「八木夕菜 NOWHERE」 ポーラミュージアムアネックス

ポーラミュージアムアネックス
「八木夕菜 NOWHERE」
6/15~7/8



ポーラミュージアムアネックスで開催中の「八木夕菜 NOWHERE」を見てきました。

2004年にニューヨーク・パーソンズ美術大学建築学部を卒業し、建築設計事務所の勤務を経たのち、アーティストとして活動をはじめた八木夕菜は、主に建築をモチーフとした、写真やインスタレーションを制作してきました。


「ひとつになる世界」 2015〜2018年

小さなアクリルボックスの中に、建築物が閉じ込められていました。「ひとつになる世界」と題した作品で、横から見る限りでは、無色透明、中に何も入っているように見えません。しかし別の側面や上から眺めると、建築の写真が差し込まれていることが分かりました。


「ひとつになる世界」 2015〜2018年

いずれの写真も、別々の建築で、中には合掌造りの家屋と、ガラスのピラミッドが写っている作品もありました。つまり、本来的には異なった場所にあり、全く異質の建築が、ボックスの中で「ひとつに」なって、存在していたわけでした。


「ANONYMOUS(バウハウス)」 2018年

「ANONYMOUS」は、建物の写真の看板やロゴの上へ、直接、アクリスボックスを載せた作品でした。


「ANONYMOUS(ニューヨーカー)」 2018年

ちょうど正面から向き合うと、ロゴが浮き上がって見えるものの、一部の角度からでは、完全に見えなくなってしまい、一体、何を示す建物か分からなくなりました。ロゴや看板の名称を通して、建物を捉えようとする、人の認識に揺さぶりをかけているのかもしれません。


「くずれゆく世界」 2016〜2018年

会場で最も目立っていたのは、床面に置かれたアクリルブロックの作品、「くずれゆく世界」でした。全8点あり、中には大阪や東京のほか、ナントやバンコクなど、国内外の建築物の写真が収められていました。その全ては、上から吊るされたライトで照らされていて、中にはメガストラクチャーのプレハブ建築で知られる、芦屋浜団地も写されていました。


「くずれゆく世界」 2016〜2018年

遠目からでは分かりにくいかもしれませんが、近寄って覗きこむと、写真の画像の一部に歪みがあることが見て取れました。いずれも意図的に処理されたもので、かつてのホテルオークラ東京のロビーを写した作品では、かなりの部分が歪んでいました。


「くずれゆく世界」 2016〜2018年

さらにアクリルブロックの中には、水が張られていて、その僅かな揺らめきにより、像はさらにぶれているようにも思えました。「くずれゆく」の名が示すように、建築が崩壊する姿を目の当たりにしたような錯覚に陥るかもしれません。


「Blanc/Black」 2018年

「Blanc/Black」も興味深いではないでしょうか。全ては京都の日向大神宮を捉えていて、手前に極めて明るいフィルムがあり、奥には対照的に暗い写真が並んでいました。


「Blanc/Black」 2018年

これは、光の三原色と、色の三原色を重ねて表現された作品で、前者は光が白に、そして後者は影の黒が現れていました。まさに写真の光と影をテーマとしていました。


「NOW/HERE」 2018年

フィルムプロジェクターによって映し出された「NOW/HERE」の言葉が、鏡を通して、会場全体を緩やかに巡っていました。いわば建築的に構築された、展示空間も魅惑的と言えそうです。


7月8日まで開催されています。

「八木夕菜 NOWHERE」 ポーラミュージアムアネックス@POLA_ANNEX
会期:6月15日(金)~7月8日(日)
休館:会期中無休
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は閉館の30分前まで
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )