菅 |
新内閣が今日正式に発足した。小鳩政権はもう持たないと予測したとたんの政変劇だった。週末に実施された世論調査は、内閣や党役員が決まる前なのに既に菅政権が60%前後という高い支持率を得たことが昨日報じられた。この民意の安易さにはいささか驚いた。
この政変では結局誰が勝ったのだろうか。単純に菅氏が勝ったとも言えないような気がする。ここで例によって真の勝者は誰か大胆に推測してみる。
何もしないうちからこんなに高い支持率を得たのは、菅氏が「小沢さんは静かにしていた方が良い」と言い、新政権の権力構造の方向性を明確にした為という。その方向性は鳩山前首相が退陣の理由として「普天間問題と政治と金」と名演説をぶった時から明確になっていた。とすれば、鳩山氏が「肉を斬らせて骨を斬り」、最後に勝ったともいえる。
名演説で言い残したように鳩山氏が問題を正確に認識しながら自ら「君子の豹変」が出来なかったのは、一国のリーダーとしては情けなかった。あらゆる階層での日本のリーダーに共通する問題だ。彼が追い詰められたのは参院選で惨敗する情勢判断が示されたからで、結局のところ報道を通じて迷走ぶりを知った国民の判断が退陣を強いたといえる。
小 |
沢氏の政治と金の問題が表面化し、普天間問題の迷走がこの数ヶ月は毎週末に世論調査が実施され、その度に支持率が急降下していった。テレビのニュース、特に朝昼間のニューバラエティ番組は、これをネタに面白おかしく伝えるのが恒例になっていた。何も無ければ、犯罪や芸能・風俗ネタしかやらない時間帯まで政治ネタが流れた。
この時間帯の大半のテレビ視聴者は家庭の主婦で、私のような引退後の老人が続くと思う。数ヶ月にわたり毎日のように手を変え品を変えて鳩山小沢叩きを見れば(しかも小鳩両氏は叩かれるネタを提供し続けた)、この世代層の支持率に影響が出ないはずがない。
鳩山内閣の支持率の低下が目立ったのは、数%の20代と10%余りの50-60代の女性達だったといわれている。詳細なデータはないが、支持率のV字回復は主に彼女達民主党支持者で、必ずしも無党派層が戻ってきたとは言い切れない。(実はそこに支持率回復の危うさもある。)
結 |
論は今回の政変の勝利者は彼女達の判断に多大な影響を与えたメディアというのが私の推測だ。メディアが立法・司法・行政の三権に継ぐ第四の権力といわれ、ベトナム戦争終結からニクソン大統領の退陣までの米国報道が果たした役割を、ハルバーシュタムは名著「メディアの権力」で生き生きと描いている。
それに比べると今回の日本メディアが果たした役割はどうだったのだろうか。相変わらず内向きの議論がばかりだった。だが、小鳩体制は出来るだけ早く退陣するのが我が国の為だと私は思っていたので、結論は正しい方向に働いたと思う。だが、メディアのアプローチとプロセスは稚拙だったというのが私の見方だ。今回は運が良かったと思う。
報道が基本スタンスとして時の政権を批判するのは正しいが、結果的に細部の揚げ足取りに終始し、視聴者や読者に本筋の議論をさせず政権の支持率調査をするのは、民意をミスリードする恐れがある。場合によっては民度を貶めることになる恐れがある。 どこかの番組で寿命が1年にも満たない政権が4代続いた一因にもなっていると、自己反省のような発言も聞かれたが、私にはアリバイ作りの発言で本気で見直す積りがあるようには感じなかった。自らが持っている力に気付いて謙虚に身を正そうと思ってくれたら、民度が上がり政治が良くなるように私は思うのだが。■