「第10回 shiseido art egg 川久保ジョイ展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第10回 shiseido art egg 川久保ジョイ展」 
2/3~2/26



資生堂ギャラリーで開催中の「第10回 shiseido art egg 川久保ジョイ展」を見てきました。

毎年年始恒例、新進アーティストを個展形式で紹介する資生堂アートエッグ。今年も3名の作家が入選しました。会期は例年よりやや後ろ倒しです。2月から4月まで、それぞれ約一ヶ月の日程にて作品を発表します。

まず2月は川久保ジョイです。1979年にスペインのトレドに生まれ、2003年に筑波大学の人間学部を卒業。主に写真、ないし映像作品で知られています。近年はインスタレーションも展開。昨年のVOCA賞では大原美術館賞を受賞しました。



さて会場です。両サイドの壁面にはグレーの爛れたような色面が広がっています。所々に斑紋があり、密度は一定ではありません。そもそも面積からして様々です。上から氷柱を垂らすかのように下まで達しているかと思いきや、まるでコンクリートを切り取ったかのごとく直線的に伸びている部分もあります。



てっきり何かが塗られているのかと思い、壁に近寄ってみました。すると何かが違うことが分かります。結論から言えば塗るではなく削る。何と川久保はギャラリーの壁を研磨しては一種の紋様を生み出しています。ざらりとしています。手で触れることも出来ました。

それにしてもこの紋様、一体何を表しているのでしょうか。率直なところ想像もつきませんでした。何とグラフです。しかも内容は経済。具体的には長期金利(10年物国債の金利)とドル円相場を示しているのです。さらに過去20年と未来予測20年分。確かによく見ると紋様、いやグラフの下方には2015や2035などの西暦年を示す数字が記載されています。

川久保はかつて金融トレーダーに勤務していていたことがあったそうです。よって予測の部分も友人のトレーダーに依頼したもの。未来予測の金利もドル円グラフもかなり衝撃的な数値を示しています。まさしく「世界をとらえるインスタレーション」(*)を制作する川久保。確かに経済こそ世界そのものです。意外な方法で表現していました。



この研磨の作品の合間に3点の平面が並んでいます。おおよそ縦2メートルほど。緑、オレンジ、そして紫でしょうか。色に光はぼんやりとした灯っています。はじめはやはり何か塗ったものだと思いました。

全く異なりました。今度は東日本大震災以降の福島です。震災後、定期的に同地を訪れている川久保は、写真撮影用の銀塩フィルムを土の中に埋め、数ヶ月後掘り出し、引き伸ばして現像する作業を行っています。

色の違いは放射線量の違いによるのだそうです。それをやはり「世界をとらえる」(*)べく表す。振り返れば今年で震災と原発事故から5年。端的に表れた色の違いが今も続く状況を物語ってもいます。



神話もモチーフの一つです。長期金利とドル円グラフの作品のタイトルは「ダイダロスの滝/落命」に「イカロスの落水/水落」。イカロスの墜落になぞらえては日本経済の行く末に警鐘を鳴らしてもいます。また香りにまつわる作品も出品。削り、写し、嗅ぐという多方面のアプローチから展示を練り上げてもいます。(*は公式サイトより)



【第10回 shiseido art egg 展示スケジュール】
川久保ジョイ展 2月3日(水)~2月26日(金) 
GABOMI.展 3月2日(水)~3月25日(金)
七搦綾乃(ななからげあやの)展 3月30日(水)~4月22日(金)

2月26日まで開催されています。

「第10回 shiseido art egg 川久保ジョイ展」 資生堂ギャラリー
会期:2月3日(水)~2月26日(金)
休廊:毎週月曜日
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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