ものには潮時というものがある。凄く上手く行っていても、いつかはピークを迎えそれ以降は落ちて行くだけとなる。難しいのはピークに達した時が何時か誰もわからない、あの時がピークだったと後から分かるだけだ。リーダーは退き際を誤り、株価はまだ上昇すると思い買うと暴落する。
私の場合何が潮時かというと、この2ヶ月間パソコンの買い替えをするか否か悩んだことだ。2ヶ月前に田舎に来た時から、パソコンを買換えるべきかずっと考えてきた。買換えを考える理由は沢山あったが、どれも決定的とは思えなかったからだ。
私の利用しているパソコンはWindows-XP、でいずれも2003-4年頃に買った。新しいアプリやデータで重くなり徐々に性能低下し、ハードディスクを掃除し主記憶を増設して今まで凌いできた。だが、写真や動画のアプリが遅いのはまだしも、メールなどの基本機能が遅くなりイライラしだした。
3月頃からパソコン販売動向の異常を伝えるニュースを目にするようになった。インテルのCPUに不具合が見つかり春の新商品販売開始が遅れ、大震災が追い討ちをかけて販売不調が予測された為、在庫が残らないように大幅な価格低下が起こっているというものだ。
ネットなどで専門家は、この価格下落の時期はWindows-XPからWindows-7に乗り換える絶好の機会だと買換えを勧めていた。丁度その頃マイクロソフトがIE-9をリリースし、試してみようと思ったがXPはサービスの対象外になっていることが分かった。
これで一気に火が点いた、パソコンを買い換えよう。潮時だ、と。ニュースが伝えていたのはノートパソコンの値下がりで、価格が更新される毎土曜日に専門店を訪問すると確かに毎回安くなっていた。性能重視の私はデスクトップ狙いだが、棚にあるのはノートパソコンが多かった。
それではと、息子の助言を仰ぐと全国チェーンの専門店だといってもこちらの店はチョット高い。色々調べた結果、メーカーからのダイレクトメールのキャンペーン価格が最も安かった。21.5インチモニタ付でi3/i5CPU、MM4GB、HD500GBで5万円を切るという一昔前なら夢のような価格だ。
腹を決めてオーダーを出す前に急にパソコンがフリーズし始めた。経験でウィルスチェックがイタズラしている事は分かっていた。最初はフリーソフトのavast!を最新版に更新、その後修復しても何も改善しなかったので、思い切ってアンインストールした。
ゼロからもう一度同じソフトをインストールするとKingsoftなるものに包まれた新版に替わった。何とこれがWindows-XPマシンを生まれ変わらせた。一気に購入した頃の性能を取り戻してさくさく動くようになり、不安定だったアプリも安心して動かせるようになった。
気が付いたら買換えする理由を失った。一時期はすっかり買い換えモードに嵌ったが、正気に戻った気分だ。良く考えればIE-9で何が良くなるのか、私にとって必要かどうか良く理解しないで買換えの潮時だと思っていた。これを使いたいという所謂キラーアプリケーションはない。
最近のパソコンは新商品といってもCPUの周波数を上げ、メモリーを増やした程度だから、新商品を買わないと何かが出来ないという訳でもない。世界のパソコン市場の2/3は新興国向けになり、インテルやマイクロソフトと主要パソコンメーカーは新興国向け商品開発に力を注いでいる(日本経済新聞5/20)。我々はターゲットではない。
買い替えを止めたのはこの頃流行の自粛をした訳ではない。あえて言うなら幼い時から不要なものは買わないと躾けられた、生れつきで筋金入りの自粛だ。とは言うものの、パソコンの詳細仕様を比較し価格を調べている時は楽しかった。「買い物はする直前が一番楽しい、一旦買ったら後悔する」先人の言い伝えだ。じゃ買わなかったらどうか、それも何だか寂しい。■