◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「この問題を前進をし」って?

2012-11-21 18:49:37 | 気になる言葉、具体例
                             進んでいるのに進まない

 「木が地盤をしっかりしてくれて」と言ったのは一般の人ですが、これは、「翻弄する」と言うべきところで「翻弄させる」と言うのとは逆のケースで、「木が地盤をしっかりさせてくれて」と言わなければいけないわけです。「木によって地盤がしっかりする」「木が地盤をしっかりさせる」ですよね。
 「この問題を前進をし」と言ったのは野田総理ですが、正しくは「この問題を前進させ」です。「この問題が前進する」「この問題を前進させる」ですが、「前進をし」って何ですかね、「この問題」に取り組むのは一体だれなんですかねぇ、本当に前進させる気があるんですかねぇ、政治家って、なぜいつも余計な「を」を挟むんですかねぇ( ̄_ ̄)?
 例えば、「作品を完成させます」という言い方には皆さん異論はないと思います。「完成」は、自動詞・他動詞、両方の意味を持ちますが、「作品が完成する」「作品を完成させる」という言い方が一般的ですね。また、「解決する」のように、「○が」でも「○を」でも「~する」と言う言葉もあります。
 しかし、自動詞か他動詞、どちらかの意味しかないという場合は明確です。自動詞なら「○が~する」「○を~させる」で、他動詞なら「○を~する」です。商品が流通する、商品を流通させる、商品を販売する、若者が自立する、若者を自立させる、若者を支援する、船が進む、船を進ませる、船を進める、ちゃんと区別していますか?
 「報道ステーション」を見ていて、一般の人が「業界そのものを立ち直さなければならない」と言ったとき、テロップがそのまま「業界そのものを立ち直さなければならない」だったことがあります。また、「フェンスでへだたれている」というナレーションを聞いたこともあります。
 「業界そのものを」と言ったのですから「立て直さなければならない」と言わなければいけないわけですが、ちょっとぐらついた? 「業界そのものが」なら「立ち直らなければならない」です。「立て直す」でも「立ち直る」でもないって・・・? それをそのまま書いた入力作業者って・・・( ̄д ̄)!
 「へだたれている(隔たれている?)」も、「隔てる」でも「隔たる」でもないわけですが、これがナレーションなんですからね( ̄д ̄)! 他動詞は「隔てる」で、間を遮る、遠ざける、という意味ですから「フェンスで隔てる」、受身は「隔てられる」、「フェンスで隔てられている」ですね。ちなみに、自動詞「隔たる」なら「へだたって」で、差があるという意味になりますから「フェンスで」に続くのは不自然です。
 「地盤を」なら「しっかりさせて」と続く、「問題を」なら「前進させ」、「業界そのものを」なら「立て直す」、それが自然な流れであり、ディクテーションなら私はそう入力しますが、裏切られますねぇ。「フェンスで」なら「隔てられ」ですが、「隔てられている」と書けない人がニュース番組のナレーション原稿を書いています( ̄ ̄)。
コメント
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