かぶれの世界(新)

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サブプライム問題は次の段階に

2007-09-20 23:43:17 | 社会・経済

予想以上の金利引き下げ

米連銀は一昨日公開市場委員会(FOMC)で短期金利(FFレート)の誘導目標を0.5%引き下げ年4.75%とし、合わせて公定歩合も0.5%下げ年5.25%にした。又、米下院は同日連邦住宅局(FHA)による信用保証の拡大を柱とする低所得者のローン返済を支援する法案を賛成多数で可決した。

市場は当局の経済を安定化させる強い決意を感じ取った。これを好感して一昨日のNY株式市場ダウ平均は5年ぶりの上げ幅で前日比336ドル上昇、昨日も前日比76ドルと続伸、サブプライム問題に端を発した世界連鎖株安が起こる前の株価に回復した。

問題解決になったか

これでグローバル金融システムを揺るがしたサブプライム問題を収束させる見通しが立ったことになるのだろうか。今月初めに紹介した9月危機説は乗り切ることが出来るのであろうか。取り残された日本も回復の道を辿れるだろうか。結論から言うとそれほど甘くないというのが私の意見だ。

今回の連銀FFレート引き下げは、世界的金融システム不安の原因とメカニズムが明確に解明されないまま、対症療法的に投薬された栄養剤と精神安定剤の性格が強い。危機の発生源は明らかだが、それが何故金融危機にまで発展したのか。リスクが見えなくなる仕組みをもう一度復習してみる。

毒は如何にして全身に回ったか

それを日経NB onlineは以下のように説明している(意訳)。震源となったサブプライムローン債権は証券化されると、銀行や住宅金融会社など金融機関のバランスシートから外れる。次にその証券は他の証券化商品を組み合わせることによって、見かけリスクの低いCDO(合成債務担保証券)になり、投資ファンドや銀行傘下の投資会社に買われた。

さらに投資会社はそうしたCDOを担保にCP(コマーシャルペーパー)を発行して世界から資金を調達していた。ところがサブプライムローンの焦げつき率が高まったことでそれが不可能になった。これら投資会社に対してCPが発行できなくなった際の資金を保証していた銀行が欧州に多く、問題は欧州に波及し世界の金融システム危機が生じた。

債権の証券化、細分化を通じて、世界から米国に流入したカネが金融機関から再度世界の投資ファンド、さらに信用供与という形でまた世界の銀行に。ぐるりと回るうちに問題は拡散し、どこまで広がっているのか誰にも分からなくなった。CDOが全世界で約3兆ドル、CPは約1.6兆ドルとも言われる「疑心暗鬼の連鎖」の評価額だ。

処方箋を巡る批判(対症療法か、道徳教育か)

銀行間での資金のやり取り、つまり短期金融市場の機能が不全に陥った(お金が回らなくなった)のは、取引銀行がババ(サブプライムローン問題)を掴んでいるかもしれないという疑いを拭えず、この疑心暗鬼の連鎖が生んだ結果だ。となると、FFレート引き下げは正しい処方箋といえるか。

FFレートの引き下げと資金投入によって、誰が救済され、誰が救済されないか。誰の責任で誰を救済すべきか。サブプライム問題は、最初これが世界金融システム不安にまで波及するとは予想されなかった。今年の初め私も、金融技術がリスクをうまく分散させていると尤もらしく説明した。犯人は一人ではない。

サブプライム問題を世界に波及させたのは金融商品とグローバル金融システム全体の複合汚染であり、未だに何等の修正もなされていない。ファイナンシャルタイムスは大手金融機関といえども間違えば痛みを感じるべき、理解不可能な商品の市場を中央銀行が公金を使って救済すべきではないと主張している。聴いたことのある議論だ。日本の経験が役に立つかも知れない。

事態は深刻

事態は経済に倫理を求める状況ではなくなった、というのが私の印象だ。前回紹介したようにサブプライムの焦げ付きはまだ収束していない。8月のローン返済遅延は35%増加したと報じられている。サブプライムを組み込んだ証券を購入した金融機関、特に中小の金融機関、の資金ショートがこれからもかなり出て来る恐れが強い。

最悪ケースはこのままだと実体経済へ影響がでることだ。既に米国経済の7割を占める消費支出への影響が徐々に出始め、これがBRICs諸国の貿易と投資の両面から抑制要因になることは避けられないように見える。かなりの欧州の中小金融機関がババを掴んでいる噂もなくならない。

今は「倫理」より「生き死に」の問題

経済に倫理を求める前に中央銀行が市場に十分血液(資金)が流れるよう手を打ったのは妥当だと私は考える。手遅れは絶対に許されない。上記のFT論説でも中央銀行の目的はマクロ経済の安定と健全な金融システムを区別して明確に示すことであると主張しているのであり、危機レベルの認識が異なれば患者救済を優先させる手も矛盾はないはずだ。

つまり事態は罰を与えるよりマクロ経済の安定という視点で輸血と鎮痛剤を与え、体力回復した後で患部の外科手術をすべき状況にあると私は考える。外科手術は一言で言えば商品とプロセスの透明性を高めることだ。米大統領や議会は住宅オーナーの救済の議論ばかり聞こえてくるが、次のステップとして根本原因の解決にもリーダーシップを発揮して欲しい。

サブプライムの次は中国バブルか?

ところで世界がこれだけ大揺れに揺れているのに、実は日本を除く中国とその周辺国を中心としたアジアの証券市場は好調で史上最高値を記録している。既に中国と香港の総株価は日本を遥かに上回っている。

あっという間に追い越された。日本のバブル時代に米国の総株価や土地を上回ったと浮かれた時があったのを思い出す。これは別のバブルかも知れない。崩壊したら日本の家計へのインパクトは想像するだけで空恐ろしい。■

コメント
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