欧州不安が引き金となって世界株式市場の時価総額が1ヶ月間で14%減少し、7兆ドル(630兆円)が吹き飛んだと、今朝の日本経済新聞は一面のトップニュースで伝えていた。日経平均は1万円の大台を割り、東証の時価総額は4月の直近ピークから40兆円目減りして300兆円割れ寸前まで縮小したという。
個人的なことだが私のささやかな金融資産は、グローバルマーケットの債券主体で一部株式を含む信託投資なので、欧州だけならそうでも無いが世界市場の変化は相当に反映する。今回の欧州不安のインパクトで約9%減少した。かなり強いと思われた石油など資源価格や新興国・資源国の通貨が軒並み下がっている。今回はいつもと違い金価格も下がり、リスクマネーの逃げ場は米国債と円になっているという新たな状況だ。
それにしても、欧州はギリシャ問題を欧州の中で始末するどころか世界を巻き込み、何故一度ならず二度三度と処理を誤り、世界中を不安に陥れたのだろうか。市場ならぬ政府の失敗だ。問題の根を断ち切れないのは、底流に欧州の金融政策と財政政策が連動しない構造問題がある。多額の融資をしている欧州銀行の信用不安とEU各国の対応の遅れが、ギリシャ一国問題を欧州の問題にしたと指摘されている。
不安の連鎖が米銀経由で世界へ
だが、その後も欧州の打つ手は市場の疑惑を晴らすには至らず、不安に駆られた世界のリスクマネーが株式や資源・新興国の投資先から引き上げられ、米国債など安全な資産への逃避が止まらなかった。低利のドルや円を借りて高利の資源・新興国マネーに投資していた所謂キャリー・マネーがまき戻され、結果的にドル高・円高が進んだ。
欧州は世界のGDPの30%、米国からEUへの輸出は全体の2割程度(日経BP5/13からの孫引き)で、堅調な経済回復途上にある米国にとって欧州経済のスローダウンが直ちに米国株式を暴落させるような事態にならないはずだった。だが、実は底で深く繋がっていた。
上記の記事によれば、米銀が保有する海外債券の約半分の1.2兆ドルが欧州であり、しかも全体の7.7%がPIIGSという。不安の連鎖がしっかり繋がっていたわけだ。となれば、ギリシャの問題は二階級特進して世界の問題になったのも極当然のことであった。ドイツ首相の空売り規制発言が欧州の事態悪化とみて世界の市場が暴落したのは正に不安の世界連鎖を証明した(ワシントンポスト紙5/24)。
先週金曜のNY証券市場は、ドイツ議会の欧州緊急支援資金の拠出法案を可決したのを受け、125ドル上昇して1万ドル割れを回避した。中国が欧州財政危機への影響を和らげる為金融引締めを遅らせる観測が出て、世界経済回復の停滞懸念が薄らぐ期待が報じられている(モーニングスター)。いずれにしろ、欧州のエラーは許す余裕度はもう無くなったという切迫感が以上の引用した記事から感じられる。久しぶりに明日のNY証券市場が大注目だ。今、ダウ平均は大きく下げた後少し戻し、50ドル安で始まっている。■