「ラスコー展」 国立科学博物館

国立科学博物館
「世界遺産 ラスコー展~クロマニョン人が残した洞窟壁画」
2016/11/1~2017/2/19



国立科学博物館で開催中の「世界遺産 ラスコー展~クロマニョン人が残した洞窟壁画」を見てきました。

フランス南西部、ヴェゼール渓谷のラスコー洞窟に残された壁画の精密な復元壁画が、上野の国立科学博物館へとやってきました。



展示はおおむね3部構成です。はじめにラスコーの壁画の発見の経緯、ないし洞窟自体を紹介しています。洞窟に壁画が制作されたのは今から2万年前。後期旧石器時代にヨーロッパに住んでいたクロマニョン人の手によって描かれました。

存在が確認されたのは20世紀です。1940年、洞窟近くで遊んでいた子供たちによって発見されました。その後、洞窟は一度公開されますが、見学客が押し寄せたために、壁画の状態が悪化。1963年に保全のために閉鎖されました。つまり今、ラスコーの現地へ出かけても壁画の本物は見られません。



よりラスコーを世界へ知らしめたのは再現壁画です。1983年、「ラスコー2」と呼ばれる最初の再現壁画の洞窟が作られました。完成まで約10年。大変な労力があったことでしょう。現場を整備、測量した後に洞窟を制作。天然の顔料にて壁画が丹念に模写されました。



洞窟模型がラスコーの全体像を教えてくれます。スケールは10分の1。思いの外に複雑です。実際の全長は200メートル。地下に長く伸びては枝分かれしていました。



有名なのは「身廊」です。長さ20メートル、高さ7メートルの大空間。ラスコーで唯一、彩色と線刻の両方の技術を用いた絵が描かれています。



クロマニョン人は洞窟の入口付近の天井の穴から中へ入ったと考えられています。入口の浅い部分を生活の一部に使っていました。8000年前には岩石が堆積。洞窟は自然に封鎖されます。それが結果的に功を奏したのでしょう。壁画は極めて良い状態で発見されたそうです。



最も深い位置にあるのが「井戸状の空間」です。壁にはトリ人間らしき奇妙なモチーフが表されています。意味するところは今も明らかではありません。また地面からはランプやトナカイの角の槍先なども見つかりました。



最奥部は「ネコ科の部屋」です。ラスコー洞窟でただこの空間だけにネコ科の動物が描かれています。狭くて長い。途中で這わなくては潜り込めません。



ハイライトは実寸大壁画の再現展示です。名付けて「ラスコー3」。フランス政府公認の移動可能な立体壁画です。レーザー測量技術により1ミリ以下の精度で壁画が作製されました。



「ラスコー3」は全部で5つ。「身廊」と「井戸状の空間」にある壁画です。写真では分かりにくいかもしれませんが、ともかく臨場感が凄い。迫力があります。まるで本物の洞窟に迷い込んだかのようでした。



壁画も極めて精巧です。「身廊」の「黒い牝ウシ」も堂々としたもの。色鮮やかなのは「背中合わせのバイソン」でした。また例の「トリ人間」も奇妙です。バイソンの前で倒れる人物の頭が何故かトリになっています。ちなみに洞窟で発見された動物の骨の90%はトナカイだったものの、トナカイは1頭しか描かれていないそうです。どういうわけなのでしょうか。



しばらくすると照明が切り替わります。すると「身廊」の線刻がライトで浮かび上がってきました。壁画と線を交互に見せる仕掛けです。



5点ということで、量こそ多くはありません。とはいえ、これほどに緻密であれば、複製でも十分に見応えがあります。撮影も可能です。何度も行き来しては楽しみました。

ラストは壁画を描いたクロマニョン人に関する展示でした。名付けて「芸術のはじまり」です。そもそもヨーロッパではクロマニョン人以前の文化に芸術的要素が殆ど見当たりません。

「体をなめるバイソン」や「ヴィーナスと呼ばれる小立像」をはじめ、「ネコ科の動物が彫られた投槍器」など貴重な品々が集結。フランス国立考古学博物館から相当数の資料が出展されています。日本初公開も少なくありません。

また順は前後しますが、洞窟から発掘された「ラスコーのランプ」も要注目ではないでしょうか。人類が火を使ったのは100万年前以上に遡りましたが、灯りとして炎を持ち込んだのはクロマニョン人が最初といわれています。このランプで使って壁画を描いたのかもしれません。皿のくぼんだ部分に動物の脂を垂らして火をつけたそうです。ランプ自体はほかの洞窟でも多く見つかっていますが、これほど形状が美しいものはないそうです。



さらに洞窟から出土した顔料や線刻に使ったとされる石器なども展示。クロマニョン人を等身大で復元した人形も良く出来ていました。



最後に会場内の情報です。11月3日の祝日に観覧して来ましたが、賑わっていたものの、特に列もなく、総じてゆっくり見られました。

ただ何かと知名度のあるラスコーのことです。会期末に向けて混雑も予想されます。お出かけの際には公式アカウント(@lascaux2016)、ないしは科博WEBサイトの「混雑状況」の情報などを参照ください。



2017年2月19日まで開催されています。

「世界遺産 ラスコー展~クロマニョン人が残した洞窟壁画」@lascaux2016) 国立科学博物館
会期:2016年11月1日(火)~2017年2月19日(日)
休館:月曜日。但し12月26日(月)、1月2日(月)、1月9日(月)、2月13日(月)は開館。年末年始(12月28日~1月1日)。
時間:9:00~17:00。
 *金曜日は20時まで開館。
 *土曜日、及び11月2日(水)、3日(木)は特別展のみ17時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般・大学生1600(1400)円、小・中・高校生600(500)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *金曜限定ペア得ナイト券2000円。(2名同時入場。17時以降。)
住所:台東区上野公園7-20
交通:JR線上野駅公園口徒歩5分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成線京成上野駅徒歩10分。
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