ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
「病んだ人」と言えば、カナダの生んだ鬼才のピアニスト、グレン・グールドを思い出します。
私は、グールドの2枚のCDを持っています。下のアルバムがそうです。
グレン・グールドは、1955年にバッハの『ゴールドベルク変奏曲』で華々しくデビュー。しかし、1982年10月、50歳の若さでこの世を去ります。
面白いことに、CDを聴くと、グールドの「鼻歌」が聞こえます。
グールドは、アスペルガー症候群の症状を持っていたとよく指摘されています。さらには、不潔恐怖症(不安障害)の症状も持っていたようです。
『子どもの「心の病」を知る』(岡田尊司著、PHP新書、880円+税)には、こんなエピソードが書かれています(一部を引用)。
グレン・グールドというピアニストがいた。型破りな『ゴールドベルク変奏曲』の演奏で、聴衆の度肝を抜き、完璧な演奏にこだわるあまり、ついに演奏会を一切やらずに、レコーディングだけに演奏活動を限定してしまった。彼にとっては、聴衆さえも自己の芸術の「夾雑物(きょうざつぶつ)」に過ぎなかったのである。
グールドは8月の猛暑の最中でも、オーバーコートにマフラーという出で立ちで、しかも手袋をはめていたという。そして、誰かが握手を求めて近づきでもしようものなら、「ドント・タッチ・ミー」と飛びじさったという。
グールドには、もう1つ有名な奇行があった。レコーディングのとき、必ずトラの皮を持参し、それを椅子に敷くのだという。こうした儀式的な脅迫行為は、しばしば安定剤的な作用をもっている。
グールドは、アスペルガー症候群や不潔恐怖症(不安障害)の症状も持ちながらも、自分の芸術性を高めていたのです。
もし、グールドが社会適応してしまっていたら、彼の奇才ぶりが発揮できなかったことでしょう。
彼は、病む人として短い生涯を生き抜いたのです。
◎ヒューマン・ギルドのホームページの「トピックス」の中に『ゴールドベルク変奏曲』を巡るバッハのエピソードを書いたものがあります。ご覧ください。
アーティスト・リバティ (1993年4月号の巻頭言)
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