏風」でも見て取れます。

長沢蘆雪「群猿図屏風(左隻)」江戸時代・1786年 草堂寺(和歌山)
まず左隻から。こちらは白を背景に黒い4匹の猿たちの戯れる様子。彼らがいるのは水辺。良く目をこらすと猿の後方には薄塗りの墨によって大地に水際が描かれていることが分かります。

長沢蘆雪「群猿図屏風(右隻)」江戸時代・1786年 草堂寺(和歌山)
さて右隻はどうでしょう。こちらは切り立つ黒い岩山に白い猿が一匹。三角形の頂点にぽつねんと佇む猿が上から左隻の猿を見下ろす姿が表されています。
白猿に黒猿、孤独に群れ。山と水辺。そして上からの視点と下の視点。さらには茫洋と奥へと広がる左隻と、鋭く手前に迫り出して来るかのような右隻の空間そのものの対比。筆致も左隻は穏やか。右隻は一転して荒々しくまた力強い。墨の掠れ、また流れを利用して描かれた山肌からは、岩のごつごつとした質感を見ることも出来ます。

一枚の屏風絵、しかもシンプルな主題にも関わらず、これだけの対比を潜ませた蘆雪の画力に発想力。まさに奇才を超えた天才の技。改めて感動しました。

「長沢蘆雪 奇は新なり」@MIHO MUSEUM 2011/3/12~6/5
余談ですが盧雪の回顧展、2011年にMIHO MUSEUMであったのを見逃してしまいました。(図録は東博のミュージアムショップでも販売されています。)またいつか全貌を知る展覧会があればと願ってなりません。
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