かぶれの世界(新)

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周回遅れの読書録07夏

2007-09-05 17:36:10 | 本と雑誌

今回は是非とも読書をお勧めしたい程の本はない。振り返ると私の選書に偏りがあり、特別に強く読書を勧めるのは気がひける。強いて言えば吉本隆明氏の「私の「戦争論」」が面白いが、この本単独での読書はバランス上お勧めできない。

他に「マキャベリ語録」は物の見方を違った角度から見る頭の体操として、「節約国家のすすめ」と「人民元は世界の脅威か」、「何故韓国の銀行は蘇ったか」は3冊を揃えて読むと世界の中で日本を客観的に見つめなおすことが出来ると私は思う。

2.0+マキアヴェッリ語録 塩野七生 1988 新潮社 改めて読んでみると成る程そうだったかと思うことが多い。別に戦国時代の君主でなくとも会社勤めの中にも当てはまることがある。といっても馬鹿正直に実生活に持ち込んで適用すると大変なことになりそうだが。

1.5国家が溶けていく 川村政隆 1999 ブロンズ新社 ワールドカップにフランスが初優勝した翌年のフランス国内事情を書いたもの。当時多民族構成のチームが勝ったことで外国人排斥の機運が一時期落着いたように見えたが、移民問題やEUとの位置関係に悩む根深さは変わらないように思う。

2.0ユーゴ動乱 梅本浩志1999 社会評論社 ユーゴの崩壊をミロシェヴィッチの大セリビア主義と歴史に無知なNATOの介入に帰している。4000年前のギリシャローマから、オスマントルコ、ナチの侵入まで歴史と民族の織り成す複雑な事情とチトー時代を懐かしむ著者の感慨が出ている。個人的にはチトー時代は歴史の特異点であり、ユーゴ解体は時間の問題であったと思うが。

2.5私の「戦争論」 吉本隆明 1999 小林よしのり氏のベストセラー「戦争論」の反論としてインタビューをまとめたもの。吉本氏は最近発言力が目立つ若手の右翼と戦後民主主義の残滓の丁度真ん中あたりに位置するようだ。慰安婦謝罪、教科書問題など考え方はユニークで鋭い。グローバル経済、失われた10年等の経済問題の捉え方も的確。一読の価値あり。

1.5トップリーダーへの戦略と戦術 堀田佳男 2004 プレスプラン 米大統領選挙を20年の現場経験から書いた所謂メイキング物だが、私には殆ど新味の無い表面的な内容。2004年ハワード・ディーンの圧倒的なインターネット支持が崩壊していく様が昨日のように思い出される。

1.0小沢主義 小沢一郎 2006 集英社この本は何のために書いたのだろうか。13年ぶりの書き下ろしというが「日本改造計画」 の新鮮さとインパクトが感じられない、同じ本を読んでいる気がする。

(1.5)竹下派支配 朝日新聞政治部 1992 朝日新聞社 海部首相が退陣し宮沢内閣が成立するまでの経緯を竹下・金丸・小沢が裏でどう動いたか追跡したもの。有名な小沢一郎の首相候補面接の場面が出てくる。それが今政権を狙う民主党党首というのも皮肉だ。それにしても政治部というのは政局部と名前を変えたらどうだろうか。当時も今も変わらない悲しさがある。

2.0緒方貞子という生き方 黒田龍彦 2002 KKベストセラーズ 60歳を過ぎ引退する年で難民問題に取り組み世界で最も尊敬を受けている生ける伝説の人、緒方氏の礼賛書。困難な事態に直面しての葛藤とかの人間的な側面を劇的に描くのではなく、淡々と彼女の歩いた道を辿ったもので読み物としては凡庸な出来。若い頃の国際的経験があれほどの業績をあげさせたのか。

2.0為替がわかれば世界がわかる 榊原英資 2002 文芸春秋 専門用語はあっても平明で分り易い文章だが、新味はない。知人のソロスの引用が多い、理論を尊重しつつも現実を見よというがそれが既得権益を利することに気付いていない。官僚出身知識人の限界か。記者クラブのカルテル体質問題の指摘には同感する。

2.5-人民元は世界の脅威か 菊地悠二 2005 時事通信社 ドル・ユーロ・円のポイントを付いた歴史は榊原氏よりも客観的で参考になるが、人民元の未来については曖昧で説得力が無い。欧米中日の文化の違いが通貨の性格にも反映するといい、著者は主題の人民元より円の未来に警鐘を鳴らすのが隠されたテーマのように感じる。

1.0通貨外交 黒田東彦 2003 東洋経済 99年半ばから2003年初めまで著者が財務官を務めた時に公式な席で何を言ったか寄せ集めたもの。アジア危機、ITバブル破裂、9.11とその後の急回復など劇的な時代の通貨外交を担ったはずだが、端的に言うと全くつまらない。

(2.0+)なぜ韓国の銀行は蘇ったのか 朴太堅 2003 ダイヤモンド社 これを読むと余り知られていないが如何に韓国が思い切った手を打ってアジア危機を乗り切ったか多少とも理解できる。日本的な慣行を改めて如何に世界標準にするかが成功の鍵だったというのは読んでいて辛い。しかし、日本の銀行が長く低迷したのは事実であり、しっかりベンチマークして評価すべきであろう。

(2.0+)節約国家のすすめ 水谷研治 2001 東洋経済 平明な文章の中にも著者の憂国の重いが伝わってくる。著者は現状の財政赤字は今の生活を維持できない、思い切った発想の転換をし大胆な改革をして小さな政府にしないと未来はないという警鐘の書。

1.5+学力低下論争 市川伸一 2002 ちくま新書 論争のポイント、誰がどういう視点で何を主張しているか整理されており、問題点を大掴みで理解するのに役立つ。整理されたはずなのに何が著者の言いたいことか明確でない気がするのは何故か。

1.5-大人になった新人類 河北新報社学芸部 2004弥生書房 60年代に生まれ、高度成長時代に育ち、バブルの時代に成人し、何を考えているか分からないといわれた世代は、今、30代後半になり現実の生活にもまれている世代を追いかけたもの。サンプルの紹介に留まり、上澄みをつまみ食いした感じで全体像が見えてこない。つまり、金をかけて足で稼いでない本だ。

2.0-小説渋沢栄一 童門冬二 1999 経済界 豪農の家に生まれ徳川慶喜に出仕、パリの万博から帰国後新政府に仕官、下野するまで明治維新の前後で我が国の経済、特に商業の近代化にかかわった主人公の前半生が、著者特有の平明な文章で描かれている。何が史実で何がフィクションか良く分からないが、栄一が「項羽と劉邦」の劉邦だという性格付けは理解出来る。

(1.0)熟年マーケット 日下公人 2000 PHP研究所 こんな能天気で楽観的な老人観が私には向いている。著者の「日本の老人世代は世界一の金持ち、スーパー老人が老人の最期を看取るべき」という主張に共感するが、その後の具体例はとって付けた感じがする。

次回は時機に合ってはないかもしれないが、読書の秋に相応しいもっと奥行きの深い、読書自体が楽しくなるような知的な本を読み紹介したい。久しくそういう本は読んでないので。■

コメント (2)
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