「大巻伸嗣 くろい家」 くろい家

くろい家
「大巻伸嗣 くろい家」 
1/30~3/13



くろい家で開催中の「大巻伸嗣 くろい家」を見てきました。

足立区は千住。かつては江戸四宿の一つとして栄え、現在も東京の北東部を代表するターミナルとして賑わっています。



千住に「くろい家」と名付けられた建物があります。築年数は約50年。文字通り外見は真っ黒です。今でこそ廃屋ですが、かつては鉄工所、ないし居酒屋として使われていたとも言われています。

その古民家で現代アーティストの大巻伸嗣がインスタレーションを展開しています。

大巻の代名詞とも言えるシャボン玉です。建物は2階建。まずは順路に沿って2階へとあがりましょう。狭い階段を登ると真っ暗な部屋が待ち構えています。視界はほぼゼロ。はじめは何が周囲にあるかすら分かりません。闇が体へ染み込んできます。しばし前の手すりに捕まりながら、目をぐっと見開き、何かが起こるのを待ちました。

すると上からシャボン玉が現れました。一つです。うっすらと七色に染まりながらも、ミルク色に輝いています。やや大きい。バスケットボールの半分ほどはあるかもしれません。それが目の前をさも気持ち良さそうにすっと落ちていきます。ただそれだけです。しかしながら驚くほどに美しい。しばらくすると次のシャボン玉が落ちてきました。落ちる行き先は見えません。周囲はほぼ無音、闇と静寂が絡み合います。ひたすらにシャボン玉と向き合う時間が続きました。ふと人魂を連想しました。どこか神秘的とも言える空間が広がっています。

次いで1階へ降りてみました。今度はシャボン玉の落下地点です。古い石を敷いた床。いわゆる土間でしょうか。上から先のシャボン玉が落ちてきました。床の石に当たります。するとぶるると震え、微かにボンと音を立てながら弾けていきました。

シャボン玉の落ちる姿、実は一定ではありません。仕掛けは梁です。というのもシャボン玉は1~2階の吹き抜けを落下しますが、途中に屋根や建物を支える梁があります。そこへ時に当たって弾けるのです。

しかもシャボン玉の中には白い煙が入っています。割れると煙は中から漏れ出し、周辺へともやもや広がりました。真っ黒な空間で揺らぐ白い煙。空間をキャンバスに見立ててば、白い煙は絵具といったところでしょうか。闇に描きます。シャボン玉を人魂に例えるなら、煙は人影。さもかつてこの家に住み、集った人の記憶を紡ぐようでもあります。

大巻の古民家を用いた展示といえば、いちはらアート×ミックスの「おおきな家」がありました。今回の「くろい家」もそれに近い内容だと言えそうです。



最後にアクセスの情報です。「くろい家」の最寄駅は北千住駅。西口のロータリーから本町商店街を抜け、さらに東京芸大の千住キャンパスを超えた付近に位置します。駅からは10分ほどです。さらに南下した京成線の千住大橋駅からも歩けます。周辺は細い路地の入り組む住宅地です。

場内は大変に手狭です。よって同時に観覧出来る人数が3名程度と限られています。入口先の受付で順に係の方が案内して下さいます。私が出向いた際にはほかに観客もいませんでしたが、状況によっては待ち時間が発生する場合もあるそうです。ご注意下さい。



作品は一点。とても小さな展示ですが、しばらく時間を忘れてはシャボン玉の描いた景色に見入りました。

土日祝日、および月曜日のみのオープンです。3月13日まで開催されています。

「大巻伸嗣 くろい家」 くろい家
会期:1月30日(土)~3月13日(日)
休廊:火~金曜日。*土日月・祝日のみ開催。
時間:10:00~17:00
料金:無料
住所:足立区千住仲町29-4
交通:JR線、東京メトロ千代田線・日比谷線、東武スカイツリーライン、つくばエキスプレス線北千住駅西口より徒歩10分。京成線千住大橋駅より徒歩10分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )