都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「マジカル・アジア」 東京国立博物館
東京国立博物館・東洋館
「博物館でアジアの旅 マジカル・アジア」
9/5~10/15
アジアに関する美術工芸、考古品を、「マジカル」のキーワードで見せる展覧会が、東京国立博物館の東洋館にて行われています。
主な切り口は3つです。まずは「チベットの仏教と密教の世界」(東洋館12室)でした。同地の仏教は、密教の中でも呪術性が強く、儀礼を重視するため、独特の複雑な造形の仏像が生み出されました。
「ヴァジュラバイラヴァ父母仏立像」 中国 清時代・17〜18世紀
その1つが、「ヴァジュラバイラヴァ父母仏立像」です。たくさんの手を付けた、男女が抱擁する象った仏像で、ここから、ほかの仏が生まれると考えられていたそうです。頭部は水牛で、呪いのための道具を持っています。いかにも異形で、恐ろしい仏像ではないでしょうか。足で鳥獣を踏みつけていました。
「八臂十一面観音菩薩立像」 中国 清時代・17〜18世紀
チベットで、ラクシュミー流として親しまれているのが、「八臂十一面観音菩薩立像」でした。頭上には十一面の顔があり、8本の腕が表されています。笑っているような表情が印象的でした。どちらかと言えば、端正な造形ながらも、引き締まった腰や、四方に伸びる腕などに、個性を見出せるのではないでしょうか。
「六臂マハーカーラ立像」 中国 清時代・17〜18世紀
いわゆる大黒天は、本来的に「大いなる暗黒」を意味するシヴァ神の別名でもあるそうです。まさに怒りの表情を見せるのが、「六臂マハーカーラ立像」でした。口を開き、目を剥いては、凄まじい形相で前を睨んでいます。チベットでは、寺院を敵から守る仏として信仰されています。
「加彩舞女」 中国 唐時代・7〜8世紀
2つ目は「唐三彩」(東洋館5室)です。鮮やかな釉薬で、人物や動物を彩った三彩は、中国・唐の時代、主に俑として墓へ埋葬されました。
「三彩馬」 中国 唐時代・7〜8世紀
この三彩がまとめて展示されています。ご覧のように、大型の展示ケースの中にも、三彩がずらりと並んでいました。
ラストが「アジアの祈り」(東洋館13室)です。祈りとはいえども、内実は多様で、中には民間の呪術や迷信も含まれます。まさに魔法です。最もマジカルの意味を体現していたかもしれません。
「精霊の仮面」 パプアニューギニア 20世紀初頭
古来よりパプアニューギニアでは、先祖の精霊を、仮面や偶像に表してきました。ずばり「精霊の仮面」です。ニューギニア島のセピック川流域の仮面で、顔は楕円形をしています。長い鼻と、笑みをたたえた口元が特徴的でもありました。
「クリス」 インドネシア、ジャワ島東部 17〜18世紀
神秘的な霊力を持つと考えられているのが、インドネシアの刀こと「クリス」でした。うねうねと歪んだ形は、極めて個性的です。成分の異なった鉄を重ねて鍛え、薬品で処理しては、独特な刃文を作り出しています。現代においても、男性は伝統的な正装の際、腰にクリスを挿すそうです。祈りは何も古い時代のものだけではありません。
「呪詛人形」 東京上野公園 明治10(1877)年
この祈りにて仰天の文物がありました。何と呪いの人形です。1877年、上野公園のイチョウに釘で打ち付けられていたもので、もちろん誰が作ったものかも、何を呪ったのかも分かりません。確かに体の中央には釘が刺さっていました。何やら強い怨念を感じさせます。未だ呪力を保っているかのようでした。
「共命鳥像」 中国・ヨートカン 5世紀
さらにマジカルが導くアジアツアーは、東洋館の全館に及びます。人面を2つ持った「共命鳥像」なども、興味深いのではないでしょうか。男女に作り分けられている例は珍しいそうです。
「揺銭樹」 中国四川省あるいはその周辺 後漢時代・1〜2世紀
古代中国の「揺銭樹」も、元来は人々の信仰した、神仙や目出度い文物で飾った架空の樹木でした。頂部には鳳凰が止まり、枝には龍の姿も垣間見えました。
「マジカル・アジア」の目印はピンク色のキャプションです。チラシがパンフレットの役割を果たしています。
「ナーガ上のブッダ坐像」 カンボジア・アンコール アンコール時代・12世紀
いわゆるコレクション展でもあり、何も凝った仕掛けがあるわけではありませんが、キャッチーなタイトルも効果的なのかもしれません。普段、ともすると寂しい感のある東洋館が、普段より賑わっているように見えました。
総合文化展の料金のみ(特別展チケットでも可)で観覧出来ます。
10月15日まで開催されています。
「博物館でアジアの旅 マジカル・アジア」 東京国立博物館・東洋館(@TNM_PR)
会期:9月5日(火) ~10月15日(日)
時間:9:30~17:00。
*毎週金・土曜は21時まで。9月中の日曜と9月18日(月・祝)は18:00まで。9月22日(金)・23日(土・祝)は22時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*特別展チケットでも観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
「博物館でアジアの旅 マジカル・アジア」
9/5~10/15
アジアに関する美術工芸、考古品を、「マジカル」のキーワードで見せる展覧会が、東京国立博物館の東洋館にて行われています。
主な切り口は3つです。まずは「チベットの仏教と密教の世界」(東洋館12室)でした。同地の仏教は、密教の中でも呪術性が強く、儀礼を重視するため、独特の複雑な造形の仏像が生み出されました。
「ヴァジュラバイラヴァ父母仏立像」 中国 清時代・17〜18世紀
その1つが、「ヴァジュラバイラヴァ父母仏立像」です。たくさんの手を付けた、男女が抱擁する象った仏像で、ここから、ほかの仏が生まれると考えられていたそうです。頭部は水牛で、呪いのための道具を持っています。いかにも異形で、恐ろしい仏像ではないでしょうか。足で鳥獣を踏みつけていました。
「八臂十一面観音菩薩立像」 中国 清時代・17〜18世紀
チベットで、ラクシュミー流として親しまれているのが、「八臂十一面観音菩薩立像」でした。頭上には十一面の顔があり、8本の腕が表されています。笑っているような表情が印象的でした。どちらかと言えば、端正な造形ながらも、引き締まった腰や、四方に伸びる腕などに、個性を見出せるのではないでしょうか。
「六臂マハーカーラ立像」 中国 清時代・17〜18世紀
いわゆる大黒天は、本来的に「大いなる暗黒」を意味するシヴァ神の別名でもあるそうです。まさに怒りの表情を見せるのが、「六臂マハーカーラ立像」でした。口を開き、目を剥いては、凄まじい形相で前を睨んでいます。チベットでは、寺院を敵から守る仏として信仰されています。
「加彩舞女」 中国 唐時代・7〜8世紀
2つ目は「唐三彩」(東洋館5室)です。鮮やかな釉薬で、人物や動物を彩った三彩は、中国・唐の時代、主に俑として墓へ埋葬されました。
「三彩馬」 中国 唐時代・7〜8世紀
この三彩がまとめて展示されています。ご覧のように、大型の展示ケースの中にも、三彩がずらりと並んでいました。
ラストが「アジアの祈り」(東洋館13室)です。祈りとはいえども、内実は多様で、中には民間の呪術や迷信も含まれます。まさに魔法です。最もマジカルの意味を体現していたかもしれません。
「精霊の仮面」 パプアニューギニア 20世紀初頭
古来よりパプアニューギニアでは、先祖の精霊を、仮面や偶像に表してきました。ずばり「精霊の仮面」です。ニューギニア島のセピック川流域の仮面で、顔は楕円形をしています。長い鼻と、笑みをたたえた口元が特徴的でもありました。
「クリス」 インドネシア、ジャワ島東部 17〜18世紀
神秘的な霊力を持つと考えられているのが、インドネシアの刀こと「クリス」でした。うねうねと歪んだ形は、極めて個性的です。成分の異なった鉄を重ねて鍛え、薬品で処理しては、独特な刃文を作り出しています。現代においても、男性は伝統的な正装の際、腰にクリスを挿すそうです。祈りは何も古い時代のものだけではありません。
「呪詛人形」 東京上野公園 明治10(1877)年
この祈りにて仰天の文物がありました。何と呪いの人形です。1877年、上野公園のイチョウに釘で打ち付けられていたもので、もちろん誰が作ったものかも、何を呪ったのかも分かりません。確かに体の中央には釘が刺さっていました。何やら強い怨念を感じさせます。未だ呪力を保っているかのようでした。
「共命鳥像」 中国・ヨートカン 5世紀
さらにマジカルが導くアジアツアーは、東洋館の全館に及びます。人面を2つ持った「共命鳥像」なども、興味深いのではないでしょうか。男女に作り分けられている例は珍しいそうです。
「揺銭樹」 中国四川省あるいはその周辺 後漢時代・1〜2世紀
古代中国の「揺銭樹」も、元来は人々の信仰した、神仙や目出度い文物で飾った架空の樹木でした。頂部には鳳凰が止まり、枝には龍の姿も垣間見えました。
「マジカル・アジア」の目印はピンク色のキャプションです。チラシがパンフレットの役割を果たしています。
「ナーガ上のブッダ坐像」 カンボジア・アンコール アンコール時代・12世紀
いわゆるコレクション展でもあり、何も凝った仕掛けがあるわけではありませんが、キャッチーなタイトルも効果的なのかもしれません。普段、ともすると寂しい感のある東洋館が、普段より賑わっているように見えました。
総合文化展の料金のみ(特別展チケットでも可)で観覧出来ます。
【東洋館3室】じっとこちらを見つめるこの作品は「アイマスク」。死者の顔を覆う綿製の面に縫いつけられていました。サングラスや砂よけなど砂漠で使うアイテムと考えられています。死者の眼を守る #マジカル・アジア な作品です。 pic.twitter.com/YdKO1kJFIi
— トーハク広報室 (@TNM_PR) 2017年9月30日
10月15日まで開催されています。
「博物館でアジアの旅 マジカル・アジア」 東京国立博物館・東洋館(@TNM_PR)
会期:9月5日(火) ~10月15日(日)
時間:9:30~17:00。
*毎週金・土曜は21時まで。9月中の日曜と9月18日(月・祝)は18:00まで。9月22日(金)・23日(土・祝)は22時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*特別展チケットでも観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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