「カリフォルニア・デザイン 1930-1965」 国立新美術館

国立新美術館
「カリフォルニア・デザイン 1930-1965」
3/20-6/3



国立新美術館で開催中の「カリフォルニア・デザイン 1930-1965」へ行ってきました。

全50州の中で最多の人口を誇り、数多くの移民を受け入れ、アメリカの文化の一つの中心として発展してきたカリフォルニア州。そこで20世紀半ばに起きたデザイン活動、カリフォルニア・デザインの全容は、これまで必ずしも十分に知られていたとは言い切れません。


ヘンドリク・ヴァン・ケッペル ヴァン・ケッペル=グリーン社「ラウンジ・チェア、オットマン」1939年頃 ロサンゼルス・カウンティ美術館

またその領域も家具、ファッション、陶芸、建築と多様。なかなか一括りにして捉えるのが難しいのも事実。私も実際の展示を見るまではなかなかイメージがわきませんでした。

結果どうだったのか。率直に言えば、カリフォルニア・デザインが当時の社会や産業、文化とどのように関係して発展、もしくは変化していったのか。そうしたことが浮かびあがってくる展覧会だったと思います。

[展覧会の構成]
第1章 カリフォルニア・モダンの誕生
第2章 カリフォルニア・モダンの形成
第3章 カリフォルニア・モダンの生活
第4章 カリフォルニア・モダンの普及


構成は誕生、形成、生活、普及とシンプルなテーマでの4章立て。しかしながら各章には細かなキャプションもあり、作品を通してアメリカの生活や文化が開けてきます。その辺をたぐり寄せて見るとより楽しめるかもしれません。


マーガレット・デ・パッタ デザインズ・コンテンポラリー社「ピン」1946–57年頃 ロサンゼルス・カウンティ美術館

さて冒頭。早速、当時の産業とデザインの関係を問う作品が。それがオプコ・カンパニーの「アイス・ガン」(1935年頃)。カクテル用のアイスクラッシャーですが、それが一体何と関わり合うのか。答えは航空力学。つまり二次大戦の下で発展した航空力学的に優れた形をデザインに落とし込んでいるのです。もちろんカリフォルニアは航空産業の拠点でもあります。

また原子力も同様。リビング用の間仕切りであるグレタ・マグヌソン・グロスマンの「スクリーン」(1952年頃)にはカラフルな木製の球がいくつも。これが原子力から発想されたとか。ちなみこうした間仕切り、大戦後に住宅のリビングとダイニングが一体化していく過程で良く用いられたそうです。あくまでもデザインは生活に身近な場所に存在します。


チャールズ&レイ・イームズ エヴァンス・プロダクツ社成型合板部門「象」1945年 イームズ・コレクションLLC

さらに新しい素材が身近な家具などに転用されていくのもポイントです。合成樹脂や成型合板、それに繊維強化プラスティック。軍事目的の素材が安価な日用品へ。チャールズ&レイ・イームズもその一例です。イームズは大戦での負傷兵に用いられた添え木が、家具の素材にも適していると考えます。もちろん展示ではイームズの家具もずらり。最も目立っていました。


ケム・ウェーバー「机、椅子」1938年頃 ロサンゼルス・カウンティ美術館

アメリカには二次大戦下においてヨーロッパから移民が大量に流入。バウハウスで教育を受けたデザイナーらも次々とカリフォルニアの地にやってきます。またアジアやメキシコの影響も。そして元来の温暖な気候。楽観、自然主義、開放性がキーワードとも言われる土地の気風。それらが合わせ重なってカリフォルニア・デザインの発展の原動力ともなっていくわけです。


レイモンド・ローウィースチュードベーカー社「スチュードベーカー アヴァンティ」1963年 *写真:トヨタ自動車

それにしても家具だけでなく、車にサーフボードに水着に食器に玩具まであれこれと。出品は全250点です。細かに追っかけていくのは大変なので、最後に興味深かったのは言葉を一つ。

「よいデザインが受け入れられることは滅多にない。だから売り込まなければならない。」」ジュリアス・シュルマン(建築写真家)

ラストの第4章「カリフォルニア・モダンの普及」での言葉です。雑誌や新聞、そして映画などのメディアが、カリフォルニアのデザインをどう広めていったのか。その役割についての言及もあります。メディアとデザイン。カリフォルニア・デザインと社会との関わりを示す効果的な展示だったかもしれません。


メアリー・アン・デウィーズ「女性用水着」1961年 ロサンゼルス・カウンティ美術館

会場内の動線が少し変わっています。先に展示室の壁を一周したあとに内側の可動壁へ。そこでさらにぐるりと一回り。外から内へまた外へ。内から全体も見渡せます。開放感がありました。(会場はデザイン建築家の中村竜治氏によるものだそうです。)

「カリフォルニア・デザイン1930‐1965/新建築社/国立新美術館」

6月3日までの開催です。

「カリフォルニア・デザイン 1930-1965ーモダン・リヴィングの起源」 国立新美術館
会期:3月20日(水・祝)~6月3日(月)
休館:火曜日。但し4月30日は開館。
時間:10:00~18:00 *金曜日は20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、 大学生500(300)円、高校生以下無料。
 *( )内は団体料金。3月23日(土)、及び5月18日(土)は入場無料。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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