かぶれの世界(新)

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やり得・逃げ得・ごね得

2012-08-09 23:22:53 | ニュース

今世界の金融界を揺るがすスキャンダルが進行中だ。デリバティブで巨大損失を出したJPモルガンでなく、内部取引の不祥事で信頼を失った野村証券のことでもない、それは今や金融立国となった英国ロンドンの金融市場を舞台に起こった。

過去数年にわたり世界中の普通の人の生活に悪影響を与える不正が秘密裏に行われていた。世界的な銀行バークレイズを始め有力行が、ライボー(LIBOR)といわれるロンドンの銀行間取引金利を自行に有利になるように操作していた。ライボーは全世界の金融取引の指標となる。

法律がない英国

驚いたのは英国にはこの世界中に影響を与える不正を取り締まる法律がないことだ。今回英国金融当局は金融行政の指針(プリンシプル)に反したとして70億円の課徴金を課したという。サッチャーが金融改革を断行した時、金融市場に自由を与えて活力が生まれるのを期待し世界金融のセンターになった。基本は参加者の良心を期待した性善説に基づく放任システムだった。

最近の金融機関が暴走して惹き起こし多大事件はロンドンを舞台にしているという(日本経済新聞8/5)。その背景に米国や日本は法律で明文化されたルールがあって、それを逃れてロンドンの金融市場が活況を呈したことがある。だが、ロンドン市場では英国流の緩やかな規制が結果的にモラルの低下を招いた。

英国はやり得・米国は逃げ得

最近の金融機関のモラルの低下は世界各国で報じられている。不正の最も大きな打撃は市場が信頼を失い機能しなくなることだが、個人や金融機関は巨額の不正利益を手にする為その誘惑から逃れられない。米国の場合は不正には厳罰が適用されるから犯行は「逃げ得」狙いとなる。だが、英国の場合は緩やかな規制下で「やり得」がまかり通っていたと推測する。

英国流の放任主義は「性善説」がベースになっているが、いまや英国は多民族国家となってグローバリゼーションの先端を走っている。昔の英国ではない。少なくとも金融の世界では米国化し更に先を走っている。米国並みの明文化したルールに基づく金融行政をするのが、最大の世界金融市場国の責任だと思う。

8日に英中銀総裁は抜本的な改革方針を示したと報じられた。英国政府も9月末までに別に改革案を纏めるという。住宅ローンやデリバティブなどあらゆる金融取引の基準になるライボーの不正を許してはならない。一国の都合でキチンとやれないなら退場してもらわねばならない。日米及び欧州諸国が連携して英国に強く圧力をかけるべきだと思う。

日本はごね得?

日本は法律で明文化された規制があるが、最近の内部取引事件に関る罰金額を米国のそれと比べると、罰則が非常に緩いように感じる。事件が表面化して嘘みたいに安い罰金を払う。それで済ますべきではないと、市場やマスコミの批判に晒され、トップが退任して落着する。

これでは運に左右され巧妙に逃げおおせた時に得られる報酬の大きさは魅力的だ。個人のモラルに頼るのは安易過ぎる。単純に損得を考えても不正の歯止めにならないし、市場の信任を得ることも出来ない。現在は状況によってはやり得になる制度だ。このような状況を語呂合わせでごね得といった訳だ。

話は違うが、日本にはやり得や逃げ得になりかねないシステムは多い。例えば最近注目されている「いじめ」では、かつては教育現場の隠蔽体質や少年法が加害者の逃げ得を助けた。性善説が働かない住みにくい世の中になったが、もう後戻りは出来ない。■

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