都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「村上隆のスーパーフラット・コレクション」 横浜美術館
横浜美術館
「村上隆のスーパーフラット・コレクション 蕭白、魯山人からキーファーまで」
1/30~4/3
横浜美術館で開催中の「村上隆のスーパーフラット・コレクション」を見てきました。
昨年秋からの「五百羅漢図展」が大いに話題となった現代美術家の村上隆。かねてから骨董や現代美術の多様な品々を蒐集してきたそうです。
村上のギャラリスト、ないしはコレクターとしての活動を紹介します。もはや展示室内には入りきれなかったのでしょうか。作品は入口先のグランドギャラリーにまで溢れかえっていました。
会場内、撮影が可能でした。
北大路魯山人「織部 四方鉢」 昭和20年代 ほか
はじまりは日本、東洋美術です。中国は漢時代の俑から信楽の壺、そして蕭白や白隠らの書画と続きます。魯山人の陶芸が殊更に魅惑的でした。お好きなのかもしれません。「織部 四方鉢」や「日月碗」も美しい。さらにイギリスのスリップウェアなど西洋の陶芸も網羅しています。
「雑巾」、「コーヒーフィルター」 制作年不詳
スーパーフラットということで、作品の「カテゴリーをとりはらっている」(公式サイトより)のもポイントです。中には藍染でしょうか。古びてボロボロになった雑巾もあります。コーヒーフィルターも異色です。おそらくは布製。コーヒーが染み込んでは茶色をしています。奇妙に味わい深い。こうした生活のための道具もコレクションの一端をなしています。
「村上隆の脳内世界」展示風景
「とりはらっている」の最たる展示と言えるかもしれません。その名も「村上隆の脳内世界」です。一つの展示室に所狭しと積まれた作品群。天井付近にまで達していました。
グルーヴィジョンズ「チャッピー33」 2001年 ほか
キャプションの「おもちゃ箱をひっくり返したような空間」とは言い得て妙です。陶芸から人形、タイルに木靴、狛犬にグラスからアンティーク家具などが時に整然と、また時にはない交ぜになって展示されています。その中で目立つのはグルーヴィジョンズの「チャッピー33」です。オレンジの服を着たマネキン人形。ヘルメットを被り、防毒マスクをしている者もいます。彼ら彼女らは寄ってたかって押し寄せてはこの空間を支配しているかのようでした。
デイヴィッド・シュグリー「人体デッサン教室」
村上の脳内を覗き込むかのような展示とはいえ、単に全てが見せっぱなしではないのが面白いところです。その一つがスタディルームでした。デイヴィッド・シュグリーによるインスタレーション、人体デッサン教室です。教室とあるだけに参加も可能。誰もが中央の彫刻をモデルにしてデッサンを行うことができます。しかも完成作は壁面に展示されます。少なくとも展覧会会期中は作品としてフラットコレクションの一員になれるわけです。
「村上隆のスーパーフラット・コレクション」展示風景
後半は完全な時系列です。1950年代より今に至るまでの村上コレクションが制作年に沿って展示されています。
ホルスト・ヤンセン「カトリック(カラ)」 1979年 ほか
どうしても自分に感性に触れる作品に目が向くのは致し方ありません。例えばホルスト・ヤンセン。7~8点あります。このスケールで見たのは初めてでした。さらに村上友晴、榎倉康二、中村一美にも見入るもの。かつて原美術館の回顧展で深く印象に残ったヘンリー・ダーガーの大きな作品もありました。アラーキーの「センチメンタルな旅」も控えます。無論、絵画や彫刻のみではありません。
ゴットハルト・グラウブナー「色空間体」 1989年 ほか
奇妙なまでに惹かれた一枚と出会いました。ゴットハルト・グラウプナーの「色空間体」です。分厚いカンヴァス。まるでマットです。そこに焦げ茶色の絵具が染み込みます。色は均一ではなくムラがあります。さも靄がかかっているかのようでした。独特の質感が魅力的でもあります。
奈良美智「ハートに火をつけて」 2001年 ほか
横浜美術館での個展も記憶に新しい奈良美智もご覧の通り。さすがに充実しています。また奈良では入口の「California Orange Covered Wagon」も大掛かりな作品です。目を引くのではないでしょうか。
灰原愛「午後の光、風の匂い、君の涙」 2008年 ほか
彫刻に存在感があるように思えたのは私だけでしょうか。例えばフリードリッヒ・クナスにフランク・ベンソン。かなり前に惹かれたことのあった灰原愛の作品があったのも嬉しいところです。タイトルは「午後の光、風の匂い、君の涙」。楠の木彫です。刹那的な表情を浮かべては手を前であわせていました。
アンゼルム・キーファー「メルカバ」 2010年
グランドギャラリーの「彫刻の庭」も確かに圧巻です。美術館に巣食うジャン・ホァンの「ヒーローNo.1」は牛の革製。ともかく巨大。一体どのように搬入したのでしょうか。そしてキーファーの「メルカバ」も挙げるべきなのでしょう。飛行機の残骸。壊されたのか遺物と化しては痛々しく横たわっていました。
グランドギャラリー 展示風景
それにしてもコレクションは膨大。詳細な解説はなく、もはや全体像を掴むことすら許しません。途中で目の前にある作品が一体、何であるのかが分からなくなることもしばしば。ふと途方に暮れている自分に気がつきました。うかうかしていると館内を覆う何やら異様な熱気にのまれてしまいます。
フリードリッヒ・クナス「スターライト・ウォーカー」 2011年 ほか
もう間もなく会期末です。4月3日まで開催されています。
「村上隆のスーパーフラット・コレクション 蕭白、魯山人からキーファーまで」 横浜美術館(@yokobi_tweet)
会期:1月30日(土)~4月3日(日)
休館:木曜日。但し2月11日(木・祝)は開館。
時間:10:00~18:00
*4月1日(金)、2日(土)は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1400)円、大学・高校生900(800)円、中学生400(300)円。小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体。要事前予約。
*毎週土曜日は高校生以下無料。
*当日に限り、横浜美術館コレクション展も観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
「村上隆のスーパーフラット・コレクション 蕭白、魯山人からキーファーまで」
1/30~4/3
横浜美術館で開催中の「村上隆のスーパーフラット・コレクション」を見てきました。
昨年秋からの「五百羅漢図展」が大いに話題となった現代美術家の村上隆。かねてから骨董や現代美術の多様な品々を蒐集してきたそうです。
村上のギャラリスト、ないしはコレクターとしての活動を紹介します。もはや展示室内には入りきれなかったのでしょうか。作品は入口先のグランドギャラリーにまで溢れかえっていました。
会場内、撮影が可能でした。
北大路魯山人「織部 四方鉢」 昭和20年代 ほか
はじまりは日本、東洋美術です。中国は漢時代の俑から信楽の壺、そして蕭白や白隠らの書画と続きます。魯山人の陶芸が殊更に魅惑的でした。お好きなのかもしれません。「織部 四方鉢」や「日月碗」も美しい。さらにイギリスのスリップウェアなど西洋の陶芸も網羅しています。
「雑巾」、「コーヒーフィルター」 制作年不詳
スーパーフラットということで、作品の「カテゴリーをとりはらっている」(公式サイトより)のもポイントです。中には藍染でしょうか。古びてボロボロになった雑巾もあります。コーヒーフィルターも異色です。おそらくは布製。コーヒーが染み込んでは茶色をしています。奇妙に味わい深い。こうした生活のための道具もコレクションの一端をなしています。
「村上隆の脳内世界」展示風景
「とりはらっている」の最たる展示と言えるかもしれません。その名も「村上隆の脳内世界」です。一つの展示室に所狭しと積まれた作品群。天井付近にまで達していました。
グルーヴィジョンズ「チャッピー33」 2001年 ほか
キャプションの「おもちゃ箱をひっくり返したような空間」とは言い得て妙です。陶芸から人形、タイルに木靴、狛犬にグラスからアンティーク家具などが時に整然と、また時にはない交ぜになって展示されています。その中で目立つのはグルーヴィジョンズの「チャッピー33」です。オレンジの服を着たマネキン人形。ヘルメットを被り、防毒マスクをしている者もいます。彼ら彼女らは寄ってたかって押し寄せてはこの空間を支配しているかのようでした。
デイヴィッド・シュグリー「人体デッサン教室」
村上の脳内を覗き込むかのような展示とはいえ、単に全てが見せっぱなしではないのが面白いところです。その一つがスタディルームでした。デイヴィッド・シュグリーによるインスタレーション、人体デッサン教室です。教室とあるだけに参加も可能。誰もが中央の彫刻をモデルにしてデッサンを行うことができます。しかも完成作は壁面に展示されます。少なくとも展覧会会期中は作品としてフラットコレクションの一員になれるわけです。
「村上隆のスーパーフラット・コレクション」展示風景
後半は完全な時系列です。1950年代より今に至るまでの村上コレクションが制作年に沿って展示されています。
ホルスト・ヤンセン「カトリック(カラ)」 1979年 ほか
どうしても自分に感性に触れる作品に目が向くのは致し方ありません。例えばホルスト・ヤンセン。7~8点あります。このスケールで見たのは初めてでした。さらに村上友晴、榎倉康二、中村一美にも見入るもの。かつて原美術館の回顧展で深く印象に残ったヘンリー・ダーガーの大きな作品もありました。アラーキーの「センチメンタルな旅」も控えます。無論、絵画や彫刻のみではありません。
ゴットハルト・グラウブナー「色空間体」 1989年 ほか
奇妙なまでに惹かれた一枚と出会いました。ゴットハルト・グラウプナーの「色空間体」です。分厚いカンヴァス。まるでマットです。そこに焦げ茶色の絵具が染み込みます。色は均一ではなくムラがあります。さも靄がかかっているかのようでした。独特の質感が魅力的でもあります。
奈良美智「ハートに火をつけて」 2001年 ほか
横浜美術館での個展も記憶に新しい奈良美智もご覧の通り。さすがに充実しています。また奈良では入口の「California Orange Covered Wagon」も大掛かりな作品です。目を引くのではないでしょうか。
灰原愛「午後の光、風の匂い、君の涙」 2008年 ほか
彫刻に存在感があるように思えたのは私だけでしょうか。例えばフリードリッヒ・クナスにフランク・ベンソン。かなり前に惹かれたことのあった灰原愛の作品があったのも嬉しいところです。タイトルは「午後の光、風の匂い、君の涙」。楠の木彫です。刹那的な表情を浮かべては手を前であわせていました。
アンゼルム・キーファー「メルカバ」 2010年
グランドギャラリーの「彫刻の庭」も確かに圧巻です。美術館に巣食うジャン・ホァンの「ヒーローNo.1」は牛の革製。ともかく巨大。一体どのように搬入したのでしょうか。そしてキーファーの「メルカバ」も挙げるべきなのでしょう。飛行機の残骸。壊されたのか遺物と化しては痛々しく横たわっていました。
グランドギャラリー 展示風景
それにしてもコレクションは膨大。詳細な解説はなく、もはや全体像を掴むことすら許しません。途中で目の前にある作品が一体、何であるのかが分からなくなることもしばしば。ふと途方に暮れている自分に気がつきました。うかうかしていると館内を覆う何やら異様な熱気にのまれてしまいます。
フリードリッヒ・クナス「スターライト・ウォーカー」 2011年 ほか
もう間もなく会期末です。4月3日まで開催されています。
「村上隆のスーパーフラット・コレクション 蕭白、魯山人からキーファーまで」 横浜美術館(@yokobi_tweet)
会期:1月30日(土)~4月3日(日)
休館:木曜日。但し2月11日(木・祝)は開館。
時間:10:00~18:00
*4月1日(金)、2日(土)は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1400)円、大学・高校生900(800)円、中学生400(300)円。小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体。要事前予約。
*毎週土曜日は高校生以下無料。
*当日に限り、横浜美術館コレクション展も観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
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