都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「野口哲哉~中世より愛をこめて」 ポーラミュージアムアネックス
ポーラミュージアムアネックス
「野口哲哉~中世より愛をこめて~ From Medieval with Love」
7/13~9/2

ポーラミュージアムアネックスで開催中の「野口哲哉~中世より愛をこめて~ From Medieval with Love」を見てきました。
1980年に香川に生まれた現代美術家、野口哲哉は、かねてより鎧兜を着た武者をモチーフにした作品を制作し、人気を集めてきました。

「Clumsy heart」
その武者が出迎えてくれました。甲冑を身につけた出で立ちで、後ろを向きながら、どこか一心不乱に右手をあげていました。実に精巧な甲冑で、装飾も細かに作られていて、ミニチュアではありながらも、本物と見間違うかのようでした。実際に野口は、甲冑制作に際し、古色までを再現するなど、綿密に考証を行っているそうです。

「Clumsy heart」(部分)
しかし、野口は単に、古の武者を今に蘇らせているわけではありません。回り込んで見れば、武者が手にしているのは、オルビスの口紅で、その先には「愛」こと、ハートマークがありました。しかも、表情は飄々としていて、妙にリアリティーがあり、どこか身近にいる人物にも思えなくはありません。戦う武人と言うよりも、市井の人々、例えれば現代の市民のようでした。

「Sleep Away」
精巧な甲冑とともに、武者の仕草や表情も大きな魅力と言えるかもしれません。中でも「Sleep Away」は、机の上で肘をついて眠る男の姿を象っていますが、まるで学校の授業中に居眠りをする学生のようでした。野口は「善人も悪人も学者も戦士も、眠る顔はとても穏やかです。」と語っています。すやすやと気持ち良さそうに眠っていました。

「CLEVAER BIRD」
多くの鎧武者にモデルはいないものの、一部に実在の人物をベースにした作品もありました。それが「CLEVER BIRD」で、野口がドキュメント映画で目にした、ナショナル・ギャラリーの館長、ニコラス・ペリー氏をモデルにしたとしています。少し背を丸めながらも、上目遣いで彼方を見やる眼光は鋭く、まさにcleverな様子であり、凄みすら感じられました。

「AD1660 日本の兜を被ったレンブラント」
平面にも注目です。「鎧を着た隣人」は、鎌倉や室町、戦国の人々の姿を、西洋画家の手法で描いたシリーズで、「AD1660 日本の兜を被ったレンブラント」は、かの画家の自画像に兜を被せて描いた肖像でした。
野口は、自らの好きな西洋画の巨匠たちが、日本の戦国武将や鎌倉時代と同世代であることに気づき、レンブラントも、江戸幕府の三代将軍家光と1歳違いで、兜などの日本の美術品を収集していたと指摘しています。

「17C 音楽の寓意~フェルメールに基づく」
また「17C 音楽の寓意~フェルメールに基づく」は、円空と同じ年とするフェルメールを引用した作品で、鎧武者が椅子にかけては鍵盤を叩く光景を描いていました。ヨーロッパと日本の戦国時代の時間と空間が、1つの絵画の中で入り混じったと言えるかもしれません。

「アクションマン・シリーズ」
ほかには「アクションマン・シリーズ」も楽しいではないでしょうか。まさにTVの戦隊ものようで、4人の武者が思い思いにポーズを構えていました。
「野口哲哉作品集〜中世より愛をこめて/求龍堂」
古典に立脚しながらも、中世から時を超え、現代にワープしてやって来たかのような武者たちは、いずれもコミカルな表情を見せていて、親しみやすくもありました。また野口の設定した世界観もユーモラスで、キャプションも面白く、様々にイメージを膨らませることも出来ました。

「野口哲哉~中世より愛をこめて」会場風景
野口の個展は、近年、2014年に練馬区立美術館と、アサヒビール大山崎山荘美術館にて「野口哲哉の武者分類図鑑」が開催されました。その際、特に練馬の個展では、会期後半にかけて話題を集めました。ポーラアネックスでの個展も、今のところ混雑とは無縁ですが、ひょっとするとSNSや口コミで人気に火がつくやもしれません。早めの観覧をおすすめします。
9月2日まで開催されています。
「野口哲哉~中世より愛をこめて~ From Medieval with Love」 ポーラミュージアムアネックス(@POLA_ANNEX)
会期:7月13日(金)~9月2日(日)
休館:会期中無休
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は閉館の30分前まで
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
「野口哲哉~中世より愛をこめて~ From Medieval with Love」
7/13~9/2

ポーラミュージアムアネックスで開催中の「野口哲哉~中世より愛をこめて~ From Medieval with Love」を見てきました。
1980年に香川に生まれた現代美術家、野口哲哉は、かねてより鎧兜を着た武者をモチーフにした作品を制作し、人気を集めてきました。

「Clumsy heart」
その武者が出迎えてくれました。甲冑を身につけた出で立ちで、後ろを向きながら、どこか一心不乱に右手をあげていました。実に精巧な甲冑で、装飾も細かに作られていて、ミニチュアではありながらも、本物と見間違うかのようでした。実際に野口は、甲冑制作に際し、古色までを再現するなど、綿密に考証を行っているそうです。

「Clumsy heart」(部分)
しかし、野口は単に、古の武者を今に蘇らせているわけではありません。回り込んで見れば、武者が手にしているのは、オルビスの口紅で、その先には「愛」こと、ハートマークがありました。しかも、表情は飄々としていて、妙にリアリティーがあり、どこか身近にいる人物にも思えなくはありません。戦う武人と言うよりも、市井の人々、例えれば現代の市民のようでした。

「Sleep Away」
精巧な甲冑とともに、武者の仕草や表情も大きな魅力と言えるかもしれません。中でも「Sleep Away」は、机の上で肘をついて眠る男の姿を象っていますが、まるで学校の授業中に居眠りをする学生のようでした。野口は「善人も悪人も学者も戦士も、眠る顔はとても穏やかです。」と語っています。すやすやと気持ち良さそうに眠っていました。

「CLEVAER BIRD」
多くの鎧武者にモデルはいないものの、一部に実在の人物をベースにした作品もありました。それが「CLEVER BIRD」で、野口がドキュメント映画で目にした、ナショナル・ギャラリーの館長、ニコラス・ペリー氏をモデルにしたとしています。少し背を丸めながらも、上目遣いで彼方を見やる眼光は鋭く、まさにcleverな様子であり、凄みすら感じられました。

「AD1660 日本の兜を被ったレンブラント」
平面にも注目です。「鎧を着た隣人」は、鎌倉や室町、戦国の人々の姿を、西洋画家の手法で描いたシリーズで、「AD1660 日本の兜を被ったレンブラント」は、かの画家の自画像に兜を被せて描いた肖像でした。
野口は、自らの好きな西洋画の巨匠たちが、日本の戦国武将や鎌倉時代と同世代であることに気づき、レンブラントも、江戸幕府の三代将軍家光と1歳違いで、兜などの日本の美術品を収集していたと指摘しています。

「17C 音楽の寓意~フェルメールに基づく」
また「17C 音楽の寓意~フェルメールに基づく」は、円空と同じ年とするフェルメールを引用した作品で、鎧武者が椅子にかけては鍵盤を叩く光景を描いていました。ヨーロッパと日本の戦国時代の時間と空間が、1つの絵画の中で入り混じったと言えるかもしれません。

「アクションマン・シリーズ」
ほかには「アクションマン・シリーズ」も楽しいではないでしょうか。まさにTVの戦隊ものようで、4人の武者が思い思いにポーズを構えていました。

古典に立脚しながらも、中世から時を超え、現代にワープしてやって来たかのような武者たちは、いずれもコミカルな表情を見せていて、親しみやすくもありました。また野口の設定した世界観もユーモラスで、キャプションも面白く、様々にイメージを膨らませることも出来ました。

「野口哲哉~中世より愛をこめて」会場風景
野口の個展は、近年、2014年に練馬区立美術館と、アサヒビール大山崎山荘美術館にて「野口哲哉の武者分類図鑑」が開催されました。その際、特に練馬の個展では、会期後半にかけて話題を集めました。ポーラアネックスでの個展も、今のところ混雑とは無縁ですが、ひょっとするとSNSや口コミで人気に火がつくやもしれません。早めの観覧をおすすめします。
本日より、表情豊かな鎧姿の人物を制作し、国内外でも人気の若手作家 野口哲哉氏の4年ぶりとなる大型個展「~中世より愛をこめて~ From Medieval withLove」を開催します。7/13- 9/2 https://t.co/q4z1a1KPp7 #野口哲哉 #polamuseumannex pic.twitter.com/g5ozwWTnUw
— ポーラ ミュージアム アネックス (@POLA_ANNEX) 2018年7月13日
9月2日まで開催されています。
「野口哲哉~中世より愛をこめて~ From Medieval with Love」 ポーラミュージアムアネックス(@POLA_ANNEX)
会期:7月13日(金)~9月2日(日)
休館:会期中無休
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は閉館の30分前まで
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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