かぶれの世界(新)

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

日本経済が世界最悪の打撃を受けた訳(続)

2009-02-23 10:23:40 | 社会・経済

究極の状態に追い詰められた人は、その人の心の底に隠されていた本性が現れ、時に劇的な変化を遂げ人の心を打つ。一つにはそういう理由があって、小説やドラマに戦争や犯罪がテーマになる。第二次大戦時の日本国は間違いなく極限状態にあったが、国家運営だけでなく国民からメディアまで個々には立派な振る舞いもあったが、トータルとして惨めな判断しか出来なかった。

それでは、約60年後の今の日本は国として健全な判断を下せるだろうか。前回は日本経済が最も落ち込んだ理由として、誰にとっても目に付きやすい推定原因を議論した。後半は普段当たり前に思うか、或いは良いこととか強みとして認識されていることをテーマに議論してみたい。

推定原因2: 高コスト構造とグローバル裁定

小泉構造改革がもたらした輸出型経済と内需不足という要因が無いとは思わないが、私はこの指摘には権力闘争とか既得権益回復の狙いを秘めた、何か恣意的なものを感じる。もっと他に何か隠れた要因がないだろうか。根本原因をしっかり把握しないと、今後の対策を誤ることになる。

少し遡ると、日本経済の問題として「高コスト構造」が長年指摘されてきた。同じものが日本では値段が高い、所謂「一物二価」もしくは「内外格差」の時代である。卸・流通などの中間マージン、過剰サービス・品質を求める消費者、それらを支える各種規制など、日本経済の非効率な分野があり、海外と隔絶することにより生じる価格差が、既得権益となる一方で雇用を生む効果があった。

構造改革で効率化のため削ぎ取られた一部雇用や資本が輸出産業や新興国などに向い、周り回って日本に還元され残った非効率部分を“やさしく”支えていた。推定原因を裏返して言うことになるが、この非効率な競争力の無い領域が改善されないまま残されていたために陥った危機ともいえる。日本がグローバル世界から利益を得て成立する限り、極端な一物二価の裁定は避けることが出来ない必然の成り行きであった。世界同時不況はこの動きを一挙に加速させた。

消費嗜好の変化

これと関連する文脈の中で、日本消費者の過剰品質好みの傾向が徐々に世界の消費者好みに近づいて来たが。日本消費者の好みを反映した高品質高価格な商品企画が、景気悪化で痛撃を受け消費者の好みの変化を加速させた。既に携帯電話やパソコン、若者の車離れなどでは、自分にとって必要な機能だけを求める価値観の変化が明確になった。

私は、景気回復しても必要な機能を適切な価格で買うという合理的消費志向は変わらないように感じる。日本は既に豊かな国になっており、必要なものだけ買えば別に困ることも無い、無駄な出費はしない、それが本来の姿だとすれば一体内需回復とは何を指す事になるのか。私にはイマイチ明確でないし、専門家やメディアも内需回復とは言うがそれから先は思考停止状態だ。

推定原因3: 悲観大国日本

「100年に一度の危機」と殊更に言立て過ぎているように感じる。「戦後最大の危機」なら私には理解できるが。日本のメディアは「危機」とか「没落」という言葉が大好きで、他国に比べその種の言葉の出現頻度が圧倒的に多いことは何度も指摘され、このブログでも触れたことがある。何度も繰り返すが、私の心配はそれが全体像を見えなくしミスリードするからだ。

テレビを見ているとリーマンショック以前でも、毎日が非常状態だった気がする。しかし、テレビが100年に一度の危機と、検証することもなく無批判でお茶の間に向って連呼するのは、やり過ぎの様に感じる。もう少し冷静にデータを根拠にした言葉使いをすべきだと感じる。

年末の派遣村報道が、実はその80%がホームレスの人達だったという。又、その後求職案内があっても応募者が意外と少ない、派遣切り報道が問題の全体像を曖昧にし、ミスリードしなかったろうか。連日100年に一度の危機と連呼されれば、消費が萎んでも可笑しくはない。

正直言うと実は私も生活費を見直し、出来るだけ節約を心がけた。しかし、あれだけ百万人単位で失業が増えた米国に比べも、大きな日本の消費落ち込みは何か変だ、誰が将来不安にさせたか。私は異常に悲観的に過ぎる報道もかなり貢献したと思う。

又、派遣に対する性急な規制論が、最悪事態に展開する恐れがある。注意して経済欄を見れば、経済危機を機会に日本工場を整理縮小する一方で、海外に生産を移行する記事が散見される。1件1件の扱いは小さくとも、このトレンドが続けば数年後の雇用に巨大な影響を与える。

今回の派遣切り騒動で輸出産業の経営者の多くは、国内生産調整の下方硬直性リスクに懲りたはずだ。悪人扱いされてはかなわない。数年後のビジネス環境、消費と生産の場所、輸送等の風景がどうなっているか、転換点で経営者が何を考え、何が決断の後押しをしたか、注目したい。

推定原因4: 政治の失敗

最後に「市場の失敗」と並んで、「政治の失敗」に一言も触れないわけには行かない。政治が失敗しなくても今回の経済危機は避けられなかったと思う。基本的に当座はダメージ・ミニマムが火急の政策だが、景気回復に有効な手が打たれていない現状は余りに酷い。高コスト体質と並ぶ極めて日本的現象のように感じる。

基本的にはリーダーの問題であり、この時期に無能なリーダーを選んだ政治システムの問題と、それを許してきた国民が払うツケと不運、目に余るポピュリズム報道とそれに便乗する野党の組み合わせ、壮大な複合汚染とでもいえるだろうか。

以上、纏まりの無い長文で、かつ尻切れトンボになったが、これが、私が今思いついた世界に先駆けて日本が最も地獄に近いところにいる様々な要因だ。政治の失敗については別の機会にもっと論じたいと思うが、今はただただ失望しているだけ。■

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日本経済が世界最悪の打撃を... | トップ | 中川前大臣辞任報道考 »

コメントを投稿

社会・経済」カテゴリの最新記事