通風で外出を控えているうちに食料が無くなって来た。昼食に買い置きのペペロンチーニを食べた。あと残っているのは冷凍うどんとかインスタント・ラーメンばかり。やむを得ず痛い足を引きずりながら食料を仕入れ、家に帰りパソコンを開くとNYタイムズのニュース速報が届いていた。
早速開いてみると、NY州司法長官がゴールドマン・サックス(GS)、モルガン・スタンレー、UBS、シティなど世界の8主要銀行の捜査を開始したと言うものだった。お馴染みS&P、フィッチ、ムーディズの格付機関にインチキ情報を与え例のサブプライムを含む金融商品に高格付けを得たという。その役割を担ったのが銀行・格付機関間を転職する人達で、その例としてユカワ氏の名前が挙がっていた。もしかしたら、今後名前の知れた日本人(もしくは日系人)になるかもしれない。
先日、SEC(証券取引委員会)が、ヘッジファンドが値下がりを待って利益を売るという、顧客に不利な情報を隠して金融商品を売りつけたという不公正取引の疑いでGSを訴えた。それに引き続き司法省が同社を詐欺容疑で捜査中というニュースを聞いて、ショックが走った。
民事だけではなく、刑事罰にあたる詐欺容疑が世界最大の投資銀行にかかった。リーマンショックで息絶え絶えになった他のメガバンクを尻目に好業績を続け、名実ともに世界最大の投資銀行が、これまた世界最強の米政府のターゲットとなったのだから。いわば基本となる商習慣が詐欺の疑いをかけられたのだから、GSは反発し全面対決になる可能性もあると私は予測した。
その時点で私の見方は、GS訴追は見せしめを狙った一罰百戒的アプローチになる可能性が高いと見た。オバマ政権が推進する金融規制へのウォールストリートの協力を得るための取引材料に使われるだろうと。医療保険制度の改革が成立後、重要懸案事項に力を注ぐのは間違いないと予測したが、それは金融規制であり罰を与えるのが目的ではないだろうと。
その背景には、多額の収益を得てきた投資銀行が一転リーマンショックで危機に瀕したが、税金を投入して救済され早々に業績回復し高額の報酬得ている。その一方で、雇用の回復がなかなか進まず家を失い路頭に放り出された人達が沢山いる状況で、国民の批判が金融機関に向かっている。オバマ大統領がこのタイミングを十分利用しているのは間違いないと。
しかも、それは私の予測したような一罰百戒的なアプローチではなく、不正は一人残らず根こそぎ正すぞという強い姿勢ではないかと、今回のニュースを見て感じた。いずれにしても、銀行と格付機関に人材が行き来する「回転ドア」があるとか「格付裁定」とかいうふざけた慣行は、投資家に対して不誠実であると私も思う。日本の銀行や保険会社の機関投資家のプロの連中も他愛も無く騙された仕掛けが、今年中には明らかになるだろう。■