都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「窓学展ー窓から見える世界」 スパイラルガーデン
スパイラルガーデン
「窓学展ー窓から見える世界」
9/28~10/9
スパイラルガーデンで開催中の「窓学展ー窓から見える世界」を見てきました。
アルミ建材メーカーで、ファスナーでも有名なYKK AP株式会社は、2007年より「窓は文明であり、文化である」(解説より)の思想のもと、窓を学問とする「窓学」を提唱してきました。
今年は「窓学」誕生、10周年です。それを期して、大学の機関による窓に関した研究発表のほか、窓をテーマとした現代美術作品を展示しています。
塚本由晴「窓の仕事学」
まずは研究展示です。東京工業大学の塚本由晴が着目したのは、日本の手仕事の作業場や工房における窓の機能でした。「窓の仕事学」では、線香や塩、益子焼や藍染、さらには秋田の燻りがっこの生産現場で、窓がいかに素材に関わり、環境を変化させているのかについて検証しています。
小玉祐一郎「窓の環境制御学」
エステック計画研究所の小玉祐一郎は、室内気候を制御する窓を、光と熱と風に注目して分析しました。自作の家の模型などにより、窓が環境に果たす役割を紹介しています。
村松伸+六角美瑠「窓の進化系統学」
窓の進化について考察したのが、東京大学の村松伸+六角美瑠でした。洋の東西を問わず、古来より常に変化してきた窓の様態を、現代、さらには未来を見据えて紐解いています。
中西礼二「窓の記録学」
日本の古い建築に窓はなく、柱と柱の間に、窓的な役割があることを見出したのが、早稲田大学の中西礼仁でした。その間とは、襖であり、また障子でもあります。中西は「柱間装置」と定義しました。
日本建築における間を捉えた写真がいくつも並んでいます。いずれもポストカードサイズで、手にとることが出来るだけでなく、持ち帰ることも可能でした。古来の日本の建築は、柱の間の空間を、さながら余白のように捉えていたのかもしれません。
原広司「窓のものがたり学」
建築家の原広司も「窓学」に加わります。素材は意外にも文学作品です。テキストの中から窓を抽出し、いわば想像力の世界で、どのように解釈されているのかを探っています。将来的にはデータベースの作成も視野に入れているそうです。窓は単なる建具としてだけではなく、人の生み出した物語の中でも、多様に描かれてきました。
鎌田友介「不確定性の透視図法」
一方で、アートの立場から窓を捉えると、どのように表現されるのでしょうか。サッシ型のオブジェを制作し、窓を通して多様な視点を提示したのが、鎌田友介の「不確定性の透視図法」でした。
鎌田友介「不確定性の透視図法」
一見すると、窓のようでもありますが、その形は複雑で、本来的な機能を有しているようには思えません。またスパイラルに元々ある窓を意識しているのでしょうか。窓を模したオブジェ越しには、窓があり、さらに外の景色が広がっています。否応なしに知覚は外へと誘われました。
ホンマタカシ「Camera Obscura Studies, La Tourette」
写真家のホンマタカシは、ピンホールカメラを用いたインスタレーションを展示しています。舞台は、ル・コルビュジエの設計したラ・トゥーレット修道院です。その宿坊部屋を全てピンホールカメラにし、窓の外の風景を露光させて、撮影しました。
ホンマタカシ「Camera Obscura Studies, La Tourette」
さらに写真だけでなく、部屋の内部空間を原寸大の模型で再現し、中に入ることも出来ます。模型の窓には、人と車の行き交う表参道の景色が飛び込んできます。宿坊部屋の窓の写真と見比べるのも面白いかもしれません。
レアンドロ・エルリッヒ「Window and Ladder - Leaning into History」
ハイライトはスパイラルの吹き抜けです。アルゼンチンのアーティスト、レアンドロ・エルリッヒが、「Window and Ladder - Leaning into History」と題した大型のインスタレーションを展示しています。
レアンドロ・エルリッヒ「Window and Ladder - Leaning into History」
驚きました。古びた「青山堂」との看板のある窓が宙に浮いています。また窓の下にはアルミのハシゴがかかっていました。ワイヤーも見当たりません。一体、どのように自立しているのでしょうか。
レアンドロ・エルリッヒ「Window and Ladder - Leaning into History」
強烈なビジュアルです。実際にも、多くの人が怪訝そうに首を傾げながら、空中の窓を見上げていました。人の視覚や認識を揺さぶる、エルリッヒならではの作品と言えそうです。
入場は無料です。10月9日まで開催されています。
「窓学展ー窓から見える世界」(@madokenjp) スパイラルガーデン(@SPIRAL_jp)
会期:9月28日(木)~10月9日(月・祝)
休館:会期中無休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:港区南青山5-6-23
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅B1出口すぐ。
「窓学展ー窓から見える世界」
9/28~10/9
スパイラルガーデンで開催中の「窓学展ー窓から見える世界」を見てきました。
アルミ建材メーカーで、ファスナーでも有名なYKK AP株式会社は、2007年より「窓は文明であり、文化である」(解説より)の思想のもと、窓を学問とする「窓学」を提唱してきました。
今年は「窓学」誕生、10周年です。それを期して、大学の機関による窓に関した研究発表のほか、窓をテーマとした現代美術作品を展示しています。
塚本由晴「窓の仕事学」
まずは研究展示です。東京工業大学の塚本由晴が着目したのは、日本の手仕事の作業場や工房における窓の機能でした。「窓の仕事学」では、線香や塩、益子焼や藍染、さらには秋田の燻りがっこの生産現場で、窓がいかに素材に関わり、環境を変化させているのかについて検証しています。
小玉祐一郎「窓の環境制御学」
エステック計画研究所の小玉祐一郎は、室内気候を制御する窓を、光と熱と風に注目して分析しました。自作の家の模型などにより、窓が環境に果たす役割を紹介しています。
村松伸+六角美瑠「窓の進化系統学」
窓の進化について考察したのが、東京大学の村松伸+六角美瑠でした。洋の東西を問わず、古来より常に変化してきた窓の様態を、現代、さらには未来を見据えて紐解いています。
中西礼二「窓の記録学」
日本の古い建築に窓はなく、柱と柱の間に、窓的な役割があることを見出したのが、早稲田大学の中西礼仁でした。その間とは、襖であり、また障子でもあります。中西は「柱間装置」と定義しました。
日本建築における間を捉えた写真がいくつも並んでいます。いずれもポストカードサイズで、手にとることが出来るだけでなく、持ち帰ることも可能でした。古来の日本の建築は、柱の間の空間を、さながら余白のように捉えていたのかもしれません。
原広司「窓のものがたり学」
建築家の原広司も「窓学」に加わります。素材は意外にも文学作品です。テキストの中から窓を抽出し、いわば想像力の世界で、どのように解釈されているのかを探っています。将来的にはデータベースの作成も視野に入れているそうです。窓は単なる建具としてだけではなく、人の生み出した物語の中でも、多様に描かれてきました。
鎌田友介「不確定性の透視図法」
一方で、アートの立場から窓を捉えると、どのように表現されるのでしょうか。サッシ型のオブジェを制作し、窓を通して多様な視点を提示したのが、鎌田友介の「不確定性の透視図法」でした。
鎌田友介「不確定性の透視図法」
一見すると、窓のようでもありますが、その形は複雑で、本来的な機能を有しているようには思えません。またスパイラルに元々ある窓を意識しているのでしょうか。窓を模したオブジェ越しには、窓があり、さらに外の景色が広がっています。否応なしに知覚は外へと誘われました。
ホンマタカシ「Camera Obscura Studies, La Tourette」
写真家のホンマタカシは、ピンホールカメラを用いたインスタレーションを展示しています。舞台は、ル・コルビュジエの設計したラ・トゥーレット修道院です。その宿坊部屋を全てピンホールカメラにし、窓の外の風景を露光させて、撮影しました。
ホンマタカシ「Camera Obscura Studies, La Tourette」
さらに写真だけでなく、部屋の内部空間を原寸大の模型で再現し、中に入ることも出来ます。模型の窓には、人と車の行き交う表参道の景色が飛び込んできます。宿坊部屋の窓の写真と見比べるのも面白いかもしれません。
レアンドロ・エルリッヒ「Window and Ladder - Leaning into History」
ハイライトはスパイラルの吹き抜けです。アルゼンチンのアーティスト、レアンドロ・エルリッヒが、「Window and Ladder - Leaning into History」と題した大型のインスタレーションを展示しています。
レアンドロ・エルリッヒ「Window and Ladder - Leaning into History」
驚きました。古びた「青山堂」との看板のある窓が宙に浮いています。また窓の下にはアルミのハシゴがかかっていました。ワイヤーも見当たりません。一体、どのように自立しているのでしょうか。
レアンドロ・エルリッヒ「Window and Ladder - Leaning into History」
強烈なビジュアルです。実際にも、多くの人が怪訝そうに首を傾げながら、空中の窓を見上げていました。人の視覚や認識を揺さぶる、エルリッヒならではの作品と言えそうです。
「窓学展」始まっています。 鎌田友介氏は、窓と認識をテーマに新作『不確定性の透視図法(水平連続窓)』を制作。ぜひ会場にて窓のもつ多面性を体験して下さい。#窓学展 #窓学 【窓学展】会期:9月28日(木)- 10月9日(月・祝)会場:表参道スパイラル(1F)入場料無料 pic.twitter.com/BQEB86BWq2
— YKK AP 窓研究所 (@madokenjp) 2017年10月1日
入場は無料です。10月9日まで開催されています。
「窓学展ー窓から見える世界」(@madokenjp) スパイラルガーデン(@SPIRAL_jp)
会期:9月28日(木)~10月9日(月・祝)
休館:会期中無休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:港区南青山5-6-23
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅B1出口すぐ。
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