将棋に消えた戦法は数多あるが、その代表格は「相矢倉」である。「矢倉」はかろうじて残っているが、先手が金矢倉まで構築することは珍しく、また仮に構築しても、玉を入城することはなくなった。
そして後手は本当に、矢倉城を構築することはなくなった。先後同形にしても先手に気持ちよく攻められ、勝率が悪いからである。
だから後手は囲いを諦め、急戦に出る。その際、角は居角である。冒頭に記した、先手玉が矢倉城に入城できないのは、この角の射程に入るからである。
さらに後手は△6二金―△8一飛型を採用する。この形は角換わり形の常套だが、相居飛車戦全般で重用されている。その際、後手玉はバランスを保つため、△5二玉型を採る。これが私には気に食わない。この形は囲いが薄く、先手の攻めをモロに受けて、攻め合い負けになると思うからである。
今月の2日、NHK杯で増田康宏八段VS梶浦宏孝七段の一戦が放送された。
増田八段は現在棋王戦で藤井聡太棋王に挑戦中の、若手のホープ。
梶浦七段は鈴木大介九段門下の俊英で、東京・新橋での無料解説会では、駒操作係として黙々と作業をこなしていたのが印象深い。
その2人の将棋は矢倉となった。後手の梶浦七段は例によって「△5二玉―△6二金―△8一飛型」を採る。中盤までうまく指し、Aiは梶浦七段の優勢と判定していた。
そこで67手目、増田八段が▲7三銀と打ったのが第1図である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/10/dfdb6caac933f7e8039fc4a22a9c3019.png)
第1図、この応手が意外に難しく、アマ同士ならほぼ互角であろう。次の▲5二銀成がいきなり王手になるのが大きい。だから私はこの形が嫌いなのだ。単純に比較はできないが、これが△4一玉型だったら、▲7三銀も甘い攻めだった。
第1図でAIは△5三銀を推奨し、梶浦七段もそう指した。以下▲5五歩△同銀▲5四歩△同銀に▲6四桂(第2図)が先手期待の一手。この応手も難しい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/a4/a5d9fa8d92800d26f5850c8e6a645933.png)
第2図で形勢バーは後手の80%を指していた。ここでAIの推奨手は△4二玉。▲6二銀成には△6四銀で先手指し切りということか。
だが梶浦七段は△6三玉。こう指したい気持ちも分かるが、以下▲6二銀成△同玉▲7二金(第3図)で先手は飛車の入手が約束され、先手が面白い形勢になった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/d0/db41fa91a2d3d8dd173331acf4392da4.png)
剥き出しの後手玉に対して、先手陣もいびつな形ながら、玉が一段目におり、戦場から遠いのが大きい。
このあと、梶浦七段に一失が出て、先手が逆転勝ちとなった。
この将棋だけ見ると、一段玉と二段玉の差が如実に現れたと思う。
ちなみに、9日放送の▲佐藤康光九段VS△藤井聡太竜王・名人では珍しく相矢倉となったが、後手の藤井竜王・名人が△4一玉型を採用していた。これは矢倉中飛車の構想があったからアレだが、今後この形が復権するかもしれない。
そして後手は本当に、矢倉城を構築することはなくなった。先後同形にしても先手に気持ちよく攻められ、勝率が悪いからである。
だから後手は囲いを諦め、急戦に出る。その際、角は居角である。冒頭に記した、先手玉が矢倉城に入城できないのは、この角の射程に入るからである。
さらに後手は△6二金―△8一飛型を採用する。この形は角換わり形の常套だが、相居飛車戦全般で重用されている。その際、後手玉はバランスを保つため、△5二玉型を採る。これが私には気に食わない。この形は囲いが薄く、先手の攻めをモロに受けて、攻め合い負けになると思うからである。
今月の2日、NHK杯で増田康宏八段VS梶浦宏孝七段の一戦が放送された。
増田八段は現在棋王戦で藤井聡太棋王に挑戦中の、若手のホープ。
梶浦七段は鈴木大介九段門下の俊英で、東京・新橋での無料解説会では、駒操作係として黙々と作業をこなしていたのが印象深い。
その2人の将棋は矢倉となった。後手の梶浦七段は例によって「△5二玉―△6二金―△8一飛型」を採る。中盤までうまく指し、Aiは梶浦七段の優勢と判定していた。
そこで67手目、増田八段が▲7三銀と打ったのが第1図である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/10/dfdb6caac933f7e8039fc4a22a9c3019.png)
第1図、この応手が意外に難しく、アマ同士ならほぼ互角であろう。次の▲5二銀成がいきなり王手になるのが大きい。だから私はこの形が嫌いなのだ。単純に比較はできないが、これが△4一玉型だったら、▲7三銀も甘い攻めだった。
第1図でAIは△5三銀を推奨し、梶浦七段もそう指した。以下▲5五歩△同銀▲5四歩△同銀に▲6四桂(第2図)が先手期待の一手。この応手も難しい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/a4/a5d9fa8d92800d26f5850c8e6a645933.png)
第2図で形勢バーは後手の80%を指していた。ここでAIの推奨手は△4二玉。▲6二銀成には△6四銀で先手指し切りということか。
だが梶浦七段は△6三玉。こう指したい気持ちも分かるが、以下▲6二銀成△同玉▲7二金(第3図)で先手は飛車の入手が約束され、先手が面白い形勢になった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/d0/db41fa91a2d3d8dd173331acf4392da4.png)
剥き出しの後手玉に対して、先手陣もいびつな形ながら、玉が一段目におり、戦場から遠いのが大きい。
このあと、梶浦七段に一失が出て、先手が逆転勝ちとなった。
この将棋だけ見ると、一段玉と二段玉の差が如実に現れたと思う。
ちなみに、9日放送の▲佐藤康光九段VS△藤井聡太竜王・名人では珍しく相矢倉となったが、後手の藤井竜王・名人が△4一玉型を採用していた。これは矢倉中飛車の構想があったからアレだが、今後この形が復権するかもしれない。
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