都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ベストセレクション 美術 2013」 東京都美術館
東京都美術館
「ベストセレクション 美術 2013」
5/4-5/27
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/3a/5ed6173785adaeaae2918844fd3cffd8.jpg)
東京都美術館で開催中の「ベストセレクション美術 2013」のプレスプレビューに参加してきました。
1926年の開館以来、数々の公募展を行ってきた東京都美術館。国立新美術館の開業により、一部公募団体こそ六本木へ移りましたが、公募展とともに歩み続けてきた都美館の地位は何も損なわれているわけではありません。
しかしながら公募展。そのあまりにも多様な活動を逐次追っかけるのが難しいのも事実。気にはなりながらも、なかなか足が向かないという方も少なくないかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/c1/4d9de5ffab1c6563a666059e5a782fc4.jpg)
「ベストセレクション美術2013」展示室風景
そうした方にぴったりなのがこの「ベストセレクション美術2013」。全国の主な公募団体から選ばれた27の団体による合同展。開催は二度目。全面リニューアルを遂げた東京都美術館が昨年に引き続いて行う展覧会です。
さて27団体とは以下の通り。
日本美術院、日展、光風会、日本水彩画会、二科会、国画会、春陽会、白日会、独立美術協会、日本版画協会、東光会、旺玄会、新制作協会、一水会、自由美術協会、 美術文化協会、水彩連盟、創元会、行動美術協会、二紀会、日本彫刻会、示現会、創画会、モダンアート協会、一陽会、主体美術協会、日洋会
ちなみにある理由でこの順番に並べてましたが、それは何故かお気づきになられたでしょうか。
実はこれ、設立年順です。古くは1893年、橋本雅邦に横山大観、また菱田春草らといった錚々たるメンバーによって設立された日本芸術院に始まり、1987年、新しい具象絵画を求めるべく設立された日洋会まで。まさに日本の画壇を作り上げてきた歴史が存在しています。
ちなみに平面作品に限っては、この設立年順で展示されています。その辺を頭の片隅に入れておくのも面白いかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/6b/3fc88b0b7e6c9fe59e04b33709c37b24.jpg)
左:松本高明「浄池」2011年 紙本着色
さてここからは少し自由に惹かれた作品をいくつか。まずは日本芸術院から松本高明の「浄池」。チラシ表紙を飾った一枚。横に伸びるシルバーの筆致。茫洋たる色面には池に写る木立も浮かび上がってきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/3e/fb1301233ee35b04e363c02b50b09573.jpg)
福田玲子「塚」2012年 アクリル、油彩、カンヴァス
続いてはこちら。主体美術教会から福田玲子の「塚」。アクリルに油絵具を駆使して描かれたのは、おそらくは砂浜に転がるであろう一本の枯木。その枯淡な味わいは枯木の記憶をも喚起させます。もちろん細部の精緻な描写も見どころです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/cf/2ef4a44fdbe2d43e39da69577d9d697a.jpg)
岩見健二「創る」2012年 油彩、カンヴァス
また同じく主体美術協会の岩見健二の「創る」も忘れられない一枚。闇に光り輝くのはコンビナート。それこそ工場萌えの世界。随所のハイライトが作品に強いインパクトを与えています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/e1/cc0b103e447e8b4928cb1a8b434f491b.jpg)
奥村美佳「夕風」2012年 紙本着色
そして2006年に日経日本画大賞を受賞した奥村美佳は「夕風」を出品。こちらは創画会。独特の静謐な風景は彼女の真骨頂。水辺の斑紋もまた魅力的です。
ちなみに若い世代と申しましたが、ここでクエスチョン。出品作家で一番若い方は一体何歳でしょうか。
答えは22歳。国画会の竹内佑未。また20代は全部で3名です。翻って最高齢は日展の三谷吾一。生まれは1919年で今年93歳。90代も同じく3名おられます。
まさに老若男女の集ったベストセレクション。若い感性から熟練の境地へ。公募展に年齢はそう関係ありません。常に見据えるのは今の表現であるわけです。もちろん各作家の出品作も近作ばかり。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/7d/a0d860c092ac7dc393a563c47ec995c8.jpg)
「ベストセレクション美術2013」展示室風景
階下には彫刻と版画も。都美館を特徴付ける吹き抜けスペースに並ぶ立体作品。この風景も一つの都美館の伝統ではないでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/84/042f590f9dafcd617ff20657b21f23f9.jpg)
佐藤妙子「永日」2012年、「乗月」2013年 エッチング、アクアチント、紙
版画にいくつか美しい作品があったのも印象的。図版を挙げた佐藤妙子は1980年生まれの若い作家です。また作家といえば、メッセージを残せるボードも設置。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/6d/24a831e2cae85386222161611dd45af2.jpg)
出品作家へのメッセージボード
さらには参加作家によるトークも多数用意されています。
[ベストセレクション 美術 2013 アーティストトーク]
開催日時:5月4日(土・祝)、12日(日)、18日(土)、26日(日)午後1時~4時(予定)
場所: 東京都美術館公募展示室ロビー階 第1・第2、ギャラリーA、B、C(展覧会会場)
*展覧会入場券が必要。
東京都美術館では少なくとも今後、5回まではこのベストセレクション展を続ける方針だそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/7d/27f14e5c18b7c54538f3b0f616d50094.jpg)
「ベストセレクション美術2013」展示室風景
151作家160点による「ベストセレクション 美術 2013」。思わぬほど惹かれる作品もいくつか。先入観抜きにして向き合ってみてはいかがでしょうか。
5月27日まで開催されています。なお大学生以下は無料です。
「ベストセレクション 美術 2013」 東京都美術館(@tobikan_jp)
会期:5月4日~ 5月27日
休館:5月7日(火)、5月20日(月)。
時間:9:30~17:30 *金曜日は20時まで。
料金:一般1000(900)円、65歳以上700円。大学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*5月15日(水)はシルバーデーにより、65歳以上無料。
*5月18日(土)、19日(日)は「家族ふれあいの日」により、都内在住で18歳未満の子どもを同伴する保護者は半額。
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「ベストセレクション 美術 2013」
5/4-5/27
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/3a/5ed6173785adaeaae2918844fd3cffd8.jpg)
東京都美術館で開催中の「ベストセレクション美術 2013」のプレスプレビューに参加してきました。
1926年の開館以来、数々の公募展を行ってきた東京都美術館。国立新美術館の開業により、一部公募団体こそ六本木へ移りましたが、公募展とともに歩み続けてきた都美館の地位は何も損なわれているわけではありません。
しかしながら公募展。そのあまりにも多様な活動を逐次追っかけるのが難しいのも事実。気にはなりながらも、なかなか足が向かないという方も少なくないかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/c1/4d9de5ffab1c6563a666059e5a782fc4.jpg)
「ベストセレクション美術2013」展示室風景
そうした方にぴったりなのがこの「ベストセレクション美術2013」。全国の主な公募団体から選ばれた27の団体による合同展。開催は二度目。全面リニューアルを遂げた東京都美術館が昨年に引き続いて行う展覧会です。
さて27団体とは以下の通り。
日本美術院、日展、光風会、日本水彩画会、二科会、国画会、春陽会、白日会、独立美術協会、日本版画協会、東光会、旺玄会、新制作協会、一水会、自由美術協会、 美術文化協会、水彩連盟、創元会、行動美術協会、二紀会、日本彫刻会、示現会、創画会、モダンアート協会、一陽会、主体美術協会、日洋会
ちなみにある理由でこの順番に並べてましたが、それは何故かお気づきになられたでしょうか。
実はこれ、設立年順です。古くは1893年、橋本雅邦に横山大観、また菱田春草らといった錚々たるメンバーによって設立された日本芸術院に始まり、1987年、新しい具象絵画を求めるべく設立された日洋会まで。まさに日本の画壇を作り上げてきた歴史が存在しています。
ちなみに平面作品に限っては、この設立年順で展示されています。その辺を頭の片隅に入れておくのも面白いかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/6b/3fc88b0b7e6c9fe59e04b33709c37b24.jpg)
左:松本高明「浄池」2011年 紙本着色
さてここからは少し自由に惹かれた作品をいくつか。まずは日本芸術院から松本高明の「浄池」。チラシ表紙を飾った一枚。横に伸びるシルバーの筆致。茫洋たる色面には池に写る木立も浮かび上がってきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/3e/fb1301233ee35b04e363c02b50b09573.jpg)
福田玲子「塚」2012年 アクリル、油彩、カンヴァス
続いてはこちら。主体美術教会から福田玲子の「塚」。アクリルに油絵具を駆使して描かれたのは、おそらくは砂浜に転がるであろう一本の枯木。その枯淡な味わいは枯木の記憶をも喚起させます。もちろん細部の精緻な描写も見どころです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/cf/2ef4a44fdbe2d43e39da69577d9d697a.jpg)
岩見健二「創る」2012年 油彩、カンヴァス
また同じく主体美術協会の岩見健二の「創る」も忘れられない一枚。闇に光り輝くのはコンビナート。それこそ工場萌えの世界。随所のハイライトが作品に強いインパクトを与えています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/e1/cc0b103e447e8b4928cb1a8b434f491b.jpg)
奥村美佳「夕風」2012年 紙本着色
そして2006年に日経日本画大賞を受賞した奥村美佳は「夕風」を出品。こちらは創画会。独特の静謐な風景は彼女の真骨頂。水辺の斑紋もまた魅力的です。
ちなみに若い世代と申しましたが、ここでクエスチョン。出品作家で一番若い方は一体何歳でしょうか。
答えは22歳。国画会の竹内佑未。また20代は全部で3名です。翻って最高齢は日展の三谷吾一。生まれは1919年で今年93歳。90代も同じく3名おられます。
まさに老若男女の集ったベストセレクション。若い感性から熟練の境地へ。公募展に年齢はそう関係ありません。常に見据えるのは今の表現であるわけです。もちろん各作家の出品作も近作ばかり。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/7d/a0d860c092ac7dc393a563c47ec995c8.jpg)
「ベストセレクション美術2013」展示室風景
階下には彫刻と版画も。都美館を特徴付ける吹き抜けスペースに並ぶ立体作品。この風景も一つの都美館の伝統ではないでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/84/042f590f9dafcd617ff20657b21f23f9.jpg)
佐藤妙子「永日」2012年、「乗月」2013年 エッチング、アクアチント、紙
版画にいくつか美しい作品があったのも印象的。図版を挙げた佐藤妙子は1980年生まれの若い作家です。また作家といえば、メッセージを残せるボードも設置。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/6d/24a831e2cae85386222161611dd45af2.jpg)
出品作家へのメッセージボード
さらには参加作家によるトークも多数用意されています。
[ベストセレクション 美術 2013 アーティストトーク]
開催日時:5月4日(土・祝)、12日(日)、18日(土)、26日(日)午後1時~4時(予定)
場所: 東京都美術館公募展示室ロビー階 第1・第2、ギャラリーA、B、C(展覧会会場)
*展覧会入場券が必要。
東京都美術館では少なくとも今後、5回まではこのベストセレクション展を続ける方針だそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/7d/27f14e5c18b7c54538f3b0f616d50094.jpg)
「ベストセレクション美術2013」展示室風景
151作家160点による「ベストセレクション 美術 2013」。思わぬほど惹かれる作品もいくつか。先入観抜きにして向き合ってみてはいかがでしょうか。
5月27日まで開催されています。なお大学生以下は無料です。
「ベストセレクション 美術 2013」 東京都美術館(@tobikan_jp)
会期:5月4日~ 5月27日
休館:5月7日(火)、5月20日(月)。
時間:9:30~17:30 *金曜日は20時まで。
料金:一般1000(900)円、65歳以上700円。大学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*5月15日(水)はシルバーデーにより、65歳以上無料。
*5月18日(土)、19日(日)は「家族ふれあいの日」により、都内在住で18歳未満の子どもを同伴する保護者は半額。
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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