◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「大宰府へ左遷させられてしまう」って?

2013-03-20 18:23:37 | 気になる言葉、具体例
                                身柄を拘束

 先日再放送された「ザ・今夜はヒストリー」を録画しておいて見たのですが、「菅原道真は、藤原時平に無実の罪を着せられ九州の大宰府へ左遷させられてしまう」というナレーションが聞こえ、たまたまちょっと前に「大宰府に左遷させられた菅原道真の」というセリフについて考えるということがあったものですから、ちゃんとしゃべれの神様降臨、ですかね~m(_ _)m。
 「無実の罪を着せられ」と言っているのに、次の「左遷」は「左遷させられて」なのですから不思議です。「着せる」→「着せられる」、「着させる」→「着させられる」、ふ~ん、なるほど、言いにくいですね。一方、「左遷させられる」は言いやすいですよ、だから「左遷」は「させられる」になりやすいのでしょう。え? そういう問題なのかって? そうですよ、多分ね(・_・)。
 「左遷させられる」については過去に幾つか例を挙げて書いていますし、セリフやナレーション以外でもたまに耳に入ってきます。ある映画監督は「左遷させ・・・じゃないかって」と言いましたよ。もちろんここは「左遷されるんじゃないかって」と言うべきところなのですが、「左遷させ」と言った後、「左遷される」と言い直すことができず、「・・・じゃないかって」とごまかしましたからね。やはり「させん」という音が「させ・・・」を誘うのでしょうか( ̄_ ̄)。
 「自宅軟禁の状態にさせられていました」と言ったのは池上彰。もちろん「されていました」ですよ。AがCを「自宅軟禁の状態にする」、Aの命令でBが実行した場合、AがBに「自宅軟禁の状態にさせる」、AによってBは「自宅軟禁の状態にさせられる」、これらはいずれも軟禁した側の言い方で、軟禁された側(C)については「自宅軟禁の状態にされていました」です。
 「される」と「させられる」を区別できないなんて不思議ですが、けっこうあるのですよ。そして、こんな複雑な言い方まで出てきました。タレントが言った「自由に選んでいるつもりだけど、実は、選ばさせられている」ですが、「~ていただく」症候群の影響も少しあるかもしれません。
 Aさんは自由に選んでいるつもりだけど、Bさんが巧妙にAさんを誘導し、Bさんがこれと決めたもの(C)をAさんに選ばせる、AさんはBさんに誘導されてCを選ぶ、結局Aさんは「選ばされている」もしくは「選ばせられている」わけですが、「選ばさせられている」はそのどちらでもないのです。
 「選ばされている」に「せら」が入ったのか、「選ばせられている」に「さ」が入ったのか。ディクテーションでしょっちゅう聞いた「座らさせていただきます」は「座らせていただきます」に余計な「さ」が入るわけで、タレントの多くは「~ていただく」症候群を発症しているうえに、「~せていただく」と言うところで「~さしていただく」と言う人も大勢いますから後者の可能性が高いでしょう。私は「選ばせられている」自体に抵抗を感じますけどね┐( ̄д ̄)г。
コメント
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