昨年12月20日に本題で記事を投稿し、「2018年は中国の覇権に近づき始めるピボットとなる年として記憶されると恐れる。」と予測した。本稿はの目的は、この予測通りに事態が進んでいるか状況をレビューするものだ。その後、本件に影響を与える重要な2つの出来事があった。(1)習近平主席が絶対的権力を手にしたことと、(2)トランプ米大統領が中国に貿易戦争を仕掛けたこと、である。
昨年と異なるのは今年に入って欧米先進国のメディアが、中国政府の強権化が新段階に入り世界への影響力の高まりへの警戒を相次いで指摘しだしたことだ。先の全人代で習近平主席が実質的に終身国家主席となる憲法改正がなされ、14億の国民を監視下に置き一切の反対を許さない強権体制が布かれた。
これによって中国をWTOなど国際機構に加盟させ、国民が豊かになればやがて民主主義が広まるという西欧の期待は全く外れてしまった。民主主義じゃなくとも経済的に大成功し世界第2位の経済大国になり、そう遠くない将来に米国を抜いて世界一の経済規模になると予測されるまでになった。現実に中国政府は振興政策「中国製造2025」で世界トップ企業を育てようとしている。米国は苛立っているとの見方がある。
一方で、習近平総書記は彼が望む限り国家主席に残れるよう憲法を改正し、ハイテックを駆使して国民の不満や逸脱行為を監視する監視国家を作った。まさに民主主義に逆行する動きである。そして今、アジア・アフリカから中南米まで世界の強権国家を支援し、中国の強権的な政治モデルを広めている。
深刻なのはハンガリーやポーランド等のポピュリズムが進む東欧諸国が、中国の巨額な支援を受け民主化が後退していることだ。このままでは民主主義を基本理念とするEUが分断されると不安が高まっている。そう言いながら一方で、経済的にはEUの盟主ドイツの自動車産業が中国に深入りして抜き差しできない状況になっている。東欧の存在で既にEUは中国に対する民主主義の砦として機能しにくくなり始めている。
その一方でトランプ大統領政権は民主主義を守るという価値観には興味が無い様だ。彼が興味があるのは取引に使える安全保障と経済だけだ。そのトランプ大統領が仕掛けた貿易戦争の本質は「米国の先進技術を中国に流れなくする」ことにあると私は考える。いわば「知財戦争」だ。そうであれば日欧が連携して共同戦線を張れば効果的なのだが、トランプ大統領には自国のことしか頭にないのが残念だ。
中国は冷静に状況判断をしている様に見える。米国との貿易戦争に備えて、我こそは世界自由貿易の保護者という姿勢を貫いている。ギクシャクしていた日印との外交関係をここに来て急に修復する動きを見せ、EUや日米とかインドとの関係を分断させようとする動きが透けて見える。見え見えの動きだが、どこも中国マネーの動きは無視できない。
それでは、表題の様に「中国の覇権は前進」しているだろうか。残念ながら私はそう思う。世界でポピュリズムと強権化は進み中国は上手く入り込んで影響力を行使している。それは民主主義の失敗ともいえる。トランプ大統領が対中貿易赤字を取り上げながら、知財問題を指摘したのは正しい。しかし、今のやり方では中国は乗り越えられる。日米欧が連携しない限り中国は何とか切り抜け、覇権は一歩前進すると予想する。■
昨年と異なるのは今年に入って欧米先進国のメディアが、中国政府の強権化が新段階に入り世界への影響力の高まりへの警戒を相次いで指摘しだしたことだ。先の全人代で習近平主席が実質的に終身国家主席となる憲法改正がなされ、14億の国民を監視下に置き一切の反対を許さない強権体制が布かれた。
これによって中国をWTOなど国際機構に加盟させ、国民が豊かになればやがて民主主義が広まるという西欧の期待は全く外れてしまった。民主主義じゃなくとも経済的に大成功し世界第2位の経済大国になり、そう遠くない将来に米国を抜いて世界一の経済規模になると予測されるまでになった。現実に中国政府は振興政策「中国製造2025」で世界トップ企業を育てようとしている。米国は苛立っているとの見方がある。
一方で、習近平総書記は彼が望む限り国家主席に残れるよう憲法を改正し、ハイテックを駆使して国民の不満や逸脱行為を監視する監視国家を作った。まさに民主主義に逆行する動きである。そして今、アジア・アフリカから中南米まで世界の強権国家を支援し、中国の強権的な政治モデルを広めている。
深刻なのはハンガリーやポーランド等のポピュリズムが進む東欧諸国が、中国の巨額な支援を受け民主化が後退していることだ。このままでは民主主義を基本理念とするEUが分断されると不安が高まっている。そう言いながら一方で、経済的にはEUの盟主ドイツの自動車産業が中国に深入りして抜き差しできない状況になっている。東欧の存在で既にEUは中国に対する民主主義の砦として機能しにくくなり始めている。
その一方でトランプ大統領政権は民主主義を守るという価値観には興味が無い様だ。彼が興味があるのは取引に使える安全保障と経済だけだ。そのトランプ大統領が仕掛けた貿易戦争の本質は「米国の先進技術を中国に流れなくする」ことにあると私は考える。いわば「知財戦争」だ。そうであれば日欧が連携して共同戦線を張れば効果的なのだが、トランプ大統領には自国のことしか頭にないのが残念だ。
中国は冷静に状況判断をしている様に見える。米国との貿易戦争に備えて、我こそは世界自由貿易の保護者という姿勢を貫いている。ギクシャクしていた日印との外交関係をここに来て急に修復する動きを見せ、EUや日米とかインドとの関係を分断させようとする動きが透けて見える。見え見えの動きだが、どこも中国マネーの動きは無視できない。
それでは、表題の様に「中国の覇権は前進」しているだろうか。残念ながら私はそう思う。世界でポピュリズムと強権化は進み中国は上手く入り込んで影響力を行使している。それは民主主義の失敗ともいえる。トランプ大統領が対中貿易赤字を取り上げながら、知財問題を指摘したのは正しい。しかし、今のやり方では中国は乗り越えられる。日米欧が連携しない限り中国は何とか切り抜け、覇権は一歩前進すると予想する。■