かぶれの世界(新)

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

汚染水問題:失敗の構図

2013-09-18 15:59:15 | ニュース

東電は間抜け?

東京オリンピック2020の決定は、福島第1原子力発電所の汚染水問題について、安倍首相が「状況はコントロールされている。私が保証する。」という演説で安心感を与えた効果が大きかったと評価された。一方で未だに放射能汚染で苦悩している福島の被災者の感情が逆なでされたと怒り、それを政治的な問題として取り上げる動きが報じられた。

どちらに立っても、報じられた内容では東京電力はきちんとした仕事が出来ない、何度も指摘されたのに都合の悪い事は隠蔽している、と思わずにはいられない。しかし、天邪鬼の私は例によって、誰もが「安心して」バッシングするいわば孤立無援の原発関係者について考えてみたい。キーワードは「安心して」非難できる、つまり「反撃される恐れがない」にあると私は思う。こういう時には誰も言わない、もしかしたら言えない背景があるはずと。

多くの東電社員が3.11後必死で事故に取り組んできたと思う。東電は日本を代表する優良会社だったし、沢山の優秀な社員が働いていたはずだ。なのに、何故こんなろくでもない穴だらけの仕事しか出来ないのだろうか。ベスト&ブライテストが必ずしも求められた結果を出す保証は無いが、報じられている通りだとすればやることなすこと全て間抜けに見える。何か原因があるはずだ。

間抜けの理由を推測する

というのが民間会社のサラリーマンだった私の素朴な疑問だ。彼らの立場に立って何でこんな惨めな結果しか出せないのだろうと考えてみた。単純に、成果は興味がない、失敗した時だけ報じる、という「東電憎し」要素もある。当初は1000年に一度の事態に圧倒され我を失い対応の不味さで最悪の原発のメルトダウンを惹き起こした。周到な準備がないと避けられなかったと思う。

問題はその後も適切な措置がとれなかったことだ。起こった事は起こったこととして、どこかで立て直して冷静に事態に対処することが出来たはずなのに、どうもそう感じない。事実上国有化され政府の管理下に入り、トップが交代した時が新規巻き直しの時ではなかっただろうか。他にもターニングポイントにする機会は何度かあったし、何度かやろうとしたのかもしれないと思う。

優秀なスタッフを揃えた東電が必死で取り組んでも何らの成果が出て来てないのは、東電に成果を出させないような強烈な圧力がかかり足を引っ張っている何かがあった、と経験上私は感じる。考えるにそれは我々「日本人そのもの」ではなかっただろうか。そう考える理由を説明する。

足を引っ張った要因

先ず最初に考えられるのは、放射能の安全基準を国際レベルよりはるかに高く設定し、東電が問題解決に当るハードルを高くしたことだ。東電は事故後水を循環させて炉を冷やす仕組みを作り、使った水をタンクに貯め巨大なタンク群に貯蔵してきた。その水の大半は除去装置を通し基準を下回り投棄することを検討したが、福島県や漁協から反発を受けた。東電は止む無く全ての汚染水を保管する羽目になりタンクの漏洩事故が起こった、問題の発端はここにある。

被災者である地元の自治体や漁協が反発すれば、国際基準よりはるかに厳しい基準の設定に追い込まれ、それがその後の除染作業に巨大な時間と費用をかけることになり、結果として復興が大幅に遅れて被災者の苦難が続き、それが政治問題化して当局や東電の幹部や作業責任者に大きな圧力となって萎縮させる。私は汚染水問題がこの悪循環にはまっていると想像する。更には、被災地の除染作業の遅れも全く同じ構図が働いていると推測する。

もう一つの要因として考えられるのは、東電の経営問題だ。事故当時責任者だった海江田氏が話したように、当時は原子炉の冷却と被災者への賠償が最優先だった。東電の破綻はダメだった。東電幹部も破綻回避が最重要で、銀行の融資を受ける為に汚染水処理の費用を表面化させないよう、経営上問題がないよう見せる為細心の注意を払っていた様子が伺える。

しかし、汚染水タンクを常識では考えられない弱い構造にしてまで節約したのは、今となっては素人の酷い判断ミスだった。東電は破綻寸前に追い込まれて正常な判断が出来なかったと思う。当時のテレ朝とかTBSは電気料金の値上げを非難し、新潟県知事は安全性より手続きを問題にして原発再稼動を阻止し、東電を追い詰めた。今、国民はそのツケを払っている。

失敗のツケを払う

他の電力会社はともかく、東電に対しては「金は心配するな、事故収束に全力を尽くせ」と支援すべきだった。だが、マスコミから政治屋に煽られ政府まで東電叩きに熱中した。東電バッシングはメディアにとっても政治家にとっても極めて安全なジェスチャー(自己宣伝)であった。その時にも冷静にデータに基づいて議論しようと立ち上がった識者もいたが、理性は負けた。

これが東電の立場に立ってみたら私はどう考えるか、の答えだ。最も重要な問題を「バカだ、ちょんだ」と言ってやらせ、それで良い仕事が出来るものか、長いサラリーマン人生でそんな例を私は見たことがない。東電失敗の原因は「日本人そのもの」と言ったのは、私も含めて自戒を込めて指摘したいからだ。■

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 田舎暮らし雑感13秋(1) | トップ | 激走しまなみ海道 »

コメントを投稿

ニュース」カテゴリの最新記事