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松下よ、お前もか

2005-12-15 00:09:28 | 社会・経済
松下電器産業製の石油温風機による中毒事故の対応のまずさを聞いてわが耳を疑った。同社は中村社長率いる経営改革が市場から高い評価を受けている超優良会社で、実は私も株で少しばかり稼がせてもらった。ところが間違いを犯すのはやむを得ないが、絶対やってはいけない事故の隠蔽をやったというのだ。挙句の果てはお決まりのテレビカメラの前でトップが雁首そろえて頭を下げる事態になった。松下よ、お前もか。

事故の重大性を早期に認識し的確な対策を打てるかどうかは当該企業の危機管理の力量が問われる端的なケースである。危機管理の要諦は初動である。最初にボタンを掛け違うとズルズルと誤った方向に向かい多大な被害を与える一方で、長い間かけて築きあげた信頼を一夜にして失う。明らかに松下は初動を誤った。

三菱自動車が不良を組織的に隠蔽し信頼を失った結果、防げたはずの何人もの人が被害を受け死亡したのはまだ記憶に新しい。会社は信頼を失い存続の危機に立たされ、関係会社を含め社員全員路頭に迷うかの瀬戸際まで追い詰められた。他の企業全体に対する強烈なメッセージであり、少なくとも他山の石になったはずである。

三菱の場合、一部の不心得ではなく組織的な隠蔽で謂わばリンゴの芯まで腐っていた。教訓が生かされなかったのは、いくらなんでも三菱ほど酷くはないとタカを括ったのかもしれない。実のところ、今回の松下の不祥事はどうだったのか。報道では現場の情報がトップに伝わらず適切な手が打てなかったという。

効率経営で急速に業績回復し投資家から高い評価を得ていたのが背景にあると見られている。報道によると、その裏で効率化のための独立採算制による権限委譲が組織間の情報の流れを遅らせた、謂わば機能不全が露呈したものだという。重大な事故情報が24時間以内に社長に伝える仕組みが建前だけで機能しなかったというのだ。しかし、正常な判断をトップしか出来ない会社というのもおかしい。現場の状況が把握できないのは品質情報だけと言い切れるか。

私は、危機管理システムの見直しでは不十分と考える。経営陣は効率経営化による業績目標達成の圧力が結果的に現場の判断を曇らせたと考え真摯に見直しをすべきと考える。いくら仕組みを作ってもその仕組みが業績(利益)に直接繋がらないと、時間の経過と共に風化し建前になってしまう例を数多く見てきた。

現場の判断の誤りは彼らがどう評価されるかについて、会社から誤ったメッセージを受け取っていると考えて間違いない。しかし一方的に責められない事情がある。社長自らの新方針や号令を連呼しても、厳しい経営環境化で毎期の利益達成の為の業績評価をしていくうちに埋没し忘れられる。100点は難しい、再発防止策がどうなるか見守りたい。

遅ればせながら問題が表面化した後の迅速かつ徹底した対応は、三菱の場合に比べ松下経営陣の顧客重視の強い意志を感じ救いがある。つまりリンゴの芯は腐ってない。それでも傷ついた企業イメージを回復するには地道で長い努力をして代償を払って行かなければならないだろう。■


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