「シガリット・ランダウ展 ウルの牡山羊」 メゾンエルメス

メゾンエルメス
「シガリット・ランダウ展 ウルの牡山羊」 
5/17-8/18



メゾンエルメスで開催中のシガリット・ランダウ個展、「ウルの牡山羊」へ行ってきました。

1969年にエルサレム生まれ、アメリカやイギリスで幼少期を過ごし、現在はテルアビブに在住するアーティスト、シガリット・ランダウ。2011年には第54回ヴェネツィア・ビエンナーレのイスラエル館を代表し、同年の横浜トリエンナーレにも出品があった。

はて、トリエンナーレでどのような作品を。と思った方も多いかもしれません。実際私もその一人。


「DeadSee」(2005年)

というわけでトリエンナーレの出品作の参考図版を一枚だけ。「DeadSee」。その名の通り死海を西瓜とともに漂う姿を捉えた映像作品。このサークル状の西瓜のイメージで思い出した方もおられるのではないでしょうか。

前置きが長くなりました。さて今回のエルメス、ランダウの日本初個展となる「ウルの牡山羊」では、何を作品を展示しているのか。ずばり映像と居住空間による2つのインスタレーションです。舞台はともにイスラエル。映像は同国南部ネゲブ砂漠のオリーブの森、もう一つのインスタレーションは50年代のイスラエルの典型的な居住空間をモチーフとしています。

さて私自身、断然に面白かったのは前者の映像。つまりオリーブの木の「Out in the Thicket 茂みの中へ」に他なりません。

少しだけ作品の説明を。プロジェクターは4台。いずれも天井に届くほどの巨大なものです。そこに映し出されるのはオリーブの木。一つのオリーブの木が一面の巨大スクリーンに一つ。それらが4面、奥へと連なることで森のようなイメージも醸し出しています。そしてBGMには何やらゴウゴウという音が。時折、鳥の鳴き声なども耳へ。ここから一体何が始まるのか。とすると突然、一枚のスクリーンのオリーブの木が揺れ、動き出しました。

正確に述べるとオリーブは揺さぶられているもの。つまり収穫のために専用のシェーキングマシーンで揺さぶられているのです。バラバラと落下する実と揺れ動く木、そして葉っぱ。その様は揺れるというよりも悶えるよう。収穫という行為に関わらず、何とも恐ろしいまでの震え。まさに木が自ら痙攣して叫び出すかのように激しく揺れています。そしてそれが4面スクリーンで次々と。止まることはありません。まさにただならぬ気配です。

そして先に触れたゴウゴウという音。もちろんオリーブの木が揺れる音です。これがまた大変な迫力。そこに作家本人がヘブライ語によって口ずさむメロディーも。さらに鳥の鳴き声も加わり、一種の混沌、また何らかの呪術が行われているかのような状況が生まれます。

取り憑かれたかのように揺れる木。暴力的とすらいえるかもしれません。その姿追いかけていくと、どこか痛みや苦しみ、そして恐怖感すら覚えました。

なお会場内にはシェーキング・マシーンを言わば体験する装置も。中に入ることで揺れを感じることが出来るそうです。残念ながら出向いた時は調整中でした。再度伺いたいと思います。

一方での居住空間のインスタレーション「火と薪はあります」はテキストにナレーションつき。時間に余裕を持っての観覧が良いかもしれません。

銀座のど真ん中で体験するオリーブの身悶え。仕掛けはシンプルでしたが、非常に印象深いものがありました。

8月18日まで開催されています。

「シガリット・ランダウ展 ウルの牡山羊」 メゾンエルメス
会期:5月17日(金)~8月18日(日)
休廊:会期中無休。
時間:11:00~20:00 *日曜は19時まで。
料金:無料
住所:中央区銀座5-4-1 銀座メゾンエルメス8階フォーラム
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。
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