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二つの危機管理:松下と東証

2005-12-22 10:47:06 | 社会・経済
東京証券取引所と松下電器の事故は危機管理の重要性について改めて考えさせられた。

新たな標準を作った松下
松下の温風暖房機の事故については、先に述べたがその後の同社のとったアクションは先例のない徹底したもので、今後のPL(Product Liability製品責任)の果たし方に新たなスタンダードを作った。

1年で最も稼ぎ時の年末商戦の最中、テレビや新聞は松下電器のプラズマテレビの広告ではなく問題商品の回収の告知を繰り返し流している。しかし、同社の商品の売れ行きは落ちてないようだ。

人身事故を起こした同社に対する非難を短時間に沈静化させ、むしろその素早く徹底した対応によって事故の対応中にもかかわらず同社の信頼は高まったかにさえ思える。

一時的な経済的損失よりはるかに重要な松下ブランドに対する信頼を何とか持ちこたえた。社内で色々議論があったと思うが最も良い結論を出して素早く実行したと思う。

松下は事故のコストを払い信頼を繋ぎとめた。しかも今後はこれが業界標準となる、つまり松下と同じようにやって当たり前になると理解しなければならない。

トップの無知が露呈された東証
一方、東証のシステム問題はそれほど簡単ではない。その後の報道はトップのシステムに対する驚くほどの無知であった。証券取引所の重要な役割は当然のことながら株式取引の場の提供である。

商品は膨大な数の取引が「公正、透明で正しく処理されることが保障されたプロセス」であり、絶対的な信頼の上に成立している。ところが唯一の商品であるプロセスがIT化された瞬間にトップは思考停止し判断を誤った、というより何を判断しなければならないか分かっていなかった。

リンゴの芯は腐ってはいなかったがスカスカだったというわけだ。その後の報道によるとどうも役員全員がそんな状況だったらしい。事故原因が判明する前からシステム・サプライヤー責任を言及するという的外れの言い訳をし、システム・オンチ振りを発揮した。

80年代日本企業に徹底的に痛めつけられた米国企業は、日本企業を研究し物まねではなく経営にITを組み込み競争力を回復、90年代後半から一人勝ち状態になった。企業トップにはITが経営に組み込まれ一体化されたプロセスをよく理解した人材がおり、問題発生時の原因を的確に把握し対応できる。

東証が問題を直ぐ丸投げしたように、ITと聞いた瞬間に思考停止し対応を丸投げする日本の経営者はまだまだ多い。実際には既にIT連携した経営が不可分になっているにもかかわらずである。

結果は西室会長が当面社長兼任し若手の委員会を作って今後どうして行くか検討していくと表明した。裏返せば経営幹部にそういう人材がいないということだろう。

米国なら外部から如何に早く優れた専門家を引っ張ってきて、短期間に問題をフィックスするかというのが会長の評価になるはずだが、日本ではやむを得ないかも。しかし、松下並の速さで信頼の回復が求められている。■


コメント
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