見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

老人と子供/變臉(へんめん)この櫂に手をそえて

2008-12-02 21:55:36 | 見たもの(Webサイト・TV)
○「中国映画の全貌 2008」より呉天明(ウー・ティエンミン)監督 映画『變臉(へんめん)この櫂に手をそえて』(1996)

■新宿 ケイズシネマ
http://www.ks-cinema.com/schedule.html

■goo映画:『變臉(へんめん)この櫂に手をそえて』
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD30371/

 古い映画なんて、レンタルDVDで、見たいときに見ればいいとお思いだろう。全くそのとおりなのだけど、見知らぬ人々の間に混じって、映画館の暗闇に身を潜めるというのは、それはそれで味わいのある行為なのだ。というわけで、今年も「中国映画の全貌 2008」を見に行った。上映スケジュールを吟味して選んだ作品は、1996年制作の『變臉(へんめん)』。「中国映画の全貌」では常連のタイトルだが、私はずっと見る機会を逃していた。

 舞台は今世紀初頭の中国(らしい)。老芸人のワン(王)は、"變臉(変面)"と呼ばれる早変わりの名手で「変面王」と呼ばれていた。ワンは、自分の技を継がせるために、クーワー(狗娃)と名乗る男の子を買い取って育てようとする。しかし、その子は女の子だった。一度は「爺(イエ)=おじいちゃん」と呼ぶことを禁じて、辛く当たったワンだが、クーワーの文字どおり献身的な愛情に、頑なな心が解けていくという物語。

 変面王を演ずるのは名優・朱旭。老人と子供を描いた中国映画は、不思議なくらい、安心して見ることができる。本作は、安定感があり過ぎて(結末はメデタシメデタシ)ちょっと凡作かも。同じく朱旭が老芸人を演じた『心の香り』のほうが、結末にフラストレーションは残るが、私は好きだ。なお、脚本の味わいどころのひとつは、大道芸人のワンと、華やかな人気女形のリャンが、全く異なる境遇に見えて、「所詮、役者は世間に卑しめられる稼業」ということで心を通わせあう点にあるように思う。

 中国では、一人っ子政策実施以降も男子を望む夫婦が多く、男女比のアンバランスなど、ひそかな社会問題を引き起こしているという。最後には、因習を捨てて、一子相伝の秘芸を女子に伝える決心をする変面王、実は国策映画なのかなあ、なんて勘ぐったりもしている。
コメント
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