田舎暮らしを始めて1ヶ月になるが、今日がもっとも一人ぼっちで寂しく感じた日だ。お盆前に家内が少しだが顔を出し、同じ頃に義弟が大阪から戻って来た。長男夫婦が先週後半に久しぶりに孫を連れて田舎に来てくれた。彼等が昨日帰京したのを最後に、全員が夫々の予定を終えて東京・大阪の住処に戻った。一気に一人だけの生活に戻った、寂しさの崖から落ちた気分だ。
オモチャ類やベビーカーは全てしまったが、玄関に残された孫のビーチサンダルは私の靴の横に並べた。ピンク色の小さなビーチサンダルを見ると寂しさが募るが、かといって靴箱にしまう気にもなれない。90年代後半米国での一人暮らしの様子伺いに来てくれた当時高校生の娘が、日本に帰国したクリスマス翌朝たまらなく寂しかったのを思い出した。
米国にいた時は寂しさを紛らわす為、スーパーのレジとかフライトの予約とか電気代・クレジットカードの支払い等電話で処理をした。そんな時なるべく長く話せるよう馬鹿話をした。相手に危害を加えるわけではない、話し相手が欲しいだけだった、というのは伝わったと思う。事前に大体のプランを作って自然っぽい表現で相手の緊張を解いた。勿論下手くそな英語だが、慣れてくると結構話し相手になってくれた。身元確認時に自虐ネタで笑いを取る所から始めるのが何時もの手だった。
退職後一人暮しが増え、このやり方が日本の都会でも田舎でも通用することが分かって来た。日本ではお天気ネタが多い。買い物や散歩の時など誰にでも気軽に声を掛ける。親子連れの子供に声をかけ、それをきっかけにお母さんと話をする。子供を褒められて嫌な母親等いない、笑顔を返してくれるのが普通だ。難を言うと田舎の暑い夏の昼間だと、人と出会うのすら稀だ。
そんな田舎にも変人とも言って良い友人が一人いる。食事の好みに偏りがあるのだ。逢う度に変だと言ってやるのだが、選択が色々あるのに昼食はいつも同じ物をオーダーする。それに異常に甘いもの好きだ。先日、東京土産のかりんとうをあげて喜んでくれたのは良かったのだが、一晩で一袋全部食ったと後から聞き信じられなかった。それでも田舎で唯一の大事な友人だ。■