見もの・読みもの日記

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受け継がれる遺伝子/琳派から日本画へ(山種美術館)

2008-12-16 22:09:51 | 行ったもの(美術館・見仏)
○山種美術館 『琳派から日本画へ-宗達・抱一・御舟・観山-』(2008年11月8日~12月25日)

http://www.yamatane-museum.or.jp/

 この秋、東博の『大琳派展』に熱狂なさった皆様へ。宗達→光琳→抱一と受け継がれた琳派の遺伝子は、明治以降の日本画にも脈々と生き続けた。そのことを実感する展覧会である。

 見どころは、やはりいちばん奥の部屋。下村観山の大作『老松白藤』(大正10年)は、装飾的な金屏風に、巨大な老松と這い回る白藤をリアルに描いたミスマッチ感が、不思議な魅力を湛えている。松の巨木は、琳派というより、永徳みたいじゃない?と思ったが、上下をバッサリ切り落とした構図は琳派の伝統だという。なるほど、そういう視点があるのか。

 これに対峙するのが、3点の金屏風。中央は、速水御舟の『名樹散椿』(昭和4年)。山種美術館の代表的な名品である。しかし、両隣りの作品も負けず劣らず、いい。闊達なフォルムデザインが気持ちいい(槙の幹の曲がり方!)左の六曲屏風は、伝・宗達筆『槙楓図』(江戸初期)。描かれたばかりのように色鮮やかな右の四曲屏風は、鈴木其一『四季花鳥図』(江戸後期)だという。びっくりしてしまった。江戸初期から速水御舟まで、300年の時差をほとんど感じさせない。それも「琳派○代目」とか名乗っているわけでもないのに、「かざりの美学」の遺伝子は、きちんと継承されているのだ。

 同じ部屋の、本阿弥光甫(光悦の孫)の三幅対『白藤・紅白蓮・夕もみぢ』もよかった。丹念に対象の造形に迫る態度が、ちょっと素朴派ふう。奥村土牛『戌(いぬ)』は、金地の背景に梅一枝と、上目づかいの子犬を描いたもの。黒い背中には「たらしこみ」の技法が用いられているが、何より、悪ガキっぽい面構えが、まぎれもなく宗達直系である!

 歴史画を得意とした前田青邨は、琳派の系譜なのかなあ? まあ、江戸琳派の人々は、好んで大和絵や古絵巻を学んでいたようだけど。青邨の『三浦大介』は、白髯の老武者の何気ない座像を描いたもの。三浦大介(義明)の苛烈な最期を知る者には、抑えた筆遣いが却って慕わしく感じられる。
コメント
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