「竹内栖鳳 京都画壇の画家たち」 山種美術館

山種美術館
「没後70年 竹内栖鳳 京都画壇の画家たち」
9/29-11/25



山種美術館で開催中の「没後70年 竹内栖鳳 京都画壇の画家たち」のプレスプレビューに参加してきました。

「東の大観、西の栖鳳。」とまで称され、近代日本画の一時代を築いた竹内栖鳳。重要文化財「班猫」こそよく知られているものの、画業の全てを網羅する機会は決して多くはありませんでした。

ずばり本展は関東では約10年ぶりとなる栖鳳メインの展覧会です。

またいわゆる京都画壇に着目しているのも重要なところ。栖鳳はもちろん、彼の学んだ円山四条派から弟子たちまでの作品、計70点(前後期の展示替えあり。)にて、その全体像を明らかにしていました。


展示室風景

さて展示は最大の有名作「班猫」から始まります。

金泥、胡粉、また黄土を用い細かな線で表した猫の毛の巧みな質感、誰もが賞賛しうる傑作ですが、この猫に実在のモデルがいたということをご存知でしょうか。


竹内栖鳳「班猫」1924(大正13)年 絹本・彩色 山種美術館

それがこのパネルに写された猫です。


「班猫」のモデルとなった猫

栖鳳が沼津の八百屋から譲り受けて描いたものの、完成後に何処かへ消えてしまったというエピソードも残っています。

ちなみに栖鳳は日本画家としてかなり早い段階で写真を利用していたとか。彼の高い写実表現、写真との関係もまたポイントとなりそうです。

続いては栖鳳以前、円山四条派を始めとする江戸絵画が並びます。


円山応挙「虎図」 18世紀(江戸中期) 紙本・墨画 東京国立博物館 *前期展示(9/29~10/28)

蕪村、応挙に蘆雪に森狙仙と続きますが、興味深いのは栖鳳画とのモチーフ、また表現上の共通点です。

例えば円山四条派で好まれた雀は栖鳳も得意の画題。また蘆雪画における動と静、言わば大胆さと精緻さを合わせ備えた描写は栖鳳にも受け継がれています。

後で触れるように栖鳳の画風は驚くほど広いため、必ずしも円山四条派の後継者だとは言い切れませんが、イメージの源泉は確かに応挙周辺にあったようです。

さてここからはいよいよ栖鳳、前後期合わせて約40点の作品が登場します。そしてともかく強調したいのは、栖鳳は実に幅広い作風を展開していることと、素材、顔料や紙への強い関心です。

まずはこの「象図」、蘆雪の「白象黒牛図」を思わせる金屏風の大作です。


竹内栖鳳「象図」 1904(明治37)年頃 紙本金地・墨画 個人蔵 *前期展示(9/29~10/28)

ここではいわゆる付立、輪郭線や下書きを用いずに筆の腹を活かして一気に描く手法が用いられていますが、その線は細部だけを切り出せばそれこそ抽象の世界、細微を伺った「班猫」の画家と同一とは思えないくらいに大胆な筆致で描かれています。

またその一方で猿はかなり細かく表され、それを巨大な象と対比させることで、実に深遠な空間を生み出すことに成功しています。

また動物といえばもう一つ「飼われたる猿と兎」も興味深いのではないでしょうか。


竹内栖鳳「飼われたる猿と兎」 1908(明治41)年 絹本・彩色 東京国立近代美術館

実は栖鳳は猿も兎も飼っていたそうで、それ故の観察眼もあるのかもしれませんが、一般的に日本画では丸まって描かれることの多い兎を、あえて実際の動きに近い伸びた形で描くほど、写実表現を追求しています。

また絹本の裏箔へ上部は金、下部は胡粉を入れ込み、明暗のニュアンスを変化させたという素材へのこだわりも。

そして栖鳳は紙にも強い関心があり、富山から手漉きの紙を取り寄せていました。


竹内栖鳳「梅園」 昭和5年頃 紙本・彩色 山種美術館

独特の光沢感を帯びた「梅園」も銀潜紙と呼ばれる特別な紙を用いていますが、絵具や紙にも着目していくと、栖鳳画をより深く楽しめるかもしれません。

さて表現の多様性に戻りましょう。

栖鳳は1900年、明治33年のパリ万博に際してヨーロッパへ遊学、そこで西洋画を学んでいますが、中国にも関心があり、大正9、10年には中国へ旅行もしています。

その結実が「城外風薫」、訪ねた蘇州を思い起こして描いた作品ですが、この豊かな叙情性はターナーやコローにも通じはしないでしょうか。


竹内栖鳳「潮来小暑」 1930(昭和5)年 絹本・彩色 山種美術館

ちなみにここでは塔に注目。実は栖鳳、狩野派における塔のモチーフに興味を覚え、その源は中国にあるとして旅立ったのだそうです。

また叙情性と言えば忘れられないのが撥墨の表現を駆使した「晩鴉」です。


竹内栖鳳「晩鴉」 1933(昭和8)年 紙本・墨画 山種美術館

栖鳳は俳句にも造詣が深く、蕪村を敬愛していたそうですが、時に詩情すらたたえた作風は、まさに俳諧の精神の表れなのかもしれません。

それにしても栖鳳、まだまだ多様性を見せます。


中央:竹内栖鳳「熊」 1910(明治43)年 絹本・彩色 京都市美術館 *前期展示(9/29~10/28)

あの「班猫」の筆致とは似ても似つかぬほどに激しい「熊」、また古径を思わせる淡彩の静物の小品など、いずれもが全く異なった作風ながらも確かに栖鳳なのです。

それに東本願寺の天井画のために描いた「散華」もまた別のスタイルをとった一枚。


竹内栖鳳「散華」(部分) 1910(明治43)年 絹本・彩色 京都市美術館 *前期展示(9/29~10/28)

天女は実際のヌードの女性をモデルしたそうですが、その衣の下には身体の輪郭を示す線が残っています。

こうした表現は仏画では極めて異例だそうですが、そこは村上華岳の「裸婦図」との共通点も。栖鳳は何も「班猫」だけの画家ではありません。初めて見知ったその奥深き絵画世界、思わず身震いするほどでした。


竹内栖鳳「蹴合」1926(大正15)年 絹本・彩色 *後期展示(10/30~11/25)

会期中展示替えがあります。是非とも前後期追っかけたいところです。

前期:9/29~10/28 後期:10/30~11/25 出品リスト

なお山種美術館の山崎館長の連載コーナー、家庭画報の10月号「感じる!日本画」の第9回「和紙」は必見!

「家庭画報 2012年 10月号/世界文化社」

「晩鴉」と「蛙と蜻蛉」を引用し、栖鳳の用いた和紙についての解説があります。是非ともご覧ください。

11月25日までの開催です。ずばりおすすめします。

「没後70年 竹内栖鳳 京都画壇の画家たち」 山種美術館@yamatanemuseum
会期:9月29日(土)~11月25日(日) 前期:9/29-10/28 後期:10/30-11/25
休館:月曜日(但し10/8は開館、翌火曜日は休館。)
時間:10:00~17:00(入館は16時半まで)
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

「ドビュッシー・ナイト」が展覧会WEBサイトに紹介されました

先月、荻窪のカフェ「6次元」にて行われた「ドビュッシーナイト」。



「ドビュッシーナイト」 6次元(拙ブログ)

全2時間半の長丁場、ブリヂストン美術館の新畑泰秀学芸員と美術家のミヤケマイさんをお迎えし、ドビュッシー展とドビュッシーの音楽や人となり、また美術との関係について、色々ご議論いただきました。

また不肖私、はろるどが進行役。改めて至らない進行であったことをお詫び致すともに、ご参加下さった方に深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。


「ドビュッシーナイト」

さてドビュッシーナイト。ともかく展覧会レクチャーからドビュッシーの恋愛話までと、非常に幅広い内容を扱いましたが、そのごく一部がこの度、展覧会の公式サイトに掲載されました。

「ミヤケマイ×新畑泰秀×はろるどによるトークショー「ドビュッシーナイト」(於:6次元)の模様(一部)を紹介します。」(ドビュッシー展)

あくまでも妙録ですが、当日の雰囲気を掴んでいただけるのではないかと。

特にミヤケさんの「金色の魚」や、新畑さんの印象派と象徴派についてのご発言などは、展覧会をご覧いただく上でも大いにご参考いただけると思います。


ドビュッシー展会場内風景

さてドビュッシー展、入館者10万名を突破し、10月14日(日)の会期末も迫ってきました。

「ドビュッシー、音楽と美術展をもっと楽しんでいただくために。」(ブリヂストン美術館ブログ)

残る会期は全て開館。休館日はありません。私もあと一度は見納めといきたいところです。


ドビュッシー展会場内風景

美術の観点からドビュッシーの芸術の源泉を探る、言わば異色の展覧会「ドビュッシー、音楽と美術」。改めてお見逃しなきようおすすめします。

「ドビュッシー、音楽と美術―印象派と象徴派のあいだで」 ブリヂストン美術館
会期:7月14日(土)~10月14日(日)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日(ただし7/16 、9/17、10/8は開館)
料金:一般1500円、シニア(65歳以上)1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
 *団体(15名以上)は各200円引き。
住所:中央区京橋1-10-1
交通 :JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。

注)ドビュッシー展会場写真は特別内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「エルネスト・ネト展」 エスパス ルイ・ヴィトン東京

エスパス ルイ・ヴィトン東京
「エルネスト・ネト Madness is part of Life(狂気は生の一部)」
2012/9/29-2013/1/6



エスパス ルイ・ヴィトン東京で開催中の「エルネスト・ネト Madness is part of Life(狂気は生の一部)」へ行って来ました

今さら説明するまでもなく人気のブラジル生まれの現代アーティスト、エルネスト・ネト(1964~リオデジャネイロ)。

最近では「ネオ・トロピカリア」展で都現美のアトリウムを大胆に用いたインスタレーションに驚いた方も多いかもしれません。

それこそ空間を一変させるネト、ここエスパス・ルイ・ヴィトン東京でもまた大いに楽しませてくれます。



ガラス張りのキューブで一際目立つのが「われわれは生という体の一部」、まさにハンモック状にロープで宙に吊られたウォークイン型の作品です。



そのとぐろを巻くかのように連なり、また浮遊する姿は龍のようでもありますが、形を辿れば明らかなように人体、とりわけ子宮と精子という性のテーマを扱っています。



ともかくは早速中へ。靴を脱いで一歩を踏み入れればそこはプラスチックボールの敷き詰められた内側の空間、通路は揺れ、また足元は沈み、そう簡単に前には進めません。

ロープに捕まりつつ、足を進めると行き着いた先はやや広い空間、ようは子宮です。そこでは寝っ転がったりしながら、どこかゆらりとふわついた浮遊感覚を味わうことが出来ます。

人体を象った言わば有機的な空間へさらに自身の体を介在していく様はまさに身体的体験。それこそ胎児が母体にいる時はこのような感じではないかと想像させられるほどでした。



またもう一つ印象的なのは直立する「トルスマクロボールト」、こちらも身体性に着目した作品ですが、その姿はスカイツリーならぬ塔のよう。うねりながら横へ広がる「われわれは生という体の一部」と対をなしていました。

さてネトと言えば触知性に加えスパイスに由来する嗅覚も重要なところ。



しかしながら今回は匂いがありません。これは当初はスパイスを用いる予定だったものの、この空間を見たネトが合わないと判断し、結果的に匂いのないボールを使ったとのことでした。



展示プラン、またネトのインタビュー言葉を記載したカタログも充実。今回も大変ありがたいことに無料でいただけました。



いつまでも座って、横になっていたくなるようなネトならではの空間。ハンモックの中にいるとしばらく時間を忘れました。

ロングランの展覧会です。2013年1月6日まで開催されています。

「エルネスト・ネト Madness is part of Life(狂気は生の一部)」 エスパス ルイ・ヴィトン東京
会期:2012年9月29日(土)~2013年1月6日(日)
休廊:不定休
時間:12:00~20:00
住所:渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7階
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A1出口より徒歩約3分。JR線原宿駅表参道口より徒歩約10分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス」展が始まります!

ルオーと言えば定評のあるパナソニック汐留ミュージアム。



同館ではフランスのルオー財団とも密接に連携し、主に年に二度ほどルオーの展覧会を行っています。

そして明日、6日(土)から始まる「ルオー アイ・ラブ・サーカス展」のキーワードはずばりサーカス。実はルオー、幼少の頃からサーカスが大好き。終生、サーカスの道化師や曲芸師などを描き続けました。

と言うわけで展示の内容については別記事に廻すとして、まずは本日参加してきた報道内覧会から会場の雰囲気だけでも。


展示室風景

出品は日本初公開20点を含む計90点。国内の美術館の他、パリのルオー財団はもとより、ポンピドゥーからの名品もやって来ています。


ジョルジュ・ルオー「傷ついた道化師」1929-1939 油彩、紙(カンヴァスで裏打) 個人蔵 他

またルオー作として最大級の大きさを誇るタペストリーの原画も登場。こちらが三点揃うのは日本で初めてだそうです。


展示室風景

そしてこの会場の作り込み!サーカスの楽屋、そしてキャバレーをイメージしたセットは臨場感抜群でした。


展示室風景

また今回はルオー作品だけでなく、当時のサーカスにまつわる資料も数多く紹介されているのもポイント。19世紀末のパリのサーカス、キャバレー文化についての展示も盛りだくさん。こちらはほぼ日本初公開の資料ばかりでした。

さて最後は再告知を。



以前にもお知らせした「ルオー アイ・ラブ・サーカス展のブログ告知キャンペーン」、9月末で一度締め切りとなりましたが、好評により追加募集が始まりました。

「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス」展、ブログ告知キャンペーン!

今回は抽選ではなく先着順で計20名!前回同様、告知記事をブログへアップすると本展のチケットがペアでいただけます。

「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス PR企画 お申込フォーム」

掲載期限は10月8日の月曜日。これからルオー展へ行こうと思われているブロガーさんはチャンス!是非参加してみてください。


ジャン=イヴ・ルオー氏(ルオー財団理事長でジョルジュ・ルオーのお孫さん。)

「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス」展は10月6日(土)から始まります。

*展示の内容についてはまた別記事にアップします。(内覧時に学芸員さんのレクチャーがありました。そちらをふまえてまとめる予定です。)

「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス展」 パナソニック汐留ミュージアム
会期:10月6日(土)~12月16日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~18:00
料金:一般800円、大学生600円、中・高校生200円、小学生以下無料。
 *65歳以上700円、20名以上の団体は各100円引。
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「モニターとコントローラーの向こう側へ 美術とテレビゲーム」 ニュートロン東京

ニュートロン東京
「モニターとコントローラーの向こう側へ 美術とテレビゲーム」
9/26-10/14



ニュートロン東京で開催中の「モニターとコントローラーの向こう側へ 美術とテレビゲーム」へ行って来ました。

ずばり私自身もファミコン世代、子どもの頃はドラクエやマリオにハマりましたが、そうしたゲームを美術の観点から考察しようとする展覧会が、青山のニュートロン東京で行われています。

それが「モニターとコントローラーの向こう側へ 美術とテレビゲーム」展。

出品作家は以下の4名でした。

大竹竜太
設楽陸
林勇気
米子匡司


さて今回のお目当ては一にも二にも林勇気。関西を拠点に活動する映像作家です。本展の全体のプランニングも行いました。



まずは一階スペースから。暗がりの空間にはモニターが三点、お馴染みのアニメーション作品が紹介されていますが、ともかく目に付くのが床へ置かれたプロジェクター。一体何が映されているのかと追っかけて見ました。



すると壁面には小さな人影が現れ、一生懸命に同じく小さな家を押しているではありませんか。


林勇気「Overlap」(部分)2012年 HD video

林の作品は現実と非現実をこの小人で繋ぎ、どこか夢幻的な世界を作り上げることでも魅力。それを壁面という展示空間そのもので楽しむことが出来ました。

さて二階へあがってみましょう。

ここでは設楽陸のペインティングに注目です。


設楽陸「Mainland decisive battle」2008年 アクリル・キャンバス 他

鮮やかな色遣いで表された不思議な風景、シュールとも言えるかもしれませんが、彼は子どもの頃、自宅でテレビゲームが禁止され、友人の家へ行ってはプレーしている画面をスケッチしたりしていたそうです。



またゲームの独特の世界観を、同じく彼の興味の対象だった歴史物語と合わせて無数に記したノートも。

かつては否定的な文脈でも捉えられたテレビゲームですが、それをきっかけにして生み出される新たなストーリー。その創造性には感心させられました。

3階では林勇気の作品が個展形式で紹介されています。


林勇気「happytimes」2012年 HD video

ここで面白いのが「happytimes」、何らや家に動物、また灯台に食べ物、また葉っぱなどがそれこそアイコン状に次々と映し出されてきます。

そしてそれぞれのアイコンは時に動いていますが、何とこれらはいずれもネットで「幸せ」という言葉で画像検索をし、ピックアップしてきた画像であるとのこと。

Yuki Hayashi video works


どういった文脈で幸せに繋がるのかは明らかではありませんが、幸せとはまさに個人的なもの、そして身近なものにも多数潜んでいるということを気づかさせるような作品でもありました。

さて機械仕掛けのインスタレーションを手がける米子匡司も見逃せません。


米子匡司「木を揺らす」2012年 インスタレーション

自販機や空き缶に生命が吹き込まれます。その姿はまさにコミカル。決して派手ではありませんが、その意外性のある動きを見ているとしばし時間を忘れてしまいました。

「有限会社ニュートロンよりギャラリー業務年内終了のお知らせ」@ニュートロン

なおニュートロンのギャラリースペースは本年末でクローズします。特徴的な三層のフロアはもとより、関西在住の作家を積極的に取り上げた展示が興味深かっただけに、率直なところ残念でなりません。

[今後の展示スケジュール]
「みんなからのなか:大槻香奈」 10月17日(水)~11月4日(日)
「三尾あすか、三尾あづち二人展」 11月7日(水)~12月2日(日)
「イケヤン☆2012 オーラス展」 12月5日(水)~12月30日(木)

10月14日までの開催です。

「モニターとコントローラーの向こう側へ 美術とテレビゲーム」 ニュートロン東京@neutron_tokyo
会期:9月26日 (水) ~ 10月14日 (日)
休館:10月1日、8日。
時間:10:00~19:00
住所:港区南青山2-17-14
交通:東京メトロ銀座線外苑前駅より徒歩約8分。東京メトロ銀座線・半蔵門線、都営大江戸線青山一丁目駅より徒歩約15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

10月の展覧会・ギャラリーetc

すっかり秋めいてきました。今月に見たい展示をリストアップしてみました。

展覧会

・「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」 千葉市美術館(~10/21)
・「お伽草子展」 サントリー美術館(~11/4)
・「ジェームズ・アンソール展」 損保ジャパン東郷青児美術館(~11/11)
・「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」 府中市美術館(~11/11)
 #展覧会講座「デルヴォー前夜 ベルギー象徴主義絵画」 日時:10/21(日) 14:00~ 講師:井出洋一郎(同館館長) 講座室にて、予約不要。
・「対話する時間 コレクションによる現代美術展」 世田谷美術館(~11/11)
・「日本の70年代 1968-1982」 埼玉県立近代美術館(~11/11)
 #公開インタビュー「日本の1970年代文化論」 日時:10/5(金) 15:00~ 解説:建畠晢(同館館長)、前山裕司(学芸員) 先着100名、無料。
・「新装開館記念名品展 時代の美 奈良・平安編」 五島美術館(10/20~11/18)
・「琉球の紅型」 日本民藝館(~11/24)
・「さわひらき Whirl」 神奈川県民ホールギャラリー(10/23~11/24)
 #アーティストトーク「さわひらきによるトーク」 日時:10/27(土) 14:00~
・「没後70年 竹内栖鳳」 山種美術館(~11/25)
 #前期:9/29~10/28、後期:10 /30~11/25
 #講演会「教科書に載らない実力派・竹内栖鳳について」 講師:山下裕二(同館顧問) 10/13(土) 14:00~ 要事前申込
・「大正・昭和のグラフィックデザイン 小村雪岱」 ニューオータニ美術館(10/6~11/25)
・「月岡芳年」 太田記念美術館(10/2~11/25)
 #前期:10/2~10/28、後期:11/1~11/25
・「出雲 聖地の至宝」 東京国立博物館(10/10~11/25)
・「維新の洋画家:川村清雄」 江戸東京博物館(10/8~12/2)
・「巨匠たちの英国水彩画展」 Bunkamuraザ・ミュージアム(10/20~12/9)
・「日印国交樹立60周年 インドへの道 美術が繋いだ日本と印度」 大倉集古館(10/6~12/16)
・「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス」 パナソニック汐留ミュージアム(10/6~12/16)
・「もうひとつの川村清雄展」 目黒区美術館(10/20~12/16)
・「琳派芸術2」 出光美術館(10/27~12/16)
・「須田悦弘展」 千葉市美術館(10/30~12/16)
・「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」 国立新美術館(10/3~12/23)
・「中国 王朝の至宝」 東京国立博物館(10/10~12/24)
・「メトロポリタン美術館展」 東京都美術館(10/6~2013/1/4)
・「シャルダン展」 三菱一号館美術館(~2013/1/6)
・「中西夏之展」 DIC川村記念美術館(10/13~2013/1/14)
・「美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年」 東京国立近代美術館(10/16~2013/1/14)
 #研究員によるキュレーター・トークシリーズあり。
・「アートと音楽/MOTアニュアル2012」 東京都現代美術館(10/27~2013/2/3)
・「始発電車を待ちながら 東京駅と鉄道をめぐる現代アート 9つの物語」 東京ステーションギャラリー(~2013/2/24)

ギャラリー

・「モニターとコントローラーの向こう側へ - 美術とテレビゲーム -」 ニュートロン東京(~10/14)
・「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.5 小西紀行」 ギャラリーαM(~10/20)
・「内海聖史 方円の器」 アートフロントギャラリー(10/5~10/21)
・「小倉湧 マッカーサーの子供たち 八月革命」 アンシールコンテンポラリー(10/5~10/27)
・「f/f - f/r」 island MEDIUM(10/10~10/28)
・「武田陽介 キャンセル」 3331 Gallery(~11/4)
・「ignore your perspective 15 ノヴァーリス 青い花」 児玉画廊東京(10/6~11/17)
・「佐藤イチダイ個展」 アルマスギャラリー(10/6~11/17)
・「渕沢照晃 無限構築」 ラディウムーレントゲンヴェルケ(10/5~11/25)
・「関根直子 私の頭の中、あなたの頭の中」 MA2ギャラリー(10/13~11/11)
・「宮島達男 LIFE I-model」 SCAI(10/12~11/17)
・「内藤礼 地上はどんなところだったか」 ギャラリー小柳(10/13~11/22)
・「内藤礼 地上はどんなところだったか」@空蓮房(10/17~12/7)
・「ブラジル現代写真展」 資生堂ギャラリー(10/27~12/23)

芸術の秋たけなわということで、今月も様々な展示が目白押しです。



もちろん都美館のメトロポリタンに国立新美のリヒテンシュタインなど、まさしく豪華絢爛、大いに集客しそうな大型展にも要注目ですが、あえて私が推したいのはコンテンポラリー。



というわけでまずは大好きなさわひらきさんと内藤礼さんを挙げてみたいと思います。

「内藤礼 地上はどんなところだったか」@ギャラリー小柳(10/13~11/22)
「さわひらき Whirl」@神奈川県民ホールギャラリー(10/23~11/24)


また内藤さんは蔵前の完全予約制ギャラリーでも同タイトルの個展を開催。

「内藤礼 地上はどんなところだったか」@空蓮房(10/17~12/7)



それに代官山では内海さんの個展も。また川村での中西夏之展をはじめ、月末から始まる千葉市美の須田さんの展示、さらには都現美のアニュアルなども続きます。

「内海聖史 方円の器」@アートフロントギャラリー(10/5~10/21)
「須田悦弘展」@千葉市美術館(10/30~12/16)
「中西夏之展」@DIC川村記念美術館(10/13~2013/1/14)
「MOTアニュアル2012」@東京都現代美術館(10/27~2013/2/3)


ここはしっかり追いかけておきたいところです。

さて最後は改めて告知を。



「維新の洋画家 川村清雄」展の特別内覧会へご招待します。

【川村清雄展 記念式典・特別鑑賞会・レセプション特別ご招待&図録プレゼント】
日時:2012年10月9日(火)16:00~18:00(受付開始15:30より)
会場:江戸東京博物館(東京都墨田区横網1-4-1)
タイムスケジュール:15:30~    受付開始
          16:00~16:30 記念式典・竹内誠館長ご挨拶(1階ホール)
          16:30~18:00 特別鑑賞会(1階展示室)
          16:45~18:00 レセプション(1階会議室)
定員:先着100名
記念品:本展図録(当日来場者に限り、招待状と引き換え。)
参加資格:ブログ、Facebookのアカウントをお持ちの方で展覧会を自身のブログで紹介出来る方。(Facebookの場合は公開記事として掲載が可能な方。)

対象はブロガーさん、もしくはFacebookアカウントをお持ちの方です。

「『維新の洋画家 川村清雄』鑑賞会 ご招待&図録プレゼント企画」申込フォーム

平日夕方のスケジュールではありますが、レセプションにもご参加いただける上、図録もプレゼントされるというまたとない機会!是非ご参加下さい。(締切は10月4日の午前9時までです。)

それでは今月も宜しくお願いします。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

「与えられた形象 辰野登恵子/柴田敏雄」 国立新美術館

国立新美術館
「与えられた形象 辰野登恵子/柴田敏雄」
8/8-10/22



国立新美術館で開催中の「与えられた形象 辰野登恵子/柴田敏雄」へ行ってきました。

同館でシリーズ化した現代の写真家と画家による二人展。

今回は抽象画家の辰野登恵子(1949~)と写真家の柴田敏雄(1950~)。ともに東京芸術大学油画科の同級生という「意外な接点」(チラシより引用)を持っています。

展覧会ではそうした二人の今に至る制作を学生時代、1970年代にまで遡って紹介。出品は辰野106点、柴田181点の計約200点近くと充実。質量ともに見応えがありました。

さてテーマは「与えられた形象」ということで、ともかくは二人の表現における何らかの「かたち」に注目すると面白いかもしれません。


辰野登恵子「UNTITLED 96-3」1996年 油彩・カンヴァス 横浜美術館

冒頭、辰野の90年代の抽象画と、柴田の近作のcolorsの二点が並んでいますが、辰野の絵画上のモチーフはもちろん、柴田の風景を抽象平面に還元したようなイメージも、ともに「かたち」として強く浮き上がって来ることが分かるのではないでしょうか。


柴田敏雄「埼玉県飯能市」2006年 Type-Cプリント

実は本展、両者の作品を全く別々に紹介するのではなく、時に交互に、またない交ぜにして展示していますが、差異と反復、ひたすらに生み出される「かたち」は、思いの外に親和性がありました。

さて辰野も柴田もともに80年代の作品から紹介(初期作は途中で展示。)されていますが、それぞれの表現の変遷も興味深いものがあります。


辰野登恵子「WORK 84-P-1」1984年 油彩・カンヴァス 東京国立近代美術館

辰野の80年代の原初はいわゆる花模様、画面上でカーブを描く線がそよぎ、装飾的で流麗なイメージを作り上げました。

一方、柴田の80年代は自然の中に介在する人工物を写したモノクロのシリーズです。

ダムや堤防などが幾何学面で切り取られ、本来的に自然を破壊しているはずのそれらが、意外なほどに美しい姿をとっていることを気がつきます。


柴田敏雄「グランドクーリー・ダム、ワシントン州ダグラス郡」1996年 ゼラチン・シルバー・プリント シカゴ現代美術館

それにしても柴田の切り取る水の流れの美しいこと。ダムから落ちる水の筋は白い糸が絡み合うかのようでもあり、その飛沫は黒の面に白い絵具を溶いて垂らしていくようなイメージすらたたえています。


柴田敏雄「群馬県北群馬郡小野上村」1994年 ゼラチン・シルバー・プリント 個人蔵

絵画と写真、確かに全く異なった表現ではありますが、どちらかといえば柴田の写真は構図はもちろん、風景が意外なほどに物質感をもって迫ってくるという点おいて、より絵画的とも言えるのかもしれません。

さて辰野は90年代に入るとモチーフがより有機的に展開していきます。


辰野登恵子「UNTITLED 90-14」1990年 アクリリック・カンヴァス 東京都現代美術館

特徴的な四角や円などの素材はより自由に動き、2000年代に入るとさらに画面は交錯、さながら三次元的な奥行きをもって広がっていきます。

柴田に関しては近作においてカラー写真が登場するものの、風景に対する視点、スタンスはそう変わっていないのかもしれません。

また彼の「かたち」に対する意識を顕著に表す作品としては、やはり「三角形」のシリーズが挙げられるのではないでしょうか。


柴田敏雄「高知県土佐郡大川村」2007年 Type-Cプリント 東京都写真美術館

これは言うまでもなく柴田が風景における三角形のかたちに注目して捉えた作品ですが、会場ではそれを壁面へ三角形の形を作って並べるという力の入れよう。

柴田の風景写真からは常に何らかの「かたち」、しかもそれが何度も何度も繰り返されながら浮かんできますが、それを最も分かりやすく見ることの出来る展示だったと言えそうです。

またとても面白いのは辰野、柴田の珍しい初期作が出ているところです。

何と二人の若かりし自家像までが展示されています。それに油画出身だから当然かもしれませんが、当初は柴田も絵画を手がけていたとは知りませんでした。

図録が大きさ、重さともに超弩級です。図版はもとよりテキストも充実していましたが、気軽に持って帰れるサイズではないかもしれません。

「ランドスケープ 柴田敏雄 2008~2009/旅行読売出版社」

両者の作品をじっくりと見せつつ、それぞれを「かたち」で繋ぐ試み、期待以上でした。

10月22日まで開催されています。

「国立新美術館開館5周年 与えられた形象 辰野登恵子/柴田敏雄」 国立新美術館
会期:8月8日(水)~10月22日(月)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00 *金曜日は20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、 大学生500(300)円、高校生(18歳)未満無料。
 *( )内は団体料金。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
   次ページ »