「岸和郎:京都に還る」 TOTOギャラリー・間

TOTOギャラリー・間
「岸和郎:京都に還る」 
1/28~3/20



TOTOギャラリー・間で開催中の「岸和郎:京都に還る」を見てきました。

1950年に横浜で生まれ、京都大学大学院修士課程建築学科専攻を卒業。その後、京都の大学で教壇に立ちながら、建築家としても活動する岸和郎。その岸がこれまでに手がけたプロジェクトが、模型や図面、またパネルなどで紹介されています。

それにしても気になるのはタイトルの「京都に還る」。一体何を意味しているのでしょうか。

岸が京都に拠点を構えたのが1980年の頃。それから40年間あまり住み続けているそうです。岸は時に「京都から逃げたり、また利用したりしながら」(チラシより)建築と関わり続けてきました。いわば京都の歴史や文化へ建築家としてどう向き合っていくのか。試行錯誤もあったのかもしれません。

そのような岸が京都へ深く関わることを決心したのが1990年代のこと。さらにそれが今になって「京都に還る」という意味をなしていたことが「わかりかけてきた」(チラシより)と語っています。


「京都芸術短期大学高原校舎」 京都市左京区 1982年

岸と京都との関わり。中でも重要なのは教鞭をとった3つの大学での仕事です。それが京都芸術短期大学と京都工芸繊維大学、そして京都大学。うち京都芸術短期大学高原校舎の竣工は1982年。事実上のデビュー作です。現在は京都造形芸術大学の映画学科の校舎として利用されています。


「KIT HOUSE」 京都市左京区 2010年

フロア中央に位置するのが「KIT HOUSE」こと京都工芸繊維大学学生会館です。竣工は2010年。同大学の食堂などが入っています。三角屋根も特徴的な2階建ての建物。下からせり上がっては浮いているような形状をしています。階段横に見られる格子状の外壁面も繊細な表情を生み出していました。


「京都大学 北部グラウンド運動部部室棟」 京都市左京区 2014年

京都大学では北部グランド運動部部室棟を担当。3つの建物の中では一番新しい2014年の竣工です。埋蔵文化財を保護するために基礎を特殊な構造として設計したそうです。さらに景観規制を受けているため、勾配屋根を採用しました。


「和歌山の家(松が丘の家)」 和歌山県和歌山市 2002年

手書きの図面が殊更に美しいのには驚きました。例えば「和歌山の家(松ケ丘の家)」。和紙の上に描いています。岸は京都のみならず、日本各地で多くの住宅も設計。その模型や図面もあわせて紹介されていました。


「京都市美術館新館計画案」 京都市左京区 2015年

京都市美術館の新館建築案の模型も出ています。これは昨年、コンペが行われたもの。採用案が青木淳・西澤徹夫設計共同体に決まったことでも話題となりました。また図面上でタブレットを動かすと、地下断面のイメージを自由に見られる仕掛けもあります。竹中工務店の開発した装置だそうです。

ギャラリーの中庭の使い方に舌を巻きました。というのもコンクリート壁に囲まれた屋外、展示の難しいスペースではありますが、岸は意外なアプローチで中庭をある場所に見立てていたからです。


中庭「京都周辺の作品」展示風景

なんと京都です。床の基盤はまさに京都市街。洛中、碁盤の目の区画を表します。中央の緑は御所です。グリットの赤い線は地下鉄烏丸線を示しています。その上にガラスとアクリルの台を設置。そこに京都市中で手がけた建築模型などを展示しているのです。


中庭「京都周辺の作品」展示風景

基盤の右上、大きい石は比叡山だというから驚きです。比叡の向こうにある3つの模型は滋賀県でのプロジェクト。さらに手前のベンチは京都駅でした。まさかこの空間を京都に置き換えるとは思いませんでした。


「岸和郎:京都に還る」会場風景

場内ではテキスタイルウォールとともに、都内に設計した茶室を再現。実寸大のスケールです。各種資料を手にとって見ることも出来ます。

「岸和郎の建築/TOTO出版」

3月20日まで開催されています。

「岸和郎:京都に還る」 TOTOギャラリー・間
会期:1月28日(木)~3月20日(日)
休館:月曜、祝日(2/11)。
時間:11:00~18:00
料金:無料。
住所:港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分。都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅7番出口徒歩6分。
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