新政権発足後まだ1ヶ月余りで、評価するには早すぎるかもしれない。米国では新政権誕生後100日は批判を控える習慣があるという。しかし、新政策を矢継ぎ早に打ち出して行くのを見ると一言二言、言いたくてうずうずして来たので一言。先に結論を言うと様子見です。
高い支持率
直近の世論調査では鳩山政権の支持率は依然として非常に高い。鳩山首相の派手な外交デビュー、マニフェストを実現するため補正予算の無駄を見つける作業、官僚の天下り禁止や政策決定プロセスでの政治主導を発揮していることが連日報じられ国民に印象付けたと思う。
特に、前原国交相の打ち出した脱ダム・高速道路・羽田空港ハブ化など、従前から国家的課題としてあるべき姿なのに既得権益が優先されてきたテーマに、摩擦を恐れずズバッと切り込み新方針を打ち出した姿勢を評価している。
何れも我国の背骨を強化する重要な基本方針だが、票にならないので政治的優先順位が低められて来たもので、私も高く評価したい。昨年日本の一人当たりGDPがあのイタリアにも抜かれ、19位になった。日本はもう豊かではない、限られたお金を全国にはばら撒けないという認識が背景にあると思う。
市場は日本パッシング
一方、市場は極めて厳しい評価を下している。日本の株式市場は外人が買うかどうかで価格が上下する。海外の投資家から見た民主党政権の政策では、日本経済が回復しないという見方だ。確かに上記の「パフォーマンス」はニュースネタにはなるが、マクロ経済として短期・中長期で整合の取れた政策にはなっていない。
今日の日経平均大引けは66円安の続落、日本郵政の社長交代ニュースは鳩山政権の脱官僚姿勢に対する不信感が広がり、改革路線の後退が意識されて買い手控えたと報じられた。市場は正にリアルタイムの投資家世論調査だ。
公共事業の見直しなどは中期的には経済を効率化する。しかし、当座は子供手当て(2.7兆円)+高校無料化(0.5兆円)+ガソリン暫定税(2.5兆円)で約5.7兆円が家計に渡るが、一方来年度予算では政府部門支出が9.1兆円の削減されるとされており、その差約3.5兆円の内需が減る見込みだ。
司令塔は???
今までのところ民主党政権には司令塔がいない(日本経済新聞)様に見える。つまり首相及び国家戦略室の指導力が発揮されてない。モラトリアムや巨額の赤字国債などの報道を見た限りでは、突然任された経済運営の舵取りのカンがまだ働かないのかもしれない。だが、事態は待ったなしだ。
具体的な懸案事項に直面して、大臣の実力や覚悟の程も見えてきた。一円たりとも予算はまけられないと見得を切る大臣は、官僚を代弁した自民党政権時代の大臣を思い起こさせる。発言が連日メディアに取り上げられていたのに、突然貝になった大臣もいる。実力や姿勢が一様でないバラバラの内閣を引っ張る「司令塔の指導力」が今こそ必要な時ではないだろうか。
Too early to tell
多分、まだ時間はある。鳩山政権を判断するには早すぎる。鳩山首相の手法はアドバルーンを揚げて世論の反応を見、落とし所を探っているように見える。現在の最大の課題であるマニフェストの実現と予算規模(赤字国債)のバランスは、ある意味世論に決めさせようとしている。少なくともプロセスを透明化する姿勢が評価される。
だが、アドバルーンを揚げてフラフラし原則のない政治は困る。特に安全保障や改革姿勢だ。<personname></personname>
子供達に借金(赤字国債)して、「子供手当て」の財源にするという発想は私には理解できない。総選挙で1%も取ってない小党の政策で、安全保障や日本経済が左右される事態には憂慮する。ココを誤まると内閣支持率が急落する可能性がある。
賛成と反対の構図
各種メディアをチェックすると、ネット住民は民主党政策のうち「改革姿勢」の部分を高く評価し支持しているのが興味深い。彼らの反応は極めてストレートだ。脱ダムなどで方針変更の影響を受ける人達の反発には、弱者というより既得権益という見方で余り同情してないように見える。
私の実家がある大洲市では最近ダム推進派の市長が当選し、前原大臣のダム中止見直し反対が民意として強く訴えた。だが一方で、昨日のローカルテレビでは地元大学が市民の意識調査を行った結果、市長を支持したのは政策全般であり、ダム中止については6割が賛成という結果を報じていた。極めて象徴的な縮図、全国に同じ構図が点在する、という印象を受けた。■