6月の日銀短観の景況感(DI)がリーマンショック以前に戻ったと発表され、国内経済が順調に回復しているはずなのに、3ヶ月前の楽観的な雰囲気は世界の株式市場から消し飛んでしまった。先週NY株式市場はリーマンショック直後以来の7日続落して9600ドル台に、11000円台まで戻した東証も一時9200円台を割った。この半年のゲインは全て失われた。
年初経済回復は占いどおり進み、市場は先行き楽観的だった。不良債権を抱える欧州各国政府の足並みの乱れとそれが対応の遅れにつながり、信用不安が表面化する恐れがあるとの私の予測は的中したかに思えた。
しかし、状況は予想以上に悪かった。世界経済における欧州のポジションや影響の程度と、新興国の成長及び米国の回復を総合すると、多少の影響は出るとしても欧州の問題としてやり過ごせると予測した。どうもその見方はかなり甘かったようだ。サブプライムの時、最初はローカルな問題と見くびったのと同じだ。
欧州財政・金融不安と対応の遅れが市場のすわりを不安定にしていたが、米国経済の減速と新興国経済の引き締めの二つの懸念が浮上し、楽観論が色あせてきた。特に雇用回復の遅れと住宅市場の停滞が米国経済減速を印象付けた。風景が変った。たった2‐3ヶ月で出口戦略を声高に語るシーンは見られなくなった。
年後半の見通しについて私の占いは、正直のところ不透明になったと感じる。「期待と現実の距離を埋めていく年」と位置付けた楽観論は、「政府が適切な手を打ち二番底を回避できる」という予測に基づいた。だが同時に予測した「財政赤字とドル安が世界経済の不安定要素になるという懸念」が現実のものとなり、状況はより複雑になってきた。
一つには、BRICsなど新興国の伸張は予想通りだが、世界経済の中でその相対規模は小さい。米国経済の停滞をクリアするほどの影響力がないことも明らかになってきた。二つ目に、欧州の足並みの乱れが拡大し、G20各国の財政と金融政策のスタンスが異なり市場を説得する明確な方向付けに失敗した。G20終了後世界市場は軒並み下落する皮肉な結果だ。
ということで、2Qは私の大胆占いほど楽観的ではないという警告メッセージが発せられた。とは言うものの、一挙に悲観的になる状況にはない。現在は景気刺激策と財政赤字の折り合いをどうつけるか複雑な連立方程式、それは正解のない方程式の近似解を求める状況にある。チャレンジは、近似解が魅力的である保証はない。国民が苦い薬をのめるか各国の力量が問われている。
実体経済については今回も楽観的なスタンスを取り続けたい。次の3Qは停滞気味になるが何とか持ちこたえ複雑な現状を脱し、最後の4Qで世界経済は回復の道を辿るように感じる。2Q市場はそれ迄の「楽観的な先取り」を調整した意味合いと捉えるか、下降相場の始まりと見るか正直私は分からない。企業の好業績と株安はPERを堅実にし、日本の個人投資家は積極的と報じられているが私は微妙だ。
その要因の一つが、菅政権の登場で参院選の性格が「市場と民意の熱き戦い」(7/1に投稿)に変化し、国内政治風景が大きく変る可能性を孕んでいると感じるからだ。参院選(民意)とその後の新たな政権の性格が市場からどういう評価を受けるか、日本の未来を決める重要なマイルストーンになると私は予想する。
個々の予測では、冒頭に述べたように世界経済の予測は半年経っても欧州の混迷も含めほぼ的中したと思う。だが、問題の「リスクが民から政府に移った構図」を描けなかった。一方で日本の政治は予測不能とも言うべき混迷、経済は輸出と景気刺激策のおかげで予測以上に回復した。
○1.追加対策で米二番底回避、成長率3%切る、歴史的過剰流動性と財政赤字残る(0.7)
○2.世界経済回復もEUは不良資産処理に苦戦、一方新興国絶好調で世界経済牽引(0.6)
◎3.中印経済は輸出回復し内需も順調に成長、成長率は夫々10%台と7%台に(0.7)
▽4.内閣支持率更に低下、予算成立後か参院選後政局に、連立崩壊するが鳩山続投(0.3)
△5.日本経済は輸出増で何とか成長率1%前後、雇用は構造的な停滞が続く(0.6)
▽6.日経平均は政策混乱と不信が広がるも、後半円安で輸出増、13000円に盛り返す(0.4)
△7.日本サッカー、健闘するもW杯予選ラウンド通過できず (0.7)
△8.日本人MLB:イチロー・松井とも年齢と健康問題で苦戦 (0.5)
日本サッカーの予想外の活躍は嬉しい驚きだった。テストマッチの4連敗で、「W杯予選リーグ善戦」という予測どころか1勝も出来ないと恐れた。だが大会直前の守備重視の現実的なシステム変更が幸運にも機能したようだ。だが、天邪鬼の私はせめて1年前にシステム変更し進化させればもっと勝てたろうと「素人考え」してしまう。
そうだとしても岡田監督の判断を賞賛したい。古今東西タイムリーに決断できなくて全てを危機に陥れたリーダーが我国の歴史を飾っている。歴史にならない小さな組織でも事情は同じだ。私みたいに。彼はギリギリだろうと何だろうと間に合った。その評価を誤ってはいけない。
一方、イチローは例年通りに活躍している。彼の場合それだけで物凄いことであり、私の予想を上回った。だが、残念なことに松井には予想通り年齢から来る衰えのようなものを感じる。多分彼を雇った球団もそう思っているだろう。彼にはチャンスやピンチに動じない人並み外れたハートの強さがある。後半彼の見せ場が来るはずだ。だが、1年を通した活躍を期待するのは無理だろう。
最後に直近に迫った参院選の予測をしてみたい。戦いの性格は「組織対無党派」と「民意対市場」を予測したが、投票率が高まれば従来の「世代間の戦い」と「都市対地方」の要素も出て来る。私の現時点での予想は全体の投票率は上がらず、キャスティングボードは団塊世代になる、彼らの理性が発揮され日本の未来を誤まらせないで欲しいと希望する。■