都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「鴻池朋子展 根源的暴力」 神奈川県民ホールギャラリー
神奈川県民ホールギャラリー
「鴻池朋子展 根源的暴力」
10/24-11/28
神奈川県民ホールギャラリーで開催中の「鴻池朋子展 根源的暴力」を見て来ました。
「世界の森羅万象の物語をインスタレーション」(ちらしより)を交えて展開する作家、鴻池朋子。首都圏での大規模な個展は2009年の東京オペラシティアートギャラリー(インタートラベラー展)以来のことです。
タイトルの「根源的暴力」とは、「人間が物を作って生きていくということ自体が、自然に背く行為となる根源的な暴力であると捉えたことから名づけられたもの。」(CINRA.NETより)だそうです。人と自然との関わり、あるいは人がものを作るということはどういうことなのでしょうか。鴻池はかの3.11の大震災以降、東北各地を歩いては、様々な自然や文化に触れ、自身の表現を探り続けてきました。
その一つの結実が今回の展覧会かもしれません。作品は全て新作です。さも鴻池の紡ぐ物語を作品を通して対話、ないし体験するかのようなインスタレーションを展開しています。
物語を誘う小人ということでしょうか。会場のあちこちに立つのは「12人のホイト」です。いずれもマントを纏っては背を向けています。背中にはオオカミらしき動物が描かれていました。足は毛深い。ブーツをはいています。もはや人間ではありません。またマントは牛革製です。確かに気がつけばあたりには牛革特有の臭いが漂っています。そしてこの牛革こそが本展を貫く一つの重要な素材、ないしはモチーフでもありました。
巨大なナメクジも現れました。これも牛革。満月を背負っています。さもこの地下空間の住民であったかのように佇むナメクジ。大きさからしも魔物と呼んだ方が良いかもしれません。奇怪ながらも不思議と愛おしくも感じられます。母性的なものを感じたのは私だけでしょうか。そしてその先にはもはや形になる前の何かとしか言えない陶のオブジェが点在していました。ひょっとするとこれらは命の欠片なのかもしれません。身体の一部を象っているようにも見えました。
皮絵なるものが行手を阻みます。文字通り支持体は皮、例の牛革です。まるで裂いた皮をそのまま吊るしたように広がっています。着物のように仕立てられているものもありました。モチーフは動物です。オオカミにコウモリ、またはイワシなどの魚も描かれています。鮮烈な色彩です。皮は部分毎に分けられ、互いに革紐で結びつけられています。言うまでもなく牛革は牛を屠さなくては得られません。ここに鴻池のいう人間の暴力性が示されているのでしょうか。神への供え物のようにも見えました。もはや呪術的ですらあります。
世界は裂け目から広がりました。階段下の第5展示室です。暗く狭いスペースから突如広がる大空間。入口は裂け目の裏側でした。そして表は例の皮絵、「皮緞帳」と名付けれた牛革のインスタレーションです。大きい。キャプションを見て驚きました。高さは6メートル。横幅は何と20メートルを超えています。
モチーフが特異です。冬眠するオオカミや蝶といった生き物はもちろん、内臓器や血管、また煙か波がわき上がるような様子も描かれています。巨大な背骨も垣間見えました。さらに上部からは白い水、あるいは氷の筋が階段状に垂れています。下には牙も剥き出しになっていました。
まさしく魑魅魍魎、渾然一体とした画面です。一体何者なのでしょうか。ひょっとするとこの存在こそが自然を取り込み、はたまた生き物をも飲み込んでは生きる「一匹の動物」(チラシより)なのかもしれません。
気がつけば何とも粘っこく奇妙な生理的な感覚が皮膚から離れないことに気がつきました。作品は美しく、また同時にグロテスクでもあります。かつて表現していたような宇宙神話的な物語は見られません。より素材と深く関わり、自己の身体と自然へ向き合った、言わば土着的でかつ民話的な世界が広がっていました。
第5展示室のみ撮影が出来ました。(掲載写真はいずれも第5展示室の作品です。)
11月28日まで開催されています。会期末になりましたが、おすすめします。
「鴻池朋子展 根源的暴力」 神奈川県民ホールギャラリー(@kanaken_gallery)
会期:10月24日(土)~11月28日(土)
休館:会期中無休。
時間:10:00~18:00 *入場は閉場の30分前まで。
料金:一般700円、学生・65歳以上500円、高校生以下無料。
*10名以上の団体は100円引。
住所:横浜市中区山下町3-1
交通:みなとみらい線日本大通り駅3番出口より徒歩約6分。JR線関内、石川町両駅より徒歩約15分。横浜市営地下鉄関内1番出口より徒歩約15分。
「鴻池朋子展 根源的暴力」
10/24-11/28
神奈川県民ホールギャラリーで開催中の「鴻池朋子展 根源的暴力」を見て来ました。
「世界の森羅万象の物語をインスタレーション」(ちらしより)を交えて展開する作家、鴻池朋子。首都圏での大規模な個展は2009年の東京オペラシティアートギャラリー(インタートラベラー展)以来のことです。
タイトルの「根源的暴力」とは、「人間が物を作って生きていくということ自体が、自然に背く行為となる根源的な暴力であると捉えたことから名づけられたもの。」(CINRA.NETより)だそうです。人と自然との関わり、あるいは人がものを作るということはどういうことなのでしょうか。鴻池はかの3.11の大震災以降、東北各地を歩いては、様々な自然や文化に触れ、自身の表現を探り続けてきました。
その一つの結実が今回の展覧会かもしれません。作品は全て新作です。さも鴻池の紡ぐ物語を作品を通して対話、ないし体験するかのようなインスタレーションを展開しています。
物語を誘う小人ということでしょうか。会場のあちこちに立つのは「12人のホイト」です。いずれもマントを纏っては背を向けています。背中にはオオカミらしき動物が描かれていました。足は毛深い。ブーツをはいています。もはや人間ではありません。またマントは牛革製です。確かに気がつけばあたりには牛革特有の臭いが漂っています。そしてこの牛革こそが本展を貫く一つの重要な素材、ないしはモチーフでもありました。
巨大なナメクジも現れました。これも牛革。満月を背負っています。さもこの地下空間の住民であったかのように佇むナメクジ。大きさからしも魔物と呼んだ方が良いかもしれません。奇怪ながらも不思議と愛おしくも感じられます。母性的なものを感じたのは私だけでしょうか。そしてその先にはもはや形になる前の何かとしか言えない陶のオブジェが点在していました。ひょっとするとこれらは命の欠片なのかもしれません。身体の一部を象っているようにも見えました。
皮絵なるものが行手を阻みます。文字通り支持体は皮、例の牛革です。まるで裂いた皮をそのまま吊るしたように広がっています。着物のように仕立てられているものもありました。モチーフは動物です。オオカミにコウモリ、またはイワシなどの魚も描かれています。鮮烈な色彩です。皮は部分毎に分けられ、互いに革紐で結びつけられています。言うまでもなく牛革は牛を屠さなくては得られません。ここに鴻池のいう人間の暴力性が示されているのでしょうか。神への供え物のようにも見えました。もはや呪術的ですらあります。
世界は裂け目から広がりました。階段下の第5展示室です。暗く狭いスペースから突如広がる大空間。入口は裂け目の裏側でした。そして表は例の皮絵、「皮緞帳」と名付けれた牛革のインスタレーションです。大きい。キャプションを見て驚きました。高さは6メートル。横幅は何と20メートルを超えています。
モチーフが特異です。冬眠するオオカミや蝶といった生き物はもちろん、内臓器や血管、また煙か波がわき上がるような様子も描かれています。巨大な背骨も垣間見えました。さらに上部からは白い水、あるいは氷の筋が階段状に垂れています。下には牙も剥き出しになっていました。
まさしく魑魅魍魎、渾然一体とした画面です。一体何者なのでしょうか。ひょっとするとこの存在こそが自然を取り込み、はたまた生き物をも飲み込んでは生きる「一匹の動物」(チラシより)なのかもしれません。
気がつけば何とも粘っこく奇妙な生理的な感覚が皮膚から離れないことに気がつきました。作品は美しく、また同時にグロテスクでもあります。かつて表現していたような宇宙神話的な物語は見られません。より素材と深く関わり、自己の身体と自然へ向き合った、言わば土着的でかつ民話的な世界が広がっていました。
第5展示室のみ撮影が出来ました。(掲載写真はいずれも第5展示室の作品です。)
11月28日まで開催されています。会期末になりましたが、おすすめします。
「鴻池朋子展 根源的暴力」 神奈川県民ホールギャラリー(@kanaken_gallery)
会期:10月24日(土)~11月28日(土)
休館:会期中無休。
時間:10:00~18:00 *入場は閉場の30分前まで。
料金:一般700円、学生・65歳以上500円、高校生以下無料。
*10名以上の団体は100円引。
住所:横浜市中区山下町3-1
交通:みなとみらい線日本大通り駅3番出口より徒歩約6分。JR線関内、石川町両駅より徒歩約15分。横浜市営地下鉄関内1番出口より徒歩約15分。
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