一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

将棋ペンクラブ関東交流会(2)

2024-06-27 22:24:28 | 将棋ペンクラブ

第2図で私は、△3三玉と逃げるつもりだった。だが、いったん△1三同歩と取り、▲同香成に△3三玉と逃げれば、香を1枚得できる。それで△1三同歩と指したのだが、ミスター中飛車氏に黙って▲2五桂と打たれ、愕然とした。
いままでさんざん受けてきたのに、また受けるのか……。そう思ったらバカバカしくなって、投了してしまった。
ところが、これを観戦していた五段氏が、「投了は早いでしょ」と言った。
どうもクリアな目で見ると、この局面は私が有利だったらしい。後手は▲4九金をいつでも取れる形で、△3九馬と飛び込む変化もあるので、相当楽しみがあるらしい。後手は3一に逃げられるのが大きいという。
いずれにしても、私に勝利の執念がなかったということだ。
指導対局に空きが出たので、入ろうと思う。ただ、加藤結李愛女流初段のこちら側で指している女流棋士が分からない。……あぁ……あれ? あれが堀彩乃女流初段か!? 堀女流初段といえば黒のスーツがトレードマークだったが、ずいぶん明るいお召し物だ。何があった!?
1,000円を払い、堀女流初段との指導対局に入る。改めて、白のブラウスに臙脂のスカートで、別人のようである。
「堀先生、女流初段昇段、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「(昇段が)遅いですよ」
この一言が余計なのである。いずれにしても、イメージチェンジした堀女流初段は、大いに好感が持てた。

初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀△6二銀▲2六歩△3二金▲4八銀△4二銀▲7八金△4四歩▲5六歩△4三銀▲6九玉△8五歩▲3六歩△7四歩▲2五歩△3三角(第1図)

私が入って、3面指しになった。左は湯川博士幹事で、どうも飛車落ちのようだ。湯川氏が将棋を指すのは珍しいが、何があったのだろう。局面は湯川氏が勝勢である。
右は阿部氏が指しているが、局面は芳しくない。
私は平手で、私は矢倉を志向した。矢倉はあまり好きではないが、食わず嫌いだったところもあり、この歳で改めて勉強である。
近年「相矢倉」は将棋界の死語になったから堀女流初段の作戦が注目されたが、雁木だった。昨今は意味不明の中住まいが流行っているが、それを思えば、雁木は大人しい作戦といえる。

第1図以下の指し手。▲3七銀△5四歩▲5八金△7三桂▲6六銀△6四歩▲2六銀△6五歩▲5七銀△4二角▲4六歩△8六歩▲同歩△同角▲8七歩△6四角(第2図)

このあたりが作戦の岐路だが、私は▲3七銀と棒銀に出た。藤井聡太竜王・名人がタイトル戦で、相手の雁木に棒銀で出ていた。よってこの作戦は合っていると思う。
堀女流初段が△7三桂と跳ねたところで、阿部氏の将棋が終わった。やはり堀女流初段の勝ちだったようで、堀女流初段は丁寧に要点を教えている。
私は▲6六銀と出たが、数手後△6五歩と突かれ、▲7七銀と引くようでは何をやっているか分からないので▲5七銀と引いたが、これは玉が薄くなってよくなかった。
堀女流初段は要所に角を据え、十分の形勢といえるだろう。私はこのあたり、まったく自信がなかった。

第2図以下の指し手。▲3七銀△3三桂▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2七飛△5二金▲9六歩△9四歩▲1六歩△8一飛▲2六銀△6三銀(第3図)

第2図で▲3五歩といきたいのはヤマヤマだが、私は▲3七銀と辛抱した。飛車のコビンが間接的に狙われているのを嫌ったのである。
とはいうものの、私は待つ手もなくなって、再び▲2六銀と出た。相変わらず何をやっているのか分からないが、1局目の轍は踏まぬよう、暴発しないことを心掛けた。

第3図以下の指し手。▲3五歩△5三金▲3四歩△同銀▲3七飛△4三金寄▲2七飛△2四歩▲3五歩△2三銀(第4図)

ここらあたりで湯川氏の将棋も終わったようである。やはり湯川氏の勝ちで、快勝といったところ。堀女流初段は、「面白い構想で、感心しました」と対局者を持ち上げる。湯川氏も、「そうだね、この進行ならいけると思った」と、満更でもない様子。これが指導対局の神髄で、下手を悦ばせることが肝要なのである。
私は▲3五歩。今度は桂頭を攻める味があるから、▲3五歩の意味はある。
堀女流初段は△5三金と上がった。ここ△3五同歩は▲同銀△3四歩に▲2四歩でどうか。
ほかには△4五桂と跳ねる奇手もあるが、▲同歩と取り、△1九角成に▲4四歩で銀を取れるから、下手が指せると思った。
▲2七飛の局面では△4五桂の筋が復活していたが、堀女流初段は△2四歩。私は▲3五歩と打ち、ここの位が取れれば、まずまずだと思った。

第4図以下の指し手。▲3七銀△4二玉▲3六銀△1四歩▲3七桂△9五歩▲同歩△9六歩▲7九玉△9五香▲9八歩△5二玉(第5図)

2筋を強化されたところをこじ開けにいっても無理なので、私は再び▲3七銀と引く。▲3六銀と位を確保し、桂を活用した。こうした手に悪手はないと思う。
堀女流初段は△9五歩。さすがにいちばんイヤなところを突いてくる。▲同歩に△9六歩か△9七歩かは難しいところで、今年の名人戦第1局でも、似た筋で藤井聡太竜王が熟考する場面があった。
堀女流初段は△9六歩を選び、私は謝りまくった。
第5図でも、私は我慢する。

第5図以下の指し手。▲1七香△7五歩▲7七角△9一飛▲7五歩△同角▲4五歩△7六歩▲8六角△8四角▲4四歩△同金▲4五歩△4三金引▲2五歩△同歩▲同桂△2四歩▲3三桂成△同金上(第6図)

左では加藤女流初段の対局相手がいなくなり、加藤女流初段は所在なさげだ。
しかし新規で入った山野氏は堀女流初段の前に座る。あえて後手番を所望し、横歩取りの将棋を指す。むかし懐かしい「△4五角戦法」だ。私もかつて愛用したことがあるが、指してみると奥が深いのだ。
加藤女流初段のほうはしばらくして、山本氏が入った。山本氏は駒を並べながら冗談連発で、とても指導対局を指す雰囲気ではない。でも和気藹々として、いいと思った。
私は▲1七香と我慢した。上手にこれといった手がないことを見越したもので、我ながらこの対局のときは、妙に冷静だった。
私は▲1七香と浮いた。ここでも我慢の一手で、暴発はしない、の意気が窺える。
堀女流初段は△7五歩と突っかけた。私は▲7七角と上がる。これが狙いの手で、香を守って堀女流初段は△9一飛。そこで▲7五歩△同角に▲4五歩。堀女流初段は△7六歩と打ったが、そこで▲8六角とぶつけた。
これに△同角▲同歩なら、次に▲8二角があるので、先手を取れる。よって堀女流初段は△8四角と、交換を避けた。堀女流初段も、「本気」である。
しかし私は4筋の位も確保し、桂を持てば▲4四桂がある。その桂を入手すべく、桂を交換した。

第6図以下の指し手。▲4六桂△8八歩▲同金△7四桂▲5九角△6六歩▲3四歩△3二金▲6六歩△同桂▲同銀△同角▲6七飛△6五歩▲2六角△3九角成(第7図)

▲4四桂は両取りじゃなくなったので、▲4六桂と控えて打った。しかしこの瞬間がなんでもないので、堀女流初段の反撃が始まる。
△8八歩▲同金を利かし、△7四桂が厳しい。▲5九角△6六歩には▲3四歩△3二金のあと、銀桂交換を甘受した。でも、のちの▲4四桂が楽しみである。
それなのに私は、▲6七飛、▲2六角と、▲4四桂を決行しない。このあたりの落ち着きが、我ながらよく分からぬ。ただ、桂を渡すとまた反撃が来るし、大駒を働かせるのが急務だと思った。

第7図以下の指し手。▲4四桂△同金▲同歩△6六歩▲6九飛△2八馬▲3五角△3七馬▲4七金打△6七銀▲同金△同歩成▲同飛△7五桂(第8図)

私は待望の▲4四桂。△同金に、じっと▲同歩が深謀遠慮の手だった。何か、将来の妙手が見えたのである。
堀女流初段は馬を活用する。私は▲4七金打と防戦一方である。
堀女流初段は金を剥がし、△7五桂の飛車取り。一見よさそうだが、ここは△6六歩▲同飛△6五歩がよかったかもしれない。以下▲7六飛が幸便に見えるが、△3六馬▲同金△6七銀の飛車取り詰めろが一例で、下手が容易ではなかった。
本譜も厳しい局面に見えるが、私に起死回生の鬼手があった。

(つづく)
コメント
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