都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「運慶の後継者たちー康円と善派を中心に」 東京国立博物館
東京国立博物館・本館
「運慶の後継者たちー康円と善派を中心に」
8/29~12/3
東京国立博物館で開催中の「運慶の後継者たちー康円と善派を中心に」を見てきました。
「特別展 運慶」にあわせ、運慶の後継者の仏師を紹介する展示が、本館の総合文化展(常設展)の14室で行われています。
まず目立つのは、「文殊菩薩騎獅像および侍者立像」でした。興福寺に伝来し、運慶の4男である康勝の息子、康円が造った仏像です。つまり運慶の次の次の世代に当たります。現在は東博の所蔵で、通常は5体揃って公開されますが、個々に分けて展示されています。文殊と従者はおろか、文殊の光背も、獅子も、それぞれ別に置かれていました。
一部の作品の撮影も出来ました。

重要文化財「文殊菩薩騎獅像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像)」 康円作 鎌倉時代・文永10(1273)年
右手で剣を持ち、威厳に満ちた様子で前を見据えるのが、「文殊菩薩坐像」でした。4人の従者を従えて海を渡る、「渡海文殊」を構成した仏像で、銘文から制作年も判明(1273年)し、興福寺勧学院の本尊として安置されてきました。一部の肌に金色が残っていますが、これは金箔ではく、金泥を使用しているそうです。目尻から眉にかけての険しい表情が、特に印象に残りました。

重要文化財「獅子像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像)」 康円作 鎌倉時代・文永10(1273)年
まるで吼えたてるように口を開いているのが、「文殊菩薩坐像」の乗る「獅子像」でした。一見、目を見開き、さも威嚇するような姿にも思えますが、よく見ると、どこかコミカルで、親しみやすい表情をしています。この「獅子像」にも、朱色の色彩が残っていました。太い脚の指の反面、足首がやや細く感じられたのも、一つの特徴かもしれません。

左:重要文化財「大聖老人立像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永10(1273)年
右:重要文化財「于闐王立像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永10年(1273)年
4人の従者はいずれも表情が豊かです。特に獅子の手綱を引く「于闐王立像」は、実に勇ましく、両足を踏ん張り、左手を強く前に突き出す姿には動きも感じられました。

左:重要文化財「善財童子立像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永10(1273)年
右:重要文化財「仏陀波利三蔵立像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永10(1273)年
一方で、静的でかつ、厳格な表情をしているのが、「仏陀波利三蔵立像」でした。ともかく痩せていて、胸の骨ばった造形も特徴的ですが、眉間に皺を寄せ、口を引き、何やら強い念が込められているようにも見えます。ちなみに「于闐王立像」は西域のホータン国の王を指し、「仏陀波利三蔵立像」は、旅するインド人の僧として表現されるそうです。また従者に関しては、康円の指導の元、願主自らが彫ったとする意見もあります。「文殊菩薩坐像」と見比べるのも面白いかもしれません。

重要文化財「東方天眷属立像(四天王眷属のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永4(1267)年
重要文化財「南方天眷属立像(四天王眷属のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永4(1267)年
同じく康円の「東方天眷属立像」と「南方天眷属立像」にも注目です。四天王の従者で、かなりの小像ながらも、表情は豊かで、どこか人間味が感じられます。面白いのが「南方天」の足元です。というのも、ブーツの片方が破れ、足の指が飛び出しています。類例がないとのことでしたが、康円は何故にこのような表現をとったのでしょうか。
善円の「地蔵菩薩立像」も見どころの一つでした。横に切れた、涼しげな目元が特徴的です。衣文は流麗で、力強い康円の仏像に対し、どこか洗練された様式も見ることが出来ます。康円より少し上の世代の善円は、興福寺に所属し、慶派をやや離れながらも、奈良を中心に活動していました。息子も仏師であったことから、彼らを「善派」と呼ぶそうです。

「地蔵菩薩立像」 鎌倉時代・13世紀
作者不明ながらも、同じく「地蔵菩薩立像」も、善円系統の作品とのことでした。その片鱗が伺えるかもしれません。

「文殊菩薩立像」 鎌倉時代・13世紀
東博の醍醐味は常設にあります。もちろん運慶展のチケットでも観覧出来ます。こちらもお見逃しなきようご注意ください。
12月3日まで開催されています。
「運慶の後継者たちー康円と善派を中心に」 東京国立博物館・本館(@TNM_PR)
会期:8月29日(火)~12月3日(日)
時間:9:30~17:00。
*毎週金・土曜、および11月2日(木)は21時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し10月9日(月・祝)は開館。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*運慶展の当日チケットでも観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
「運慶の後継者たちー康円と善派を中心に」
8/29~12/3
東京国立博物館で開催中の「運慶の後継者たちー康円と善派を中心に」を見てきました。
「特別展 運慶」にあわせ、運慶の後継者の仏師を紹介する展示が、本館の総合文化展(常設展)の14室で行われています。
まず目立つのは、「文殊菩薩騎獅像および侍者立像」でした。興福寺に伝来し、運慶の4男である康勝の息子、康円が造った仏像です。つまり運慶の次の次の世代に当たります。現在は東博の所蔵で、通常は5体揃って公開されますが、個々に分けて展示されています。文殊と従者はおろか、文殊の光背も、獅子も、それぞれ別に置かれていました。
一部の作品の撮影も出来ました。

重要文化財「文殊菩薩騎獅像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像)」 康円作 鎌倉時代・文永10(1273)年
右手で剣を持ち、威厳に満ちた様子で前を見据えるのが、「文殊菩薩坐像」でした。4人の従者を従えて海を渡る、「渡海文殊」を構成した仏像で、銘文から制作年も判明(1273年)し、興福寺勧学院の本尊として安置されてきました。一部の肌に金色が残っていますが、これは金箔ではく、金泥を使用しているそうです。目尻から眉にかけての険しい表情が、特に印象に残りました。

重要文化財「獅子像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像)」 康円作 鎌倉時代・文永10(1273)年
まるで吼えたてるように口を開いているのが、「文殊菩薩坐像」の乗る「獅子像」でした。一見、目を見開き、さも威嚇するような姿にも思えますが、よく見ると、どこかコミカルで、親しみやすい表情をしています。この「獅子像」にも、朱色の色彩が残っていました。太い脚の指の反面、足首がやや細く感じられたのも、一つの特徴かもしれません。

左:重要文化財「大聖老人立像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永10(1273)年
右:重要文化財「于闐王立像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永10年(1273)年
4人の従者はいずれも表情が豊かです。特に獅子の手綱を引く「于闐王立像」は、実に勇ましく、両足を踏ん張り、左手を強く前に突き出す姿には動きも感じられました。

左:重要文化財「善財童子立像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永10(1273)年
右:重要文化財「仏陀波利三蔵立像(文殊菩薩騎獅像および侍者立像のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永10(1273)年
一方で、静的でかつ、厳格な表情をしているのが、「仏陀波利三蔵立像」でした。ともかく痩せていて、胸の骨ばった造形も特徴的ですが、眉間に皺を寄せ、口を引き、何やら強い念が込められているようにも見えます。ちなみに「于闐王立像」は西域のホータン国の王を指し、「仏陀波利三蔵立像」は、旅するインド人の僧として表現されるそうです。また従者に関しては、康円の指導の元、願主自らが彫ったとする意見もあります。「文殊菩薩坐像」と見比べるのも面白いかもしれません。

重要文化財「東方天眷属立像(四天王眷属のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永4(1267)年
重要文化財「南方天眷属立像(四天王眷属のうち)」 康円作 鎌倉時代・文永4(1267)年
同じく康円の「東方天眷属立像」と「南方天眷属立像」にも注目です。四天王の従者で、かなりの小像ながらも、表情は豊かで、どこか人間味が感じられます。面白いのが「南方天」の足元です。というのも、ブーツの片方が破れ、足の指が飛び出しています。類例がないとのことでしたが、康円は何故にこのような表現をとったのでしょうか。
善円の「地蔵菩薩立像」も見どころの一つでした。横に切れた、涼しげな目元が特徴的です。衣文は流麗で、力強い康円の仏像に対し、どこか洗練された様式も見ることが出来ます。康円より少し上の世代の善円は、興福寺に所属し、慶派をやや離れながらも、奈良を中心に活動していました。息子も仏師であったことから、彼らを「善派」と呼ぶそうです。

「地蔵菩薩立像」 鎌倉時代・13世紀
作者不明ながらも、同じく「地蔵菩薩立像」も、善円系統の作品とのことでした。その片鱗が伺えるかもしれません。

「文殊菩薩立像」 鎌倉時代・13世紀
東博の醍醐味は常設にあります。もちろん運慶展のチケットでも観覧出来ます。こちらもお見逃しなきようご注意ください。
12月3日まで開催されています。
「運慶の後継者たちー康円と善派を中心に」 東京国立博物館・本館(@TNM_PR)
会期:8月29日(火)~12月3日(日)
時間:9:30~17:00。
*毎週金・土曜、および11月2日(木)は21時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し10月9日(月・祝)は開館。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*運慶展の当日チケットでも観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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