「レオナルド・ダ・ヴィンチー天才の挑戦」 江戸東京博物館

江戸東京博物館
「レオナルド・ダ・ヴィンチー天才の挑戦」 
1/16~4/10



江戸東京博物館で開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチー天才の挑戦」を見てきました。

誰もが知るルネサンスの巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)。イギリスのスコットランド・ナショナル・ギャラリーに寄託されている「糸巻きの聖母」が初めて日本へやって来ました。

展示は4部構成です。はじめにレオナルドを表した肖像画を俯瞰した上で、レオナルド、および彼の作品を元にした素描を紹介。さらに「鳥の飛翔に関する手稿」を展観した後、「糸巻きの聖母」、ないしはレオナルド派の絵画作品を見る流れとなっています。


レオナルド・ダ・ヴィンチ「花の研究」  1504年頃 アカデミア美術館素描版画室

スケッチは数点。うち特に魅惑的なのが「花の研究」でした。まさに科学者ならぬ万物の観察者でもあったレオナルド。人間や自然を捉えたスケッチを何千枚も残していますが、いずれも筆は緻密。花の開く姿や葉、またその葉脈などを細かに描いています。


レオナルド・ダ・ヴィンチ 「子どもの研究」 1502-1503年頃 アカデミア美術館素描版画室

「子どもの研究」は「聖アンナと聖母子」のイエスを表し、「手の研究」では「岩窟の聖母」の聖母の手のポーズを示しています。会場ではスケッチ横にパネルで作品が参照されていました。

トリノにある直筆の「鳥の飛翔に関する手稿」も日本で初めての公開です。全部で20紙葉。レオナルドが鳥の飛翔に関する研究をはじめ、解剖学や建築学、水力学などについてノートに記しました。


レオナルド・ダ・ヴィンチ「鳥の飛翔に関する手稿」 第10紙葉裏と第11紙葉表 1505年 トリノ王立図書館

うち10、11葉の部分が見開きで紹介されています。ほかは当然ながらファクシミリ版です。事細かに記された文字は良く知られているように鏡面文字。さらに鳥が羽ばたく様子や軌跡、また何やら幾何学的な図像も描かれています。

レオナルドにとって鳥とは自然と人工、すなわち鳥と飛行機の両方を指していました。よって鳥は単に自然の観察物に留まりません。もちろん飛行機自体の記述については断片的なものに過ぎませんが、空を飛ぶ鳥という生き物から飛行機の構造を学ぶという思想は、レオナルドの根底にありました。


レオナルド・ダ・ヴィンチ 「糸巻きの聖母」 1501年頃 バクルー・リビング・ヘリテージ・トラスト

「糸巻きの聖母」はいわゆる円熟期の作品です。同じ主題として2点あるうちの一枚、所蔵先から別名「バクルーの聖母」とも名付けられています。本作は1752年にフランスで確認され、競売にかけられた後、スコットランドのバクルー侯爵家に収められました。

いわゆるプライベートコレクションということで、一般的に公開される機会は極めて限られていました。また2003年には盗難の被害にも遭います。4年後に無事に取り戻され、2009年に同地のナショナル・ギャラリーに寄託されました。2011年にはロンドンのナショナル・ギャラリーで行われたレオナルド展にも出品されたそうです。

ともかく際立つの幼きイエスの体の動きです。歪みとまでとは言えないものの、もはや身をくねらせるようにして糸巻きを手にしています。そして視線の先は先端部。人差指でなぞるように支えています。糸巻きは十字架とする説も存在します。一方の聖母は物静かな表情でイエスを抱いています。手は「岩窟の聖母」さながらに下方、大地の方に向いていました。肌の表現は得意のスフマートです。独特のキメの細かな質感が引き立ってもいます。

キャプションによれば現在、聖母子と前景の岩がレオナルド、後景は後世の加筆だと考えられているそうです。ただ真筆云々については専門家によって見解が分かれているのかもしれません。実際、手元にある「西洋絵画の巨匠 レオナルド・ダ・ヴィンチ」(小学館)に当たったところ、本作については「レオナルドの下絵に基づく工房作」と明記されていました。


ジャンピエトリーノ「マグダラのマリア」 16世紀前半 ベルガモ、アッカデミア・カッラーラ

レオナルドがミラノ滞在期に影響を与えたレオナルド派と呼ばれる画家たちも紹介されています。作品は約10点。うちジャンピエトリーノの「マグダラのマリア」の甘美な表情に魅せられました。また作品の状態こそ悪いものの、「聖母子と聖アンナ」も充実しています。色は落ち、作品全体が暗く、細部の確認ができないのは残念ですが、全体としてレオナルドの同作の描写に良く似ています。周辺の画家が師の作品を忠実に写したのかもしれません。

最後に混雑の状況です。2月11日(祝)の14時過ぎに着きましたが、入口にてチケット購入まで20分待ち、さらに入場まで20分待ちとの案内がありました。

実際には15分ほど並んで入場出来ましたが、会場内は確かに混雑していました。また手稿や素描には小さな作品が多いため、最前列で見るには相当の時間がかかります。さらにほかの作品とは別に「糸巻きの聖母」を観覧するための列も発生していました。

「西洋絵画の巨匠 レオナルド・ダ・ヴィンチ/池上英洋/小学館」

土日祝日の昼間の時間帯を中心に入場規制が行われているようです。今後さらなる混雑も予想されます。時間に余裕を持ってお出かけ下さい。

4月10日まで開催されています。

「レオナルド・ダ・ヴィンチー天才の挑戦」@davinci2016jp) 江戸東京博物館@edohakugibochan
会期:1月16日(土)~4月10日(日)
時間:9:30~17:30
 *毎週土曜日は19時半まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し1/18、3/21、3/28は開館、3/22(火)は休館。
料金:一般1450(1160)円、大学・専門学生1160(930)円、小・中・高校生・65歳以上730(580)円。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *常設展との共通券あり
 *毎月第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上が無料。
住所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
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